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熱中症に強い身体づくりを考えれば、まだ暑くならないうちからバランスのとれた食事を積極的に摂取することが大事です。でもバランスのとれた食事って、続けるのがむずかしいんですよね。具体的にどんなメニューが良いのでしょうか。1つ例を挙げていただきました。谷口先生は夏野菜カレーがおすすめだといいます。なぜ夏野菜、しかもカレーなのでしょうか?
まず夏野菜カレーに含まれているのは、トマトやかぼちゃなどの夏野菜や豚肉など。これらの食材の栄養がとっても大事なのだそう。
前提として知っておきたいのは、暑い環境で汗をかいて、失われた水や電解質、ビタミン類を補うことが重要だということ。特に電解質であるミネラルである、ナトリウムやカリウム、マグネシウム、ビタミンB1が大事だといいます。
ナトリウムは塩に含まれますが、塩分をしっかり取ることが大事であることはよく知られていますよね。
次にカリウム。カリウムは、野菜や芋類、藻類に豊富であり、尿を出やすくすることから、体温を下げることに役立つそうです。さらに、緑黄色野菜や豚肉に豊富に含まれるビタミンB1は熱中症の症状を緩和させてくれるのだそう。暑さによる疲労感を和らげ、食事から摂取した糖質を体内で燃やして、効率的にエネルギーを作ることで、必要な身体作用をサポートしてくれるのです。
つまり、カリウムやビタミンB1を一度に摂ることができるのが夏野菜カレーというわけです。ぜひ一年中、外食時に積極的に選んだり、手作りしたりして取り入れましょう!
魚介類や「リポビタンD」などの栄養ドリンクに多く含まれる「タウリン」も、熱中症予防のための重要な栄養素の1つだといいます。タウリンは疲労回復を回復する効果で有名ですが、実は身体のさまざまな機能を調節する働きがあるだそうです。近年は深部体温を下げる働きがあることも研究結果からわかっていることから、熱中症予防にも意識したいといいます。
タウリンは圧倒的に牡蠣に多く含まれるんだそう。他にはホタテやあさり、たこ、たら、いかなどにも豊富です。
タウリンは水溶性なので、スープのように汁ごといただく料理がおすすめだそうですよ。安夏野菜カレーに入れてみるのもいいかもしれませんね。
料理が苦手な人は栄養ドリンクを利用すれば手軽に摂取できますよ。
夏といえばバーベキュー。屋外でお酒を片手に肉や野菜などを焼いて盛り上がるシーンもあることでしょう。でも熱中症には充分注意したいですよね。もしバーベキューを真夏にする際には熱中症になりやすいことを覚えておきましょう。なぜならお酒には利尿作用があり、脱水症引き起こしやすいためです。さらに日光を直接浴びる時間が長いので、熱中症のリスクが上がってしまいます。
そこで谷口先生がおすすめする、真夏のバーベキューの熱中症予防策を5つご紹介します。
1.お酒を飲む前に少しお腹を満たしておく
2.お酒以外の飲み物で水分補給をする
3.日陰や屋内などを涼しい環境で休憩できる場所を用意する
4.お酒だけでなく、おつまみなどと食事もきちんと食べる
5.時差熱中症に注意する
水分と塩分をあわせて意識的に摂取することで、予防になります。
時差熱中症とは、時間差で起きる熱中症のこと。熱中症は約24時間以内の暑さが影響することから、症状が時間差で現れることもあるんだそうです。
もしバーベキューが終わって家に帰った後、頭痛や吐き気、食欲不振、身体に力が入らないなど、いつもと違う症状を感じたら熱中症を疑いましょう。
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今年の夏も厳しい暑さに見舞われるといわれています。今のうちに熱中症予防の正しい知識を備えて準備しましょう。
【取材協力】
谷口 英喜先生
済生会横浜市東部病院 患者支援センター長/周術期支援センター長/栄養部部長、医師
麻酔・集中治療、経口補水療法、体液管理、臨床栄養、周術期体液・栄養管理のエキスパート。日本麻酔学会指導医、日本集中治療医学会専門医、日本救急医学会専門医、TNT-Dメディカルアドバイザー。1991年、福島県立医科大学医学部卒業。学位論文は「経口補水療法を応用した術前体液管理に関する研究」。2024年5月に新刊『熱中症からいのちを守る』(評言社)が刊行。その他の著書『いのちを守る水分補給~熱中症・脱水症はこうして防ぐ』(評言社)など。