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「空からのぞいた桃太郎」(作:影山 徹)
こちら、9月に出版されたばかりの新刊。出版社からの紹介文をご紹介すると…
「誰もが知っている童話『桃太郎』。でも、その『桃太郎』を空からのぞくと、意外な姿が見えてくるかも知れません」と。そうなのです。こちらの絵本、内容・展開は桃太郎とまったく同じでございます。ただ、全篇(前頁)、空から見た俯瞰の描写になっております。
「くもじい」「くもみ」のナレーションが懐かしいテレビ東京の「空から日本を見てみよう」の絵本版でございます。番組を観たことのあるならおわかりだと思いますが、よく訪れている、よく知っているはずの街も、空から見てみるだけで、また違った顔が見えてきたり、新しい発見があるものでございます。
そう、この絵本は、空からのぞく、つまり俯瞰で見ることによって、桃太郎の真実を炙り出そうというコンセプトの絵本なのでございます。福沢諭吉が桃太郎のことを盗人だと非難した話は有名ですが、果たして桃太郎の真の姿とは…。そんなことを考えさせられる絵本でございます。空撮、俯瞰の効果、おそるべしでございます。
あと、もうひとつ!この「空からのぞいた桃太郎」、絵がとにかく美しい!アートブックとしてお楽しみ頂けます。すべての頁、額に入れて飾って置きたくなるような絵本でございます。
ちなみに、作者の影山徹様は、日本を代表するイラストレーターのひとりで、俯瞰図を描かせたら右に出る者はいないという方でございます。…俯瞰マニアの方、必読でございます。
そして、もう一冊。
「桃太郎が語る桃太郎」(絵:岡村優太 文:クゲユウジ)
こちらは今年5月に出版。キャッチコピーは「ぼくは鬼がこわいと思いました」。今話題の一人称絵本「桃太郎が語る桃太郎」でございます。もしも、桃太郎自身が物語を語ったら、桃太郎の額にカメラがついていたら…。そんな発想から誕生したちょっと変わった絵本でございます。独白劇に近いかもしれません。絵は桃太郎目線の景色ではありますが…。
不思議なことに、こちらも「空からのぞいた桃太郎」と同様、物語を俯瞰で感じることができるのでございます。この2作品、アプローチはまったく違うのですが、狙っているところ、面白がるところは非常に近い気がいたします。あと、大人向けというところも共通点でございます。この辺は、大人絵本ブームの影響もあるのかもしれませんが…。
ちなみに、桃太郎をモチーフにした絵本としては、絵本界の巨匠、五味太郎様も一冊、出されております。こちらも大人が面白がれる大人絵本でございます。
桃太郎ブーム到来の絵本界。この機会に是非、大人絵本をご体験くださいませ。
(文:N田N昌)