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一日に3つのGⅠレースが行われる地方競馬の祭典【JBC(ジャパン・ブリーディングファームズカップ)】、19回目となる今年は11月4日(振月)埼玉県の浦和競馬場で開催される。
JBCクラシック (2,000m) 1着賞金8,000万円 15:30発走予定
JBCスプリント (1,400m) 1着賞金6,000万円 14:45発走予定
JBCレディスクラシック(1,400m) 1着賞金4,100万円 14:00発走予定
JBC浦和HP http://www.keiba.go.jp/jbc2019/index.html
浦和競馬場は公営競馬で日本一古い競馬場とされ今年70周年を迎えるが、約15年前には20億円を超える累積赤字を抱えるほど存続の危機に陥った。しかし、どん底から経営努力を続けて黒字に転換し、新スタンド建設などリニューアル工事の目処が立ったことで、悲願だったJBC開催が決定した。
約1年半の改修工事を終え、9月2日に新装オープンした浦和競馬場には沢山のファンが訪れ、「汚くて古かったがこんなにキレイに変わった!」とみんな驚いたという(笑)
JBCでは入場者3万人、一日の総売上60億円を目指している。
ここは...本当に浦和競馬場なのか!? pic.twitter.com/2cjKAGBqge
— ユウイチ(@yuichi_keiba) September 10, 2019
(工事費用は32億7000万円だそうだ)
地方競馬の祭典として続けてきたが、去年はJRA京都競馬場での開催だった。これにファンは驚いたが、公式ホームページには…
「地方競馬の『宝』であるJBCを、JRAを通じてもっともっとお客様に知っていただきたい、という願いを込めて。JBC京都の先には、来年の浦和競馬から始まる『未来の地方競馬のJBC』が続きます。」
とあった。
結果、3レースの売上合計額は、157億3086万8600円と当然のことながら過去最高をマークした。普段は週末のJRAで馬券を楽しむ人が購入してくれたからだ。
地方競馬開催のJBCで1日トータルの馬券売り上げ最高は、2016年川崎競馬場(神奈川)での48億7402万2850円。15、17年の大井(東京都)でも同規模の売り上げをマークしているが、13年の金沢(石川県)、14年の盛岡(岩手県)では30億円を下回った。
主催者側としては、一日の売上50億超えを長年の夢としていることもあり、去年は異例の宣伝費としてJRA開催に踏み切ったわけである。だから、今年の浦和開催はその真価が問われる。
「地方競馬は苦しいんじゃないの?」と思っている人も多いはず。確かに今世紀に入って多くの地方競馬が赤字などの理由で休止・廃止された。
2001年 大分・中津競馬
2001年 新潟・三条競馬
2002年 島根・益田競馬(休止)
2003年 栃木・足利競馬
2003年 山形・上山競馬
2004年 群馬・高崎競馬
2005年 栃木・宇都宮競馬
2011年 熊本・荒尾競馬
2013年 広島・福山競馬
そして現在、地方競馬場は全国に15ある。
オグリキャップの競馬ブームが終わり、そしてバブル崩壊後、特に地方競馬は厳しい局面に立たされ、次々に消えていった。
しかしここ数年、地方競馬の業績は全体的にアップしていて廃止の動きも静まっている。好調の大きな要因は、「インターネット投票」と「地方公営施設でのJRA馬券発売」だ。
転機になったのが2012年10月にスタートした「地方競馬のネット投票」である。JRAがネット投票会員に地方競馬の馬券も購入できるサービスを開始して売上が上がったのだ。
更に、2013年「J-PLACE(ジェイプレイス)」という、地方競馬場や競輪場、ボート場、オートレース場といった公営施設でもJRAの馬券購入と払い戻しができるシステムを導入した。要するにWINSが地方に出来たようなもので、現在、全国に約50ヶ所開設している。
実はこれが非常に大きい。地方競馬もない地域では競馬に興味がない人はとても多い。テレビのニュースでキタサンブラックとかアーモンドアイとか取り上げられても、馬券を買えない不毛地帯ではよその国の話だ。それが新システム開設によって、ちょっと出かけた先で馬券が買える、と聞けば好奇心のある人が足を運んでくれる。開拓になるわけだ。
