生成AIが急速に身近になる一方、「仕事では思うように使えていない」と感じる人も多いのではないだろうか。


チェンジホールディングスは9月16日、「AI戦略記者発表会」を開催。独自調査から見えてきたAI活用の実態を紹介するとともに、AI開発企業のグループ化、自治体でのAIエージェント実証、AIを活用した監視サービスなどを発表した。


今回のキーワードとなったのは、AIを導入するだけで終わらせず、実際の業務や社会の変化につなげる「実装力」だ。


「AIを使いたい」と「使えている」の間に大きな差



発表会に登壇したチェンジホールディングス代表取締役兼執行役員社長の福留大士氏は、まずAI活用をめぐる“格差”について説明した。


同社の独自調査では、業務でAIを利用したことがある人のうち、「今後、業務でAIをもっと活用したい」と答えた人は72.9%。一方、「現在、業務でAIを十分に活用できている」とする人は16.9%にとどまった。


背景には、情報漏洩や知的財産権の侵害、ハルシネーションによる誤情報、情報の偏りなどへの不安があるという。AI活用が進まない理由は、個人の能力だけでなく、職場や組織の環境にもあると同社は分析する。


さらに、AIを十分に活用できている割合には地域差もあり、東京23区と地方部では3.6倍の差がみられたという。


AI時代に求められる「実装力」



チェンジHDが重視しているのが、AIを導入して終わりにせず、実際の業務変革につなげることだ。


同社はこれまで、民間企業のDX支援に加え、地方創生や自治体・中央省庁の公共DXなどを手掛けてきた。


福留氏は、DXで重要なのは単なるデジタル化ではなく、「トランスフォーメーション=変革」だと説明。AIについても、ツールを入れるだけではなく、人材育成や業務プロセス、組織の仕組みまで変えていく必要があるとした。


AI開発企業「アウターク」をグループ化



具体的な取り組みの一つが、AI開発を手掛ける株式会社アウタークのグループ会社化だ。


アウタークは、製造業を中心に、ベテラン社員が持つ経験や勘といった「暗黙知」を、誰もが活用できる形にするAIシステムの開発などを行っている。



代表の西山瑞生氏は、東京大学工学部在学中に同社を設立。自社の開発工程にもAIを積極的に取り入れ、同社によると、従来手法やSIerと比較して約4分の1の期間と費用でAIソリューションを提供できるという。


西山氏は今回、チェンジHDグループのCAIO(Chief AI Officer)にも就任。グループ横断でAI活用を推進していく。


人手不足の自治体をAIエージェントで支援



もう一つの柱が、自治体におけるAIエージェントの活用だ。


特に対象としているのは、デジタル人材や予算が不足し、生成AIの導入を進めにくい中小規模の自治体だという。


実証では、まず小規模な業務から段階的に着手。調査や要約、照合、文書作成などをAIに任せ、削減できた時間や業務効果を測定する。



現在は栃木県那須塩原市と奈良県三宅町で実証を進めており、AIによって職員の時間を生み出し、住民対応や政策の検討など、人が担うべき仕事へ時間を振り向けることを目指している。


「人×AI」でネット上のリスクを監視



グループ会社のイー・ガーディアンでは、2026年10月からAIを活用した監視ソリューションを順次提供する。


同社が重視しているのは、すべてをAIに任せるのではなく、AIと人がそれぞれ得意な領域を担当する「人とAIの分業」だ。


たとえば、ゲームやアニメ、出版、音楽などのIP(知的財産)の不正利用をAIで自動監視しながら、人による判断も組み合わせる。生成AIの普及によって監視すべきコンテンツが増えるなか、人の目だけでは追い切れない領域をAIで補う考えだ。


AIを「使える社会」にできるか



生成AIの性能が急速に進化する一方、高性能なAIが存在することと、企業や自治体が実際の仕事で使いこなせることは同じではない。今回の発表で示されたのは、AI時代に重要なのは最新のツールを導入することだけではなく、業務や組織、人材のあり方まで含めて変え、成果につなげることだ。


企業だけでなく、人手不足が深刻な地方自治体や、膨大な情報を扱う監視の現場にもAIを広げようとするチェンジHD。AIを一部の人だけが使う技術から、社会を支える仕組みへと変えていけるのか。今後の取り組みにも注目したい。


チェンジHD公式サイト:https://www.changeholdings.co.jp/

情報提供元: マガジンサミット
記事名:「 AI活用のカギは“実装力”チェンジHDが企業・自治体に広げる新戦略