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大正三美人と言われたのは、柳原白蓮、九条武子、林きむ子の3人だった。3人とも少女漫画のような憧れの家柄設定であるところが共通している。柳原白蓮は伯爵家に生まれ、炭鉱王に嫁いだし、九条武子は京都の西本願寺に生まれ、男爵家に嫁いでいる。林きむ子は狂言浄瑠璃師の父を持ち、政治家に嫁いだという華麗さである。
そして彼女たちがすごいところは、自分たちの身分よりもより大切なことを見出し、それに情熱を捧げたところだ。たとえば北原白蓮は炭鉱王の嫁としておそらくなに不自由ない暮らしをしていたはずだけれど、知り合った編集者と駆け落ちしてしまう。
大正三美人は、人のために生きたと言ってもいい。柳原白蓮は平和のために熱心に講演活動などを行い、九条武子は関東大震災の時にベストセラーになった自分の本の印税で救済活動を行った。林きむ子も新しい日本舞踊の世界を探求しつつ、女性解放運動にも力を注いだ。
ただ美しいだけでなく、世のため人のために尽力した彼女たちは、心までもが美しかった。平成美人はどうだろうか。美魔女と言われるほどに熟女になっても若々しく見える美しい顔を手に入れたけれど、困っている人がいても手を貸さない人も少なくない。コミュニケーション不足と言われる現代とはいえ、果たして顔だけでなく心も美しいと胸を張って言えるだろうか。
心まで美しい人は、どうやって見分けたらいいのだろう。私は流行を追いすぎない、必要以上に物を持ちすぎない人だと思う。大正という女性の地位がまだまだ平等ではなかった時代に嫌なものは「イヤ」だと言い切れた彼女たちには意識の高さを感じる。世間に踊らされすぎず、自分なりのファッションスタイルを確立できていれば、その人に似合わない余計なものは部屋から自然となくなっていくものだ。
もちろん何かのコレクションをする人もいるだろうし、それは趣味として楽しみ極めていけばいいのだと思う。けれどすべてにおいてあれもこれもと欲張る姿は美しくはない。『25ans』2018年6月号に載っている大正三美人の格好は、決して派手なものではない。けれど落ち着いた眼差しには、女性も惚れる強い意志が宿っていて、とても美しい。外見を極めた現代の美人たちが次に目指すべきなのは、心の美しさなのかもしれない。