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28℃でも快適に過ごせる日もあれば、不快に感じる日もある。例えば、湿度が低くカラリとした天気の日は日陰にさえ入れば涼しい。しかし、湿度が高くジメジメとした日は日陰にあってもうだるような暑さを感じる。
ひょっとすると問題は、設定温度が高いか低いかではなく“湿度が高いか低いか”の差なのかも知れない。じつは、湿度の差を比較体験できる施設が、空調メーカーダイキン工業のショールーム「フーハ東京(fuha:TOKYO)」にあるという。
そこで今回は「フーハ東京」さんに取材のご協力をいただき、人間にとって快適な室温は何度か?またエアコンについて日頃、疑問に思っていることなどを伺った。
ダイキン工業は、大阪府に本社を置く空調機、化学製品の世界的メーカーである。雫(しずく)をイメージしたゆるキャラ“ぴちょんくん”でもおなじみ。
早速 “調湿”された部屋の快適さを比較体験できる「DESICA体感ルーム」に案内していただいた。
重い扉を開いた先は「部屋A」。この部屋の温湿度は【温度25.4℃/湿度68.1%】だ。続いて入った「部屋B」は【温度27.1℃/湿度42.4%】。
部屋Aは温度が25℃と低いにも関わらず、じめじめとした蒸し暑さを感じた。明らかに後から入った部屋Bの方が快適だ。27℃といえば、編集部の男性陣が暑さのあまり悲鳴をあげる室温だが、かなり過ごしやすい。
広報の方によると、温度は部屋Bの方が部屋Aよりも2℃ほど高いが、体感温度は部屋Aの方が高く感じる人が多いそうだ。
「このように湿度が高いと体感温度は高く感じます。夏場の暑い時期でも、湿度が低く適度な気流のある環境であれば、涼しさを感じることができます」と、快適に過ごすためには、温度だけでなく湿度も考慮することが大切と説明をうけた。
なるほど、温度だけでなくエアコンでいかに湿度や気流をコントロールし、不快指数を下げるのかがカギなのだ。
しかし、エアコンを長時間稼働させているとジメジメと湿気が上り、不快になることはないだろうか。
エアコンの除湿機能は、部屋の空気を吸いこみ、室内機の熱交換器で空気中の熱を奪うことで水分を結露させる。水滴化した水分はホースを通じて屋外に出され、水分(湿気)が取り除かれたドライな空気のみを部屋に戻す。これが繰り返されることで温度と湿度を下げる仕組みになっている。
「従来のエアコンは長時間冷房運転を継続させると、室内の温度は維持されるものの、徐々に湿度が上がってしまう課題がありました。設定温度に近づくにつれて冷房能力を弱めるため、水分を結露させられずに十分な除湿ができず、徐々に湿度が上がってしまいます。」
だが、最新のエアコンには、熱交換器の改良によって、設定温度に達した後も温度だけでなく、湿度も一定に保つ機能が搭載されているそうだ。
夏場はエアコンにかける電気代が全体で約53%(経済産業省)と断トツに多い。「つけっぱしはもったいないから消しなさい!」そう注意された経験が一度はないだろうか?「エアコンは、こまめに消すほうが節電」というイメージが定着しているが、実際はどうなのだろう。
質問すると「必ずしも、こまめに消すほうが節電とは言えません。住宅の断熱性や外気温の変化、日射量など環境に大きく左右されますが、つけっぱなしの方が節約になることもあります。エアコンは部屋の温度を設定温度に維持するよりも、設定温度まで下げるときの方が多くの電力を使います。そのため部屋が涼しくなったら止めて、暑くなったら入れるを繰り返すと、その度に多くの電力を消費することになります」
しかし、だからといって、24時間つけっぱなしはムダな行為だそうだ。
「弊社でおこなった、1日を日中(9:00~18:00)・夜(18:00~23:00)の2つの時間帯に分け、消費電力の傾向を計算した実験では、日中は35 分までの外出であれば、エアコンを「つけっぱなし」の方が安く、夜は18 分までの外出であればエアコンを「つけっぱなし」の方が安いことがわかっています」
「また、30分の外出から帰宅した場合…例えば14:30を見てみると「つけっぱなし」にした部屋が温度26.5℃・湿度69%、「こまめに入り切り」した部屋が温度27.5℃・湿度77%となっており、「つけっぱなし」にした部屋の方が湿度も低いという結果がでています」
電気代だけでなく、帰宅時の快適性も考慮し状況に応じて「つけっぱなし」と「こまめに入り切り」を上手に使い分けることが大切のようだ。
さらに“温度ムラ”を少なくすることで、効果的でより省エネなエアコンの冷房運転を実践できるそうだ。
「エアコンで冷された空気は下の方に溜まりやすく、自然と天井付近の温度は高くなりやすい。風向ルーバーを上向きに設定し、冷たい空気を部屋全体にいきわたらせるのが大切です。扇風機などで冷えた空気を循環させてあげるのも良いですね」
「また、室外機は日陰におき送風口をモノで塞がないようにしましょう。なかには植木鉢や、室外機カバーのような遮蔽物を置く方もいますが、それでは室外機が、吐き出した熱風を再び吸い込むことになります。熱を効率よく棄てられる環境を整えてあげてください」
さて「つけっぱなし」といえば睡眠時のエアコン設定だ。特に睡眠時には湿度コントロールが重要だという。最後に快適な眠りを誘うエアコン設定を伺った。
「人は体温が大きく速やかに下降するほど寝つきがよくなるといわれています。そのため、入眠時には手足を熱くして熱を発散したり、汗をかいて熱を放出したりします。しかし、湿度が高めだと汗がなかなか乾かず、不快なだけでなく、体温調節が上手くいかず寝つきが悪くなります。一方で、室温が低すぎると血管が収縮して放熱できず逆によく眠れなくなります。夏は、寝巻やタオルケットなどの寝具が薄めだとして、室温は28℃以上で湿度が50%くらいがベストでしょう」
※出典 http://www.daikin.co.jp/air/knowledge/labo/kaimin/index.html
「また、人は深い眠りのノンレム睡眠と比較的浅い眠りのレム睡眠を繰り返します。ノンレム睡眠・レム睡眠の平均的な周期は90分といわれています。冷やし過ぎや「つけっぱなし」を気にされるならば、深い眠りが2周期分確保できる3時間を目安にOFFタイマーをセットしてみてはいかがでしょうか」
今回の取材で、エアコンについて長年の疑問や思い込みを晴らすことができた。特に、温度と湿度の関係は目から鱗。快適に過ごすことが、省エネにつながるならば、すぐにでも実践したいことばかり。これからは湿度計が手放せない生活になりそうだ!
取材を快く引き受けてくださった皆様、ありがとうございました。