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愛知県、名古屋市。新幹線を降り、市営地下鉄東山線、名鉄瀬戸線を伝って守山区へ。中高年記者が降り立った駅は、大森・金城学院前駅。8月上旬、この駅名にもついている、「名古屋のお嬢様系女子大」のメディア公開があると聞き、40を超えた記者が“イマドキの女子大”を場違い承知のうえで潜入。
学内を歩いてみて、現役女子大生と慣れない話を交わしてみると、意外な発見ばかりだった……。
駅から庄内川へ向けて、閑静な住宅街をつくる坂道をのぼること3分で、ゆるやかな丘のうえにきれいな校舎が複数、建っている。この坂道の3分間で、金城学院大学に対する記者の先入観、妄想が不必要に広がる。「金城学院大学」「お嬢様」と打って検索してみると、「名古屋名門女子校御三家のひとつ」、「幼稚園から大学まで一貫して通った女子が『純金』、高校・大学のみが『18金』、大学のみ通った女子が『金メッキ』などともいわれる」などなど。
そんな名門に、こんな中年男が入れるのか、と。 今回のメディア公開では、校舎内外の見学、教育施設の体験、教員・学生の研究内容プレゼンテーションといったプログラムを用意。記者陣がまず驚いたのは、薬学部もあれば、マスコミコースもあり、これまでの単科系女子大のイメージを覆す、「5学部12学科/コース」も設定されているということ。
まず、薬学部薬学科の黒崎博雅教授による研究報告は、理系出身の記者でも難しくてポカーンな世界。「メタロβラクタマーゼと阻害剤複合体の立体構造」とその模式図がプロジェクターに照射された時点で、中年はフリーズした。
この金城学院大学は、文学部、生活環境学部、国際情報学部、人間科学部、薬学部をそろえる。いきなり薬学部のプレゼンでフリーズした中年記者は、人間科学部多元心理学科 宗方比佐子教授や、もと電通マンで国際情報学部国際情報学科の庫元正博教授のプレゼンへと移って「あっ、これがイマドキの女子大かも」と思えてきて、やっと再起動。
「最新の校舎へ案内します」とうながされて、2012年からの大規模キャンパスリニューアルで出現したエラ・ヒューストン記念礼拝堂、W1・2・3棟を歩く。どこかの現代美術館のようなつくりに、圧巻。記念礼拝堂で深呼吸して、「あっ、ここはキリスト教系の大学なんだ」と気付く。
それにしても、「受験生が評価する キャンパスが綺麗な大学」の東海・北陸地区女子大学第1位(2016年大学通信調べ)とうたってるけど、ダサい国立大学を出た中年記者がまず思ったのは、「これは、学費が高いに決まってる」だ。
もう、ここまで見させられると、少し緊張が解けてきた。もはや“あきらめ”に似た気持ちになってきて、中年記者にガマンして、いっしょに歩いてくれている現役女子大生にこう聞いた。「でも学費、お高いんでしょ」と。毎日、通販番組で流れる、あのアドリブだ。ため息まじりの質問に、現役女子大生はこう教えてくれた。
「いや、でもほかの大学とほぼ同じですよ。薬学部はそれなりに、高いけど。それでもほかの大学の薬学部と同じぐらい」(女子大生) 「いやいやいや、まさか。それはお嬢さん系女子大学の相場でしょ」(記者) 「いや共学の一般的な私立大と同じですよ」(女子大生)
聞けば、文系学科の初年度納入金は134万円ほど。さらに、「金城サポート奨学金」なるミラクルが加わると、学費が半額以下になり、「国公立大並の学費で私大のきめ細やかなサポートが受けられる」(同大)とか。でも、このサポートを受けるには、「一般入試(前期)2・3科目型/成績上位者100人」「センター試験利用入試(前期)/成績上位者100人」などが対象といい、そうかんたんなハードルではないか……。
最後に、中年記者が「これは名門女子大っぽいなー」と思ったのは、番組キャスターやテレビ制作現場を疑似体験できる空間がドカンとあったり、キャビンアテンダント採用者数中部地区女子大学第1位をキープしていたり、航空業界への就職者が多かったりする点。 あまり深く聞いたり、予定以上に留まっていると、怪しまれるいっぽうなので、去りぎわにこう聞いた。「金城学院大学の“金城”は、名古屋城の別名をとってつけてるんすか?」と。すると、現役女子大生はサッと片手を左右に振り、こう教えてくれた。
「大学の基礎を築いたアメリカ人宣教師、アニー・ランドルフが、『黄金のごとく輝きて、城のごとく堅かれ』という意味で付けたみたいです」。創設は明治の時代、1889年と。恐れ入る。大学の丘を駆け下り、帰りの名鉄瀬戸線電車を待っていると、ごくフツーの女子大生たちがホームに並んだ。そのスタイルは、いわゆる名古屋嬢ではなく、イマドキの女子たちで、なぜかちょっと、ホッとした――。