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「アライバル」(作・絵:ショーン・タン 訳:小林 美幸 出版社:河出書房新社)
実はこちら、年間200冊以上の本を読破する読書芸人のカズレーザーの推薦絵本でございます。世界各国で数々の賞を受賞しております。絵が大人向けで、絵本というよりグラフィック・ノヴェルと呼んだ方が良いかもしれません。
漫画でもコミックでもない「文字のない絵本」でございます。 とにかく読み応えというか見応えがある一冊でございます。通常の絵本のように、パラっと読めると思ったら大間違いでございます。目からウロコ、間違いナッシングでございます。
内容はというと、不思議な架空の国が舞台。主人公の母国が思わぬ災厄に襲われ、家族を置いて新天地を目指すというお話。途中、言葉も通じない見知らぬ国で、苦労したり、小さな歓びをみつけたり…でございます。 日本人が読むと、不思議な世界を描いた上質なファンタジーとしか感じられないかもしれません。
しかし、実は非常に生々しい移民と難民の物語なのでございます。作者のショーン・タン様の父親は1960年にマレーシアから西オーストラリアへ渡ってきており、その父親や知人の移民の体験から、この絵本の着想を得たのだとか。
余談ですが、タン様は、イラストレーター、映像作家として活躍されております。映像の世界では「ロスト・シング」という作品で、第83回アカデミー賞・短編アニメ映画賞を受賞されております。
書店中心で流通しているみたいなので知名度は低いけど、ショーン・タンのDVDがある。絵本『ロスト・シング』のアニメは、2011年の短編アニメーション部門でオスカーも獲得しているくらい出来が良い。『岸辺のふたり』ほどではないけど、泣ける。 pic.twitter.com/UUBztZPVEW
— きつねとイギリスと鉄道 (@sylvaniantab) 2014年5月7日
そのクオリティの高さはお墨付きでございます。 入管難民法改正案が話題の今、大人かっこいい難民絵本、ご体験されてみてはいかがでしょうか。話のネタになること間違いナッシングでございます。 国会の審議でも、この絵本を引用するような政治家の方が登場するようになると、政治への関心も高まるのでは…。
(文:絵本トレンドライター N田N昌)