「電子書籍ビジネス調査報告書2016」によると、日本の電子書籍の市場規模は2015年度1584億円であり、2020年には1.9倍の約3000億になると予測されるそうです。なかでも、近年、急激に市場を拡大してきているのが「デジタル雑誌の読み放題」です。

 

2014年にサービスを開始したNTTドコモの「dマガジン」をはじめ、「ブックパス」(KDDI)や「びゅーん」(ソフトバンク)、「Kindle Unlimited」(amazon)「楽天マガジン」(楽天)など各社参入が相次ぎ、利用者も増加傾向にあります。

 

雑誌の良質なコンテンツ力

 

生活者の意識・実態に関する調査をおこなう「トレンド総研」によると、コンテンツが紙からデジタルに移行する中で、紙媒体である雑誌の売れ行きは低迷しました。気になった記事やテーマだけを選んで読むスタイル「つまみ読み」が主流になり、雑誌一冊、まるごと購入する従来の購読方法は敬遠されつつあります。

 

しかし、長年培ってきた雑誌の編集力や良質なコンテンツ力などは、依然、読者が求めるものであり、特に、昨今のウェブコンテンツにかかわる問題において、あらためて雑誌の信頼性や情報力が見直されてるようです。

 

キーワードは「つまみ読み」

 

書籍や雑誌は“買わなければ読めないもの”という固定観念を崩したのが、2012年頃の購入前の本をカフェでお茶を飲みながら試し読みできる「ブックカフェ」です。

 

書籍や雑誌は一定期間を過ぎれば返品が可能であり、例え本が買われなくとも店はカフェ代で採算がとれます。

 

このような仕組みの「ブックカフェ」は、決まった雑誌を定期購読するのではなく、気になった記事やテーマだけをちょっとずつ読む「つまみ読み」を世の中に浸透させるきっかけになりました。

 

約7割が「つまみ読み」を経験

 

「トレンド総研」でおこなったアンケート調査によると、「あなたは雑誌を読むことが好きですか?」という質問に対し、73%が「好き」と回答。しかし、その一方で、「毎号必ず購入している雑誌がある」と答えた人は15%とわずか1割台にとどまりました。

 

一方で、気になった記事やテーマだけを少しずつ楽しむ雑誌の「つまみ読み」をしたことがあるかという質問では、約7割(65%)が「ある」という結果になったそうです。

 

具体的な「つまみ読み」の方法として「よくやっている方法・やりたいと思っている方法」を聞くと、「美容室でいろいろな雑誌を読む」(58%)、「試し読みができるブックカフェなどのお店に行く」(56%)に続いて、「雑誌のデジタル購読サービスを使う」と答えた人は約3人に1人(34%)となったそうです。

 

「つまみ読み」の歴史

 

購読者側に「つまみ読み」の兆しが見えはじめたのは、雑誌各社の「付録戦略」が強化されるようになった2001年頃です。

 

女性誌のオシャレな「付録アイテム」欲しさに、定期購読以外のファッション雑誌を買う読者が現れ、毎号決まったお気に入りの雑誌を買うというそれまでのスタイルから、その月の付録や見出しをもとに購入する雑誌を総合的に判断する流れが強くなりました。

 

 

もちろん、雑誌を定期購読する以外に、興味のあるアイコンを中心に関連性のある雑誌を購入する読者もいます。例えば、好きなアイドルのために、アイドルの情報が掲載された音楽雑誌やファッション誌……果ては自身のライフスタイルと関係ない分野の雑誌なども購入するスタイルです。

 

これは、気になるキーワードを中心にウェブメディアを検索横断する様子とにており、デジタル雑誌の「つまみ読み」と構造がにているとも感じます。

 

現在、「デジタル雑誌の読み放題」のほとんどには検索機能がついており、キーワードを入力することで、お目当ての雑誌そのものでなく“記事”のみをチョイスすることができます。好きなアイコンを追いかけるために雑誌を片っ端から購入していた時代にくらべて、ずいぶんとスマートになりました。

 

雑誌の多様性と「ぜんぶ読み」

さて、雑誌の魅力として忘れてならないのが“思ってもみなかった情報と巡り会える”というコンテンツの多様性です。知りたいことを効率よくスマートに手に入れられる「つまみ読み」も大いに利用できるところですが、雑誌をまるごと一冊、無料でダウンロードすることで、良質で多様な情報に出会うことができます。

 

実は「デジタル雑誌の読み放題」は、知りたいことしか、知ることのできないネット特有の情報検索の偏りを解消してくれる一手でもあるのです。


調査概要:トレンド総研
調査対象:20~40代 男女500名
調査期間:2017年9月15日~9月19日
調査方法:インターネット調査

情報提供元: マガジンサミット
記事名:「 デジタル雑誌の読み放題が、市場を変える。「つまみ読み」の可能性と雑誌の未来