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「うちゅうスケート」(作・絵:たむら しげる)
実は、スケートものの絵本はとても少ないのでございます。もともとの数が少ないので大人が楽しめるスケートものとなれば、さらに少なくなります。にもかかわらず!でございます。知る人ぞ知る大人から人気の秀逸なアート系絵本がございます。大げさな言い方をさせて頂くと、奇跡でございます。
それがこの「うちゅうスケート」でございます。まずは、作者のたむらしげる様のご紹介を…。
絵本、イラスト、漫画、映像などジャンルを超えて固定観念を完全に無視したファンタジーの世界観を描き続け、小学館絵画賞、毎日映画コンクール大藤信郎賞、文化庁メディア芸術祭アニメーション部門大賞など、様々な分野で高い評価を得られております。絵本の執筆依頼は、すでに生きている間中スケジュールが埋まっているとかいないとか…。
そんなたむら様の「うちゅうスケート」。物語は、地球に住む主人公のルネ君のもとに、土星の友達から新しくできたスケートリンクに遊びに来ないかという招待状が届くところからはじまります。ルネ君はおじいちゃんと一緒に小さな手漕ぎボートに乗って土星を目指します。果たして無事、土星に到着して新しいリンクで滑れるのか…。という物語でございます。
こちらの絵本、透明感のある絵、そして、固定観念を全く無視した摩訶不思議な世界観が、とにかくゴイスーなのでございます。例えば、最初、川の上を漕いでいたボートが、ページをめくると街の上(空の上)を漕いでいるのです。
かなり唐突な場面転換ですが、まったくそれに違和感を感じさせないのでございます。そこが、たむら様の透明感、絵のゴイスーなところなのでございます。
スケートリンク上の重力の存在を感じさせない、観客の固定観念を壊す演技を魅せてくれる羽生選手に、是非、この不思議な感覚を体験して頂きたいのでございます。また、絵本に出てくる手漕ぎボートの通ったあとにできる跡がスケートリンクにできる跡を彷彿させるのございます。
画面構成も秀逸でございます。画面いっぱい使っているページ、画面を4分割しているページ、2分割しているページがあり、各々が見事に計算しつくされており、急に世界が開けたり、広がったり…。絵本を読んでいるというより、映画を観ているような感覚なのでございます。
フィギュアスケートは、競技の中でも群を抜いて芸術性の高い競技でございます。羽生様にきっと何かを与えてくれる絵本だと存じます。気分転換の際にでも、是非、ご活用くださいませ。
(文:N田N昌)