脱炭素は「我慢」しなくていい?環境省が「らくデコ活」始動、Jリーグ・ハロプロと日常の行動を後押し
「環境のために、少しくらい我慢しなければ」。脱炭素と聞いて、そんなイメージを持つ人もいるのではないだろうか。
環境省は9月28日、「デコ活2ndステージ」発表会を開催し、新たなコンセプトワード「もっとらくする、脱炭素。『らくデコ活』」を発表した。目指すのは、環境のために無理をするのではなく、好きなことを楽しんだり、暮らしを快適にしたりする行動が、そのまま脱炭素につながっていく社会だ。
会場では、Jリーグと連携した衣類回収や、ハロー!プロジェクトの企画ユニット「DECA!BEAT(デカビート)」による住宅の断熱施策も披露された。なぜ今、「らく」という考え方を打ち出すのか。その背景と、新たに始まる取り組みを紹介する。
「環境のために我慢する」から「らくで、たのしいから行動する」へ
「デコ活」は、2050年ネット・ゼロの実現に向け、脱炭素につながる新しい豊かな暮らしを社会全体でつくる国民運動だ。
環境省では2022年から、関係省庁や自治体、企業、団体などと連携しながら、暮らしの中での行動変容やライフスタイル転換を後押ししてきた。現在、官民連携協議会には4,000を超える企業・団体などが参画し、20を超えるプロジェクトが生まれている。
こうして取り組みの基盤が広がる一方、次の課題となるのが、デコ活を一人ひとりの日常へどう浸透させていくかだ。
そこで「デコ活2ndステージ」で掲げられたのが、「もっとらくする、脱炭素。『らくデコ活』」という新たな考え方である。
発表会で環境省 地球環境局 地球温暖化対策課 脱炭素ライフスタイル推進室長の細貝拓也氏は、生活者の行動を後押しするうえで、「我慢しない」「めんどうでない」「たのしい」といった価値が重要だと説明した。
「環境のために我慢する」のではなく、「らくで、たのしいから行動する」。暮らしや関心、価値観に寄り添うことで、脱炭素をより身近な選択に変えていく狙いだ。
好きなクラブを応援しながら衣類をリユース・リサイクル
「らくデコ活」では、今年度の重点テーマとして「衣類」と「住宅(断熱)」を掲げている。衣類分野では、環境省とJリーグが「服のらくデコ活 クラブ対抗衣類回収バトル」を実施する。
日本では年間約50万トン、国内で1年間に供給される新品衣類の約6割に相当する量の服が、ごみとして焼却・埋め立て処分されている。そこで、衣類のリユース・リサイクルに参加するきっかけとして、サッカーの“クラブ対抗戦”という仕掛けを取り入れた。
参加するのは、鹿島アントラーズ、水戸ホーリーホック、横浜F・マリノス、ガンバ大阪、アビスパ福岡、ベガルタ仙台の6クラブ。各クラブのホームゲーム2試合で専用ボックスを設置し、家庭で着なくなった衣類を回収する。
順位は来場者1人当たりの回収量で決定。10月から順次スタートし、11月ごろに中間結果、2027年1~2月ごろに最終結果を発表する予定だ。
発表会では、Jリーグ サステナビリティ領域担当役員の辻井隆行氏と6クラブの代表者が登壇し、実際にユニフォームを回収ボックスへ投入した。
鹿島アントラーズの取締役・濱口昌紀氏は、未来の世代が安心してサッカーを楽しめる環境を守るという決意を示し、「試合での勝利と同じ熱量」で環境の取り組みを進め、衣類回収バトルでもタイトルを目指したいと意気込んだ。
好きなクラブを応援するためにスタジアムへ行き、そのついでに着なくなった服を持っていく。脱炭素のために何かを我慢するのではなく、楽しみの中に自然と環境に配慮した行動を取り入れられる仕掛けだ。
「大がかりな工事」だけじゃない。身近な断熱を発信
もう一つの重点テーマが「住宅(断熱)」だ。夏の熱中症や冬のヒートショック対策には、冷暖房を適切に使い、快適な室温を保つことが欠かせない。一方、断熱性能が十分でない住宅では室温を保つために多くのエネルギーが必要となり、光熱費やCO2排出量の増加にもつながる。
そこで「お部屋のらくデコ活」の発信役となるのが、ハロー!プロジェクトの7グループから1人ずつが参加する企画ユニット「DECA!BEAT」だ。発表会には、米村姫良々さん、江端妃咲さん、豫風瑠乃さん、弓桁朱琴さんの4人が登壇。「断熱ナビゲーター」への就任が発表された。
トークセッションでは、窓際の寒さやエアコンの温度調整といった身近な悩みから、遮光カーテンやラグ、遮光シートなど、普段の暮らしで取り入れられる工夫へと話題が広がった。
さらに、内窓の設置や断熱窓へのリフォーム、国の補助制度も紹介。メンバーからは「もっと大がかりなイメージだった」「補助制度があること自体知らなかった」と驚きの声も上がった。
「断熱」と聞くと大規模なリフォームを想像しがちだが、カーテンなど身近なところから始める方法もある。部屋を過ごしやすくすることが、冷暖房の負担を抑え、脱炭素にもつながっていく。
DECA!BEATは今後、11月から動画やSNSなどを通じ、こうした断熱アクションを発信していく予定だ。
「環境のため」ではなく、自分の暮らしのために
脱炭素という言葉は大きく、日々の生活からは少し遠く感じられるかもしれない。
しかし、「らくデコ活」が示すのは、環境問題だけを理由に行動を求める発想ではない。日々の楽しさや快適さを起点にした選択が、結果として脱炭素にもつながっていくという考え方だ。
衣類回収や断熱を入り口に、脱炭素を「特別な取り組み」ではなく、日々の暮らしの延長として定着させられるか。「デコ活2ndステージ」のこれからに注目したい。
らくデコ活 特設サイト:https://ondankataisaku.env.go.jp/decokatsu/rakudecokatsu/