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「うっかりおじさん」(作:エマ・ヴィルケ 訳:きただい えりこ 出版社:朔北社)
最近日本で出版されたスウェーデンの絵本でございます。スウェーデンの優れた絵本に贈られるエルサ・ベスコフ賞受賞作でございます。
内容はというと、うっかりものの上品なおじさん(紳士)が、家を出かけるまでの珍騒動でございます。出かける準備をするのですが、うっかり〇〇していて、なかなか外出できないというお話でございます。ここまで聞くと、ありがちな展開だなと思われる方も多いかもでございます。
実はこの絵本、ちょっと変わった一人称スタイルで、展開いたします。主人公の紳士が、読者に話しかける形式でお話が進んでまいります。眼鏡をうっかりした紳士が「眼鏡を見なかったかい?」というふうに……。
勘のよい方、お笑い通の方なら、もうお気づきかもしれませんが、そうなのです。
読者が、ボケたり、ツッコミを入れながら楽しめる絵本なのでございます。
この絵本を読んでいると、この絵本のうっかりおじさんが、実力派漫才師ナイツの塙(はなわ)さまに見えてまいります。
たぶん、スウェーデンには、日本漫才のボケ・ツッコミの文化はないはずでござます。作者のエマ・ヴィルケのプロフィールを確認したところ、日本に滞在された経験もないようでございます。
ちなみに、エマさまは、ストックホルム在住の絵本作家でイラストレーター。
コラージュを使ったユーモアあふれる作品を多く手がけるなど、子供から大人まで幅広い世代に人気がある作家さまのようでございます。
作者は、きっと(間違いなく)日本漫才のボケ・ツッコミの存在を知らないで、この絵本を描かれております。そう考えると、日本人とスウェーデン人の笑いのツボは近いものがあるのではないかと。そんなことも考えてみたりいたします。
遠く離れたスウェーデンで日本のボケ・ツッコミ文化が、知らず知らずの間に存在している…、素適でございます。奇跡でございます。ナイツのスウェーデン進出も期待したくなるのでございます。
お笑い通の方、お子様をお笑い芸人にとお考えの親御さま、こちらの絵本を一度お試しくださいませ。大人も楽しめるユーモア絵本でございます。
「うっかりおじさん」、“ヤホー”で検索してみてくださいませ。
(文:絵本トレンドライター N田N昌)