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写真左)東邦大学医療センター 大森病院眼科 教授 診療部長 堀裕一氏。右)杏林大学医学部 眼科学 教授/日本角膜学会 理事長/日本コンタクトレンズ学会 山田昌和氏。
角膜は目の表面にある厚さ0.5㎜の膜であり角膜上皮層、ボーマン膜、角膜実質層、デスメ膜、角膜内皮層の5層からなっています。表層にある角膜上皮層の厚さはわずか0.05㎜と薄く、通常は涙液の層が外側を覆い角膜細胞を守っていますが、コロナ禍でスマホやパソコンなどを使ったVDT作業に集中する時間が長くなる(通常時よりもまばたきの回数が1/4に減少する傾向)、マスクから漏れた呼気により涙が乾きやすくなる(マスクドライの傾向)、不安・ストレスによる涙の量と質が低下する(自律神経の乱れ)などの“角膜の傷リスク三重苦”により、涙量が減りドライアイが進行。涙液の層が崩れ、細胞がむき出しになり傷つきやすくなっているそうです。
これら長引く乾き目、疲れ目、かすみ、ゴロゴロなどの不快症状を放置しておくと、著しい視力低下や痛み、そして角膜が乾燥してはがれる点状表層角膜症や角膜上皮剥離などを発症する恐れがあります。
本来、上皮層の細胞は数日で修復されるため、多少の傷がついても健康的な状態ならば問題ありません。しかし、ドライアイの状態が慢性的に続き角膜細胞がむきだしの状態であると、まばたきによる摩擦でも傷がついてしまいます。
ドライアイ症状が軽いうちからケアするためにも、なるべくVDT作業を行わず目を休めることが望ましいところですが、そうは言っていられないご時世。冒頭に紹介した「チェックリスト」を作成した堀裕一教授は、以下の5つの取り組みをすることでドライアイを防ぎ角膜をケアして欲しいと提案します。
上記のケアのうち、もっとも手軽で有効な手段が点眼薬ではないでしょうか。しかし、「させばさすほど良いという訳ではない」と山田昌和教授は指摘します。
山田教授ら「現代人の角膜ケア研究室」が、日常的に点眼薬を使用し“新型コロナウイルス流行以降に目を使う作業が増加した人”を対象に行った「コロナ禍の点眼薬使用実態調査」(2021年3月実施/日本在住20 代~60代の男女)によると、「回数の上限にはこだわらず、症状を感じるたびにさしている」と回答した人は48.8%にのぼり、約4人に1人が適正回数を超えて点眼するなど点眼回数を意識していない実態が明らかになりました。
点眼薬一滴は涙の5倍量ほどになるそうで、点眼回数が多いとかえって涙が洗い流されてしまい、目に必要な油分やタンパク質などを失う可能性があります。また、すでに角膜に傷がついている場合は、薬に配合される防腐剤-例えば、塩化ベンザルコニウムは油を分解する作用があり、涙の油層を破壊し目が乾きやすくなる-が症状を悪化させる恐れもあるため、さしすぎには注意が必要です。
適正目安は1日に5~6回程度。起床時、朝・昼・晩の食事時、リフレッシュしたい時(数回)など時間を決めて点眼すると良いそうで、特に朝起き抜け時は涙量が少なく傷リスクが高いため効果的です。
さらに、機能ごとに使い分けることも必要で、山田教授は「リフレッシュや充血、疲れ目など用途をしっかりと確認して使い分けて欲しい」と話し、普段使いとしては“やさしさ”や“うるおい”など “涙に近い成分”の点眼薬を探すと良いようです。また、箱や容器に記してある使用期限は未開封時のものであり、開封後1ヶ月くらいが安全な使用期限となります。
コロナ禍のため外出や人と会うことが制限され、リモートワークやオンライン授業、スマホ時間の増加など目を酷使しがちな今、目を充分に労り角膜を守りたいもの。「ゴロゴロとして不快だから」「乾いてヒリヒリするから」と不快症状を感じる度に点眼を繰り返す人は、すでにドライアイ症状が進んでいる可能性もあり、市販薬で済まさずに眼科を受診することが大切です。詳細は「現代人の角膜ケア研究室」https://www.kakumaku-lab.jp/ まで。