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2015年4月、「聖女の罪と罰」(英語版:Untold Truths of Saints)を自費出版しました。物語の舞台は日本とヨーロッパ。格式高い碧小路家の娘・美和はオペラへの憧れから、第一次世界大戦後のイタリアに渡ります。しかし、再びヨーロッパを襲う戦渦に巻き込まれることに。激動の時代に翻弄されつつたくましく生きる姿を、実在するオペラと重ねつつ描きました。戦争の悲惨さを描いた描写は現在のウクライナ情勢にも通じるものがあり、現代を生きる人にも響くものがあるかと思います。
私がこの小説を書き始めたのは、65歳の時でした。実は、小説を書くことにそれほど興味があったわけではありません。しかし、人生を振り返ってみると、小説を書くための道筋が出来上がっていたように思います。私は1942年に茨城県に生まれました。中学生のときに、文化祭で実演するためにオイディプス王や高瀬舟を題材に舞台脚本を書いたのですが、物語の背景をきちんと調べず、時代考証もめちゃくちゃ。お世辞でもいい出来とは言えません。それでも、いい経験になりましたし、楽しかったことをよく覚えています。
家が近かったので茨城短期大学英語科に進学。
卒業後に結婚をし、二人の娘に恵まれました。その娘達が中学生になり英語の勉強が始まったので、私も一から(本当にABCから)学び直しました。
ミシガン大学の通信制のミシガンアクションイングリッシュと、フォニックスで即戦力を磨きました。
43歳の時、偶然にも米国メイン州で小学生に日本の文化を教えると言うインターンシップが開催されることを知りました。募集要項を読んでいるうちに、中学生時代に脚本を書いたときの記憶が鮮やかによみがえり、劇で教えられるのではないかと、衝動的に参加を決めました。英語に対する心理的な障壁がなかったことも後押しになっていたでしょう。
そのインターンシップでは、浦島太郎を題材に脚本と演出を行い、ミュージカルを開催。異国情緒あふれる内容で、出演の生徒や父兄の注目を集めました。演者、観客が一体となって作る舞台特有の雰囲気が心地よく、いつかまた脚本を書きたいという気持ちが芽生えたのもこのときです。
そして、60歳のときに転機がやってきます。娘から借りたダン・ブラウンの「天使と悪魔」を読み、イタリアへの憧れを抱きました。文章で読んだだけでも美しい景観が目に浮かぶのですから、実際に見たらより美しく、もっと心が動かされることでしょう。それを確かめたいという気持ちから単身イタリアに飛びました。
現地では語学学校に通っており、宿舎の同部屋にはオペラ歌手を目指している女性がいました。彼女にアリアを聞かせてもらった瞬間、私の心は震えました。そこで在学中にオペラを鑑賞しに行き、美しい観光名所を訪れているうちに、物語のイメージが下りてきたのです