これで地方競馬とJRAがWIN-WINな相互関係を作り、どちらも業績を伸ばした。
地方競馬全体では、その2012年を皮切りに業績を伸ばし、18年度の総売り上げは6033億8737万2180円(前年比109.2%)と7年連続の増加。6000億円の大台を突破したのは1999年度以来19年ぶり。そのうち電話投票は4374億3113万3980円(前年比116.4%)で約72.5%のシェアを占めた。
もちろん、各地方競馬場でも新システムに頼りきりだったわけではなく集客にアイデアを出した。
例えば、高知競馬は2008年度の売上が約38億8000万円だったが、09年から高知の温暖な気候を利用しナイター開催にシフトを切ってアフター5客を集め売上が急増する。そしてネット投票がスタートしてからは週末の開催を増やし、JRA競走が終了した16:30以降でも高知競馬で“リベンジ”できるようにした。これらが功を奏して、2016年度は高知競馬創設以来最高の約253億3000万円を売り上げた。8年でなんと6.5倍にまで業績を上げたのだ。
その他、かつて“廃止は時間の問題”とまでいわれた神奈川県の川崎競馬も、2016年のJBC開催地に決定したのを受けて20年ぶりに施設を大幅リニューアル。大型のキッズスペース、エスカレーターの増設、大型ビジョン設置など、ファンサービスも試行を凝らした。先にも触れたが本番のJBCでは一日の総売上約48億7400万円という当時の地方競馬レコードを打ち立てた。04年度には売上410億円にまで落ち込んだのが、18年度は708億5340万8030円という過去最高をマークした。
※2016年4月、金沢競馬場でJRA藤田菜七子騎手を招待するイベントレースで盛り上がった。このように全国の競馬場では試行を凝らしたイベントを開催してファンサービスに取り組んでいる。
好調といっても今後も人気を安定し続けるに課題はいろいろある。
なかなか縮まらないのは「JRA馬との実力差」だ。
そもそも素質がありそうな馬は高値で取引されJRAへ行き、最高の調教システムでビシビシ鍛えられるので地方馬はなかなか太刀打ちできない。よってJBCを含め地方交流グレートレースでは圧倒的にJRA馬が強いというのは当たり前。
しかし泣き言ばかりじゃ埒があかない。強い地方馬が出れば話題にもなるし、それがエリート中央馬を負かすと盛り上がる。
そこで、地方競馬では2年前から“強化指定馬制度”なるものを設けた。これは、競走能力向上を図り、坂路やプールなどがある専用の育成施設まで馬を移送させトレーニングを積んだ場合、馬主に対してその経費(最大200万円)を支援するというもの。
昨年この制度を受けた4頭の中で、船橋のハセノパイロが東京ダービー優勝、北海道のサザンヴィグラスが北斗盃を優勝した。成果は出ている。
地方の競馬場へ客を呼ぶには「老朽化した施設の改修」も進めなければならない。昭和時代に建てたまま今でも使っている競馬場は多い。競馬場のスタンド新設、コース改修といった大幅な工事をするには数十億の費用が必要となる。
“JBCは地方競馬場の持ち回りで開催”と謳っているが、大規模なレース・イベントが開催に見合った会場かシビアな目で審査が必要。多くの馬を受け入れる馬房があるか、関係者を受け入れる体制は整えられるか。大勢のお客さんの輸送システム、馬券を買う窓口の数は足りているか、トイレ、飲食、など施設は充実しているか、などポイントは沢山ある。川崎競馬場や今年の浦和競馬場は、大規模な改修工事でJBC誘致に成功した例である。願わくば、笠松(岐阜)、高知、佐賀、など関東以外の地方でも施設の近代化を願う。
昭和に競馬ブームを呼んだハイセイコーは大井競馬、1990年日本中を熱狂させたオグリキャップは笠松競馬、いずれもスターホースの故郷が注目され競馬場に足を運ぶ人が急増した。
2003年高知競馬から連戦連敗でも走り続けるハルウララが大人気になった。
2018年8月、大井競馬の的場文男騎手61歳が、地方競馬通算最多勝利記録7152勝の金字塔を打ち立てた。そして未だ現役で活躍中である。
2019年10月、岩手で関本玲花(19)、浦和で中島良美(20)、2人の女性騎手がデビューし話題となっている。
試行錯誤で這い上がってきた地方競馬、JBCはJRAのエリートと地方の雑草馬とがガチでぶつかるダートのオールスター戦3連発だ。100円でもいい、夢を買って楽しもう。