ギリギリの打球に追いつき鮮やかにアウトをもぎ取るファインプレーは言わずもがなで美しいもの。しかしトンネル、暴投、凡ミスのエラーをした際のプレーヤーの表情やどことなく球場を包むドンマイ……の雰囲気も切なく哀愁があって、これもまた美しい。そこで今回は、そんな悲哀を感じさせる世紀のエラー特集です。

2018年CSファイナルステージ 巨人 坂本勇人選手

今シーズン、打率.345とキャリアハイを叩き出しチームをけん引した坂本選手。走攻守、あらゆる面で歴代最高の遊撃手との呼び声が高い坂本選手ですが、大一番で2つもエラーをしてしまいました。

これで負けたらCSファイナルステージ敗退となってしまう広島との大事な試合。0対3で迎えた五回二死満塁という場面、強い当たりが坂本選手の前でショートバウンド、それを逸らしてしまいました。二塁走者と交錯する難しい打球でした。その後、カメラに抜かれた坂本選手は何とも哀愁のある表情を見せていました。

また、坂本選手はこの前のイニングでも悪送球をしていて試合後「技術不足」と反省の弁を口にしました。

GG佐藤選手 北京五輪の3つのエラー

2008年北京五輪、メダル確定をかけた韓国代表との準決勝でのこと。まずレフトを守っていたGG佐藤選手はゴロを後逸。同じ試合で緩いフライを落球と2つのエラーを見せてしまい日本代表は敗戦、アメリカとの3位決定戦に臨みます。

後に語られたことによると決定戦には出られないだろうと思っていたGG佐藤選手ですが星野監督はスタメン起用。期待に応え……ると思いきややっぱり落球。敗戦でメダルを逃しました。星野監督はGG佐藤選手器用について「野球人生をダメにしないためにもチャンスを与えたい」という温情があったそうです。

3つのエラーでランニングホームラン

2014年、ロッテ対楽天戦。2-2で迎えた6回裏の楽天の攻撃。ランナー無しという場面で打者・嶋選手は平凡なショートゴロ。万事休す……と思いきやショートの鈴木がはじく形でエラー。転々と緩く転がるボールをレフトのデスパイネが捕球……ではなく見事トンネル。さらにセンター加藤選手もバックアップに失敗してボールは左中間へ。

結局ランニングホームラン(記録はショートのエラー)で勝ち越し。失策のあった3人、ロッテの伊東監督までが何とも言えない切ない表情を見せていました。

宇野のヘディング事件で一番切なかったのは……?

プロ野球史上一番見られ、笑われた珍プレー。もはや説明しなくてもあのシーンが映像として浮かびますが、軽く説明しますと1981年8月26日、中日対巨人戦でショート後方に上がった緩いフライを宇野勝選手が捕球しそこね、おでこ(右側頭部)にボールが直撃。ボールが転々とする間にランナーが生還してしまい、完封ペースだった星野仙一投手がグラウンドにグラブを叩き付けたというのがざっくりしたエピソード。

この試合後、星野投手が元気づける意味で食事に誘うと宇野選手は怒られる、と思い込み断ったそうです。この2人のエピソードはこれ以前にもあって、ある日も星野投手が食事に誘い宇野選手が車で追走するとうっかり追突。さすがに「やべぇ……」と思ったそうですがこの時も星野投手は全く怒らなかったそうです。

さて、話は戻ってヘディング事件。このエピソードで一番切なかったのはなんなのか? それはおでこ直撃で跳ね上がったボールを必死に追いかける左翼手・大島選手の背中です。

球史に残る二大エラーといわれるのが宇野さんとGG佐藤さんのエラー。宇野さんについては実は守備が下手ではないし、スラッガーとしては唯一のホームランキングを獲得した選手。そしてこれからも語り継がれるであろうヘディング事件とあわせ記録にも記憶にも残る選手でしょう。

またGG佐藤さんは現在一般企業に勤め、接待草野球でわざとエラーしてあげて、相手を喜ばすんだそうです。この様に印象的なエラーがきっかけで野球人として輝く場合もあるようです。

別冊SPA!男の人生[勝者の理論/敗者の原因]読本 2014年09月25日発売号
Fujisan.co.jpより
情報提供元: マガジンサミット
記事名:「 【野球美】 悲哀の失策…… プロ中のプロが魅せる切なさがにじむエラー