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胃腸が屈強な人ならば、「腹が痛いならトイレへ行けよ」「便意を催したならすぐしろよ」と安易に考えてしまうでしょうが、パワプロ風でいう「胃腸×」の人はそれが日常で365日、胃腸に振り回されているので痛いからや違和感があるから、だけではいちいちトイレへ行くわけにはいかないのです。上手に腹の顔色を伺いながら安心できるトイレがある場所まで腹の気をそらすわけです。また肛門との攻防戦も待っているため、いいことなんてひとつもないのです。
日常的に違和感を覚え続けているお腹。われわれが“お腹ゆるゆる勢”が一番困るのは移動、とりわけ電車内ではないでしょうか。腹にいやな気配を感じつつも乗らなければいけない電車がホームにやってくると、どうしても乗ってしまします。そして案の定、激痛が。脂汗を流し、目の焦点があわずくらくら、傍目では顔も真っ青でしょう。電車内なので放屁でいなすこともできず、ただじっと次駅まで耐えるしかありません。この時点では電車をパスしてトイレに行かなかった自分を呪うわけですが、あら不思議、あんなに痛かった腹が急に落ち着きを取り戻します。平穏を取り戻したわけですから次駅で降り、トイレへ行けばいいんですが一旦痛くなくなった腹を信頼。降車せず電車が走り出すと再び激痛が……。いつだって胃腸は信頼すれば裏切ってきます。このルーチンはよくある事なのに学ばず駅のトイレへ行くことを拒みます。
お腹がゆるい人の最初の試練はやはり幼稚園や学校生活ではないでしょうか。ゆるゆる勢はどうしてか学校のトイレで用を足すことを恥と考え「ただただ耐える」ということを、知らないうちに学校のプログラムに組み込んでいました。なぜなら便をするのがばれると冷やかされるというよくわからない風潮がそうさせていたのだと思います。片や非ゆるゆる勢は恥ずかしげもなく便をできるという矛盾した適正を羨んだり恨めしく思ったりしました。「もう決壊する……」となった場合は人けの少ない校舎のトイレへ行くか漏らすかの二択でした。
自分は牛乳でひどくくだすことはないのですが、キンキンに冷えた飲み物、刺激の強いもの水分の多いものでよくくだします。たとえばキムチや梅干し、牡蠣などがそれにあたるのですが、困ったことにいずれも好物なのです。しかしくだすことを嫌い好物を避ける人生はもったいない。そのためとチャンスがあれば食しますし、くだします。
また、くだしもらしてしまうケースもよくありますが、そうなった場合は家族やパートナーに見つからないようにするのがマナー。汚れた下着は問題ない場所に捨て、ドラッグストアなどで赤ちゃんのおしり拭きと下着を購入。周囲に迷惑をかけないのが紳士淑女にエチケットだと思います。
先に、駅のトイレをやり過ごすといった主旨のことを書きましたが、汚いとかの理由で敬遠しているのではなく、あのケースは面倒で行かないというのが理由です。むしろ駅のトイレは綺麗で安心、最後の最後に保障された場所という認識です。
ゆるゆる勢にとって公衆トイレはフリーWi-Fiスポットよりも重要で、生活圏にある公園やスーパー、パチンコ屋、コンビニなどトイレを貸してくれる場所を把握しているものと思います。
なのでお腹の調子が悪くなったとしても、「この痛みと治まり具合の波だと、あそこのコンビニまで耐えられるな」と予測し歩調を調整します。しかしこれまでトイレを貸してくれていたコンビニが突然貸してくれなくなるという突発的なアクシデントもあり、こうなると終わりの始まり。よたよたと腹に刺激を与えないスピードで家まで帰り、トイレまであと一息という玄関で燃え尽きることもよくあります。漏れたら漏れたで賢者のような冷静さを取り戻すので、先に風呂で洗うかトイレで残りを出し切るかを分析します。
これまでトイレを貸してくれていたコンビニが、コロナ禍になってから貸さなくなった店舗をよく見ます。新型コロナはこのような厄災ももたらしたわけです。
ゆるゆる勢は自分に適したマイ胃腸薬を常備していると思います。その薬をお守りのように信仰するわけですが、正直効いているのかいないのか懐疑的です。なぜなら痛い時に飲んでもずっと痛いしトイレから出られないときもあるからです。トイレに座ったまま腹を押さえ上半身前傾で悶絶、こんなときにだけ呟きます「神様助けて……」。無宗教で何の信心もないのに神頼み。きっとこの瞬間に治してくれたら洗脳はたやすいことでしょう。
お腹が強い人にはなかなか理解してもらえないであろう“お腹ゆるゆるあるある”。しかしゆるゆる勢はこのツンデレな胃腸と一生付き合っていかなければいけません。もし、腹を抱えて動けない人を見かけたら労わってもらえると嬉しいです。