アルツハイマー病の治癒薬「アデュカヌマブ」(エーザイ株式会社×バイオジェン社)が、米食品医薬品局(FDA)により承認(日本では2020年12月に承認を申請)され、優先審査の対象になったというニュースが話題になっています。

アデュカヌマブは世界で推定5000万人が罹患しているアルツハイマー型認知症の治療薬。アルツハイマー病患者の脳内に比較的早期から見られ、脳の萎縮などを引き起こすタンパク質「アミロイドβ」を取り除く効果が期待されている抗体製剤です。

開発元のエーザイ株式会社によると、臨床試験では認知症予備軍や軽度のアルツハイマー型認知症有病者のアミロイドβが最大で7割以上減少するなどの結果が得られており、病状の進行を長期間にわたり抑える世界で初めての治療薬として期待できるとしています。

2021年3月には、世界的な情報サービス提供企業であるクラリベイト社が、開発途上にある全医薬品約70,000種以上の中から、2021年に市場参入または主要適応症で上市される医薬品で、2025年までにブロックバスターの地位を獲得すると予想されるアデュカヌマブを含む4つの医薬品を選出したレポート『Drugs to Watch』を発表しており、その経済効果の大きさもまた注目されているのです。

新薬の効果と市場価値は?

ブロックバスターとは、発売されている他製品と比べ圧倒的な売り上げをあげる製品のこと。市場をはじめ世界に影響を与えるゲームチェンジャーになりうる製品を指します。製薬業界においては年商で約10億ドル以上の価値を示すことが多く、対応疾患領域の医療水準の底上げやイノベーションを牽引する存在として期待されます。

今回の『Drugs to Watch』では、アルツハイマー型認知症、乾癬、前立腺がん、子宮内膜症、子宮筋腫、うっ血性心不全などの慢性的で進行性の衰弱がみられる疾患や病状に対する治療法に焦点を当てており、アデュカヌマブの他に、乾癬をはじめ世界人口の2~3%が罹患していると推定される自己免疫疾患に対する治療薬で、従来の治療薬にくらべ副作用を大幅に軽減させた「ビメキズマブ」(UCB社)、前立腺がんや子宮内膜症や子宮筋腫などに対する治療薬で初の経口剤となる「レルゴリクス」(武田薬品工業株式会社)、ハイリスク患者であるHFrEF(駆出率が低下した心不全)に特化した初の治療薬「ベリシグアト」(バイエル社×メルク社)が紹介されています。

それぞれの新薬や治療法は、アデュカヌマブが年間約37億4000 万ドルの売上高になると予想されている他、ビメキズマブは18億6000万ドル、レルゴリクスが14億8000万ドル、ベリシグアトは12億1000万ドルになる見込みだそうです。

実際の薬剤価格はどれくらい?

さて、日本円にして年間約1,320~4,070臆円以上の売上高が見込まれているというこれらの新薬や治療法ですが、実際に私たちが使用する際にはどれくらいの値段になるのでしょうか。

例えば、子宮内膜症や子宮筋腫などに対する治療でレルゴリクスを服用した場合、911.5円(40mg/1錠)で保険適用された患者の負担額は月に8500円程度となります。高額ではありますが一般的に支払い可能な値段です。

対して、アデュカヌマブは4週間に1回の点滴投与で約47万円。目安として患者当たり年間約610万円と発表されており、専門家によると保険適用であったとしても、今の制度では100万円を下回ることはないそう。アデュカヌマブに関しては、その効果に懐疑的な意見もありFDAは追加の臨床試験を続けると発表するなど、広く一般に使用されるようになるまでには、まだまだ時間が必要なようです。

厚生省によると国内にいる65歳以上の認知症有病者は約600万人、そのうち約7割(67.7%)がアルツハイマー型認知症を患っており、超高齢化社会をむかえる日本において、画期的な治療薬の登場は多くの患者を救うのみならず、家族による介護負担の軽減、健康寿命の延長やQOLの向上、ひいては経済活動にも影響します。

アデュカヌマブをはじめ、私たちの生活に大きな影響を与える新薬や治療法は、従来のような効果や安全性だけでなく、早期に治療を提供するための迅速的な承認や費用対効果、経済効果を含め検討された評価が求められているのです。

認知症の最新医療
Fujisan.co.jpより
情報提供元: マガジンサミット
記事名:「 アデュカヌマブで注目。世界を変えるブロックバスター治療薬4候補とその驚愕なお値段