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「たいふう」(さく・え 加古里子)
そう、加古里子(かこさとし)様の科学絵本でございます。最近話題の絵本作家、ヨシタケシンスケ様も影響を受けたという加古里子様です。91歳にして現役バリバリの加古里子様です。雑誌「クロワッサン」の最新号(7月10日特大号)にも、加古様とヨシタケ様の対談が載っておりました。
ちなみに、加古様といえば、「だるまちゃん」シリーズで有名でございます。
だるまちゃんシリーズは1967年に誕生。「だるまちゃんとてんぐちゃん」をはじめ、2014年までに8作が発売!累計約360万部を売り上げるロングセラー絵本でございます。
科学技術と教育文化のコンサルタントの仕事をしながら、絵本作家、児童文学者として、数々の物語絵本や自然科学の科学絵本(知識絵本)を出されております。その数、なんと数百冊!今年もすでに数冊だされております。
話をもどします。
絵本「たいふう」は、「こどものとも」の1967年9月号(138号)でした。ひとつの台風の上陸を通して、当時の天気予想の現場、台風報道の舞台裏、町の様子がリアルに描かれております。また、絵が昭和の味がにじみでていて、たまらないのでございます。「50年前は、こんなだったんだぁ」と、大人も当時の様子(報道現場、天気予報、防災対策など)が勉強できる、まさにナマの歴史を伝える秀逸な科学絵本になっております。
お盆休みは、この絵本を持って、田舎のおじいちゃんおばあちゃんに、当時の話を聞くのもよいかもしれません。
ただし、入手困難な絵本でございます。図書館に行けばあるかもしれませんが、この時期は難しいかも…。
で、やっと本題でございます。
絵本の中にテレビ局のスタジオのシーンがございます。そこには、司会者(アナウンサー)らしき人が椅子に座り、テーブルに置いてあるマイクに向かって、台風情報を語っているのですが、その背後には大きなモニターがあって、そこには、被害を受けている現地の映像が映し出されております。
このシーン、今では当たり前でございますが、実は絵本が出版された当時、1967年には、そんなシステムは、まだ開発されていないのでございます!
加古様は、著書の「加古里子 絵本への道」のなかで、このことについて、こう語っておられます。
「余談になりますが、今ではニュースの時間にアナウンサーが原稿を読み上げる背後に、現地の映像が出てくることは当たり前のことですが、この時にはまだそれがテレビの技術でできていませんでした。芝居をやっていましたから、朗読の背後で物語が進行するのはごく自然と思っていたし、演劇の構成から言えば当然やるべきだと思ったので、作品の中でそれを試みたのでしたが、そうした手法がこの絵本の出版のすぐ後でテレビニュースでもなされるようになったことにも驚きました。」と。
きっと、絵本を読んだスタッフがこの演出を採用したにちがいありません!一冊の科学絵本が今の気象報道スタイルを生み出した、小生はそう信じたいのでございます。
(文:N田N昌)