広い庭に、ログハウスのような無垢材で作られた建物。訪れる人にカフェだと勘違いされることもあるような、琵琶湖近くで中村麦先生が運営しているワラワラデンタルクリニックです。「地域の歯科では対応が難しいレベルの質の高い医療を提供している」と自負する中村先生。こだわりは、「歯科医嫌いの人も通うようになるクリニックづくり」です。歯科医としての軌跡と今後の展望についてお聞きしました。

「歯科医嫌いでも通い続けられる雰囲気の歯科」が特徴

私は、滋賀県大津市で歯科医院「ワラワラデンタルクリニック」の院長を務めています。当院の特徴の 1つは、時に「カフェですか?」と聞かれることもあるような、国産無垢材を使ったナチュラルな雰囲気の建物で、開放感のある庭があること。そこで、予防歯科や矯正、中でも小児の予防歯科や矯正に強い医療を提供しています。

大人でも「歯医者が好き」だと言う方はなかなかいません。私自身、歯医者はもちろんそもそも病院に行くのがあまり好きなタイプではないのです。その理由の 1 つは、クリニックの無機質な雰囲気だと思っています。白い壁に囲まれた診察室で、白衣を着た先生が出てくる。それだけで怖がるお子さんも多いですから、子どもが怖がらないような雰囲気のクリニックにしようと心掛けてきました。 その上で、質の高い治療を行うこと。

患者さんの悩みや困りごとに対し、「うちではできません」とは言いたくありませんし、患者さんが思ってらっしゃること以上のことを提案できなければプロではないと思っています。「他の地域の歯科ではできないと言われました」と言われるレベルの治療ができるよう、治療の質を上げるべく日々勉強しています。それは独立開業した今も変わらない姿勢ですね。

「親が歯科医の人に負けたくない」。その一心で幅広い歯科治療を経験

私が歯科になったきっかけの 1 つは、親から言われてきた「手に職をつけなさい」という言葉です。歯科医の多くは親や親戚に歯科医がいる方が多いのですが、私にはそうした人脈はありません。

手に職をつけるため、獣医資格を取れる大学と歯科大学を受験。結果、受かったのが歯科大学だったことから、歯科医への道を進むことに。最初に申し上げた通り、病院通いが好きなタイプではありませんでしたから、自分が歯科に通っていた経験から「自分も歯科医になりたい」と思ったわけでもないのです。

ただ、私は負けず嫌いです。やるからには、誰にも負けたくなかった。特に、親や親戚が歯科医だという周りの人に負けてたまるかという気持ちが強かったです。そのため、晴れて歯科医となったあと、独立するまでの間には多様な歯科で働きました。技術を磨けるところに勤めてみたり、24 時間年中無休で診察をしている歯科がどのように経営しているのかを知りたくて、日中の仕事を終えた夜 8 時から働きに行ってみたり。訪問歯科で働いて、ノウハウや営業の仕方、パソコン操作を学ばせてもらったこともあります。別に開業を目指していたわけではなく、少しでも経験を積みたい、自分のスキルを上げたいと思っての行動でした。正直、当時は本当に休みなく働いていたといっても過言ではありませんでしたね。

地域のニーズに応えたくて、小児の予防歯科・矯正の専門性を磨き上げた

当院は、琵琶湖の西側、山や湖に近い自然豊かな場所にあります。滋賀で開業したのは、自然が好きで人混みが苦手だったからという個人的な理由でしたが、私が目指したかったクリニックのコンセプトと滋賀の地域柄がマッチしたように思います。開業したばかりのころは、休日に庭で地域に向けたイベントを開催。院内を見学できるようにしたことで、地域住民の方に受け入れてもらえたのかもしれません。

小児歯科や矯正を強みとするようになったのは、開業後のことです。お子さんが通院しやすい雰囲気づくりに成功したためか、小児歯科のニーズが非常に高いことが開業後にわかりました。そこから猛烈に専門性を極め、現在に至っています。 「ワラワラデンタルクリニック」という名前の由来は、「笑いがあふれる歯科にしたい」という私の思いです。また、属人化した状態のクリニックにはしたくないという思いもあり、自分の名前をクリニック名に使うことを避けたという理由もありました。2024 年 4 月 から、当院は歯科医 3 名体制になります。

分院も目指しているのですが、そのためにはさらに人員を増やさなければなりません。滋賀はとてもいいところなのですが、やはり都市部で働くことを選ぶ歯科医が多いです。目下の課題は採用ですね。院長としてだけではなく、経営者としての立場も大切にしつつ、質の高い医療と盤石な体制づくりの両立を目指していきたいです。

情報提供元: マガジンサミット
記事名:「 歯科医嫌いでも通えるようになる歯科を。質の高い治療を滋賀で提供する歯科医の軌跡