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誰だって「初めて知った」という経験の一つや二つはあるもの。ただし、なんでもかんでも初耳とばかりに驚いていては、大人としてちょっぴり恥ずかしい気もする。何気ない世間話から思わぬ話題に飛ぶこともあるので、最低限、大人の教養として雑学を知っておくのも悪くはないだろう。そこで今回は季節のネタとして「桃の節句」のアレコレを探ってみた。
そもそもなぜ「桃の節句」と呼ぶのか、疑問に思ったことはないだろうか。
よく考えてみると、少し時期が早い。こうした違和感を覚えるのは、暦にズレがあるからだ。というのも、「桃の節句」は本来、“旧暦”の3月3日に行うもの。“新暦”である現代に置き換えれば、4月上旬頃だ。つまり、現代の3月3日のひなまつりは、本来の時期に比べると、1カ月ほど早いといえる。それゆえ「桃の花が咲いていないのに『桃の節句』かぁ」とミスマッチが生まれてしまうのだ。
「桃の節句」と「桃太郎」の共通点
季節柄という理由以外にも、名称に「桃」の冠が付いているワケはある。それは昔から「桃=不老長寿、仙人の食べ物」の象徴とされ、邪気払いの意味合いがあったためだ。昔話で鬼退治に行ったのが“桃太郎”なのも、理想の国を“桃源郷”というのも、桃に神聖な意味合いがあったから。こうした背景を知っているだけでも、相手に納得感ある説明ができる。
ちなみに最近は各地で“ひな祭り商戦”が盛んなせいか、どうも季節イベント的なノリが強くなっているが、桃の節句の本来の趣旨は、愛しい娘の幸せと成長を願うものだ。その由来は「流し雛」という行事にあり、もともとは平安時代、農民が身の穢れを人形(ひとがた)に移し、それを川や海に流して祈願していたことにある。京都の下鴨神社では今も3月3日に春の風物詩として行われているので、のぞいてみると、当時の雰囲気を肌で感じられるかもしれない。
最近のひな人形を見ると、正面から向かって左に男雛(おびな)、右に女雛(めびな)が多い。だが、必ずしもそれが定位置ではないということを知っているだろうか。たとえば、京都だと、左が女雛、右が男雛。これは左が位の高い位置という御所の考えに従ったもので、昔の風習が残っている地域では京都風の位置関係のひな人形も少なくないのだ。
桃の節句は日本の伝統行事だけに、細かなところにも一つひとつ意味がある。これらの意味を知っているだけでも、見方が変わってくるので、教養として知っておくといいだろう。
菱餅やお団子の定番色には意味がある。「ピンクは魔除け、桃の花」「白は清らかさ、純白の雪」「緑は新緑・健康or穢れを祓う薬草の力」
お雛様の身の回りの世話をする三人官女は、よく見ると真ん中の人形だけ眉毛がない。一瞬、職人さんの誤りかと疑うが、そうではない。当時の女性は結婚すると眉を剃り、歯を黒く染めるのが習わしで、真ん中の人形は既婚女性というだけなのだ。これは逆を言えば、眉毛があれば、未婚女性という証でもある。
ひな人形の歴史を知ればわかるように、もともとは厄払いの意味がある伝統行事。それゆえ、親から子へ、孫へというのは本来NG。次女や三女がいるので兼用というのも良くないとされる。
七段飾りのいちばん下にいる「仕丁」と呼ばれる3人組は表情が豊か。怒った顔、泣いた顔、笑った顔をしているが、これは子どもが感情豊かに育つようにという意味があるのだとか。ちなみに仕丁は外出する際の従者で、それぞれ立傘(たてがさ/雨傘の意)、沓台(くつだい/履物の意)、台笠(だいがさ/日傘の意)を持っている。