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日本の温泉法では、お湯1ℓなかに炭酸ガスが0.25g(250ppm)溶けたものを炭酸泉と定義しています。なかでも1000ppm以上溶けているものを高濃度炭酸泉といい、「療養泉」として指定されています。(環境省 温泉の定義より)
炭酸泉のほとんどが25℃以下の冷泉(鉱泉)です。炭酸ガスには高温の湯に大量に溶けないという性質があるため、炭酸泉を沸かすと加温過程で炭酸ガスの大部分が抜け、浴槽に貯まる頃には市販されている炭酸入浴剤程度ほどの濃度50〜100ppmに薄まってしまいます。
火山活動が活発で泉温が高めの日本では、そもそも炭酸泉は湧きにくく、沸かすことなく利用できる天然の高濃度炭酸泉となると片手で数えるほどしかありません。30℃以上の泉温をたもちながら1000ppm以上の炭酸ガスを含む炭酸泉が湧く、大分県の九重連山周辺の「長湯温泉」や「七里田温泉下湯」、「筌ノ口温泉」などは、まさに“奇跡”の温泉として珍重されています。
そんな希少な炭酸泉ですが、最近では高温の湯に炭酸ガスを溶かすことのできる特殊技術が開発され、人工的に高濃度炭酸泉を作り出す装置が誕生しており銭湯やスパ施設、医療施設などで活躍しています。
なかでも、今、注目されているのが家庭用の炭酸泉装置です。
例えば「ReVIERA3(リヴィエラキューブ)」。大阪の医療法人グループ主体で開発されたこの装置は、176×H163×D130(mm)と小さく手軽な大きさにも関わらず1000 ppm以上の高濃度炭酸泉が楽しめます。このような高スペック装置の登場で、家庭のみならず介護施設やスポーツセンター、また、美容室やペットショップ等で導入が検討されるなど、比較的に小規模な店舗での使用も拡大しており、ブームだけでは終わらない様子をみせています。
炭酸泉は何故、身体に良いのでしょうか。
炭酸泉に含まれる、非常に細かい分子の炭酸ガスは、皮膚から毛細血管に吸収され毛細血管を開きます。二酸化炭素を異物と感知した血液は、二酸化炭素を排除しようと活発になり、その働きによって血液中の老廃物を一緒に押し流す効果があるそうです。
また、水に炭酸が溶けることでpHが低くなり弱酸性に保たれている肌と近い性質になります。さらに、炭酸ガスはタンパク質に吸着する性質があるため、皮膚の表面の角質化した細胞(タンパク質)に働きかけ、固くなった表皮を柔らかくして汚れを落としやすくするとされています。
泉温の低いヨーロッパ地方、特にドイツでは高濃度炭酸泉が多く湧き出しており、「バーデン・バーデン」など有名な温泉保有地が存在します。なかでも炭酸泉は古来より「心臓の湯」と呼ばれ、伝統的医療として人々に広く親しまれており保険治療の適応が可能。今日でも医療分野やスポーツ科学などに応用されているのです。参照)『血管年齢が若返る「炭酸浴」』川原 弘久著
日本でも、2017年の11月に炭酸泉がある自治体や環境省の関係者や研究者ら約80人が出席する「全国炭酸泉湧出市町村等連絡協議会」の設立総会が開かれ、この希少な資源を国内外にアピールする方針が決まるなど、人気の高まりをみせている炭酸泉。
温泉地やスパ施設をはじめ医療施設や美容施設、そして家庭でも…!高濃度炭酸泉がパーソナルなものになり、誰もが炭酸泉を気軽に楽しみ活用できる日も近そうです。