「僕自身も言葉にできないです」カンヌW快挙作を永山瑛太が語れない理由

第76回カンヌ国際映画祭【脚本賞】【クィア・パルム賞】を受賞した映画『怪物』の大ヒット御礼舞台挨拶が6月19日に都内映画館で行われ、安藤サクラ、永山瑛太、そして是枝裕和監督が出席した。

6月2日の公開以降、興行収入12.3億円を記録し、動員100万人突破目前という“怪物”級の大ヒットを記録中。会場には4回目の『怪物』おかわりという観客もおり、安藤は「えー！」と嬉しい感嘆の声を上げていた。

そんな反響もあり安藤は「私よりもご覧になられた皆さんの方が『怪物』の細かいところまでご存じではないかと思うと…喋るのが怖い気持ちになります」と恐縮。これに永山も「知り合いからも『会って話がしたい』とか『5回目を観た』とかの感想があって、映画を観てくれたお客様の方が『怪物』をより理解している気がして…僕自身も言葉にできないです」と大ヒット&大反響に驚きを隠せなかった。

一方、是枝監督は同志のような監督仲間たちから「いつもよりも演出に迷いがない、編集の切れがいい、もう自分で脚本を書かない方がいいのではないか」というメッセージをもらったという。これに是枝監督は「悔しい気持ちもなくもないが、坂元裕二さんと一緒にやったことを自分で吸収して次に活かして無駄のない脚本を書こうという気持ち。ただ自分でも映画を観てもいい編集をしているなと思います」と手応え十分だった。

印象的なシーンの話題なると安藤は、病院の帰り道に湊（黒川想矢）が走り出すシーンをピックアップ。安藤が「何度か繰り返しやっていく中で想矢君がはじけた瞬間を近くで目の当たりにして、彼のこの反応にのっていくあの時間にワクワクした気持ちがあった」と振り返ると、是枝監督は「最初は湊がしゃがみこんで顔を覗き込む芝居の予定だったが、リハの時に湊が走り出した。しかし走っていく道のその先まで撮影予定ではなくて照明を用意しておらず、撮影を中止にして日を改めて撮り直した。スタッフたちも撮り直しに賛同してくれたので、もしそこで撮ろうとなったらあのようなシーンにはなっていないはず」と舞台裏を明かした。

永山は、クリーニング店で見せえる安藤のリアクションの良さを上げて「今までの役者の中であのような動きをした人を見たことがなくて、すごいと思った。なかなかあの反応はできない。すごいものを観たと思った」と安藤の身体表現を絶賛。是枝監督も「役者は究極的に言うと運動神経が重要。体をコントロールする能力が高い役者さんが優れた役者さんだとすると、この二人はそれが優れている。演出していてとても楽でした」と俳優として身体能力の高さを評価していた。

また是枝監督は初タッグとなる脚本家・坂元裕二の魅力については「裕二さんの時間をかけて決定稿に至る緻密な脚本作りは見ていて本当に勉強になった。わかっていたつもりでも、出来上がった作品を観ると画にして繋いで初めて伏線の存在に気づくこともあったりして、それが本当にすごいと思った」と舌を巻いていた。

念願叶っての坂本龍一氏との初タッグについては「すべての音楽をお願いできたわけではないが、このような形で一緒に同じスタッフロールの中に自分と坂本龍一さんの名前があるのは嬉しく思う」としみじみ。ロケハンで夜の湖を見た段階で坂本氏に音楽をお願いしようと思ったそうで「撮影前に脚本をもらってコンテを描くときも坂本さんの音楽を聴いていたので、自分の中でこの作品と坂本さんは一体化していた。そこから離れるのは難しく、別の方に頼むという発想もありませんでした」と唯一無二のタッグであることを口にしていた。

『怪物』が190の国と地域で公開されることも決定！安藤は「日本国内でも様々な角度からの感想があることを公開後に実感しているので、文化が違う中でこの映画が広まったらまたその角度が増えるのかと思うと、面白そう」とワールドワイドな広がりに期待。永山は「190の国と地域…。想像ができないけれどすごいことだと思う。ほかの国の方々の感想を聞きたいです」と興味津々で、是枝監督も「190も国や地域ってあるんだ…」ととぼけつつ「カンヌでは街中ですれ違いざまに色々な感想を聞くことができました。190の国と地域で公開されることで、この映画についての会話が繋がっていくといいなと思います」と歓迎していた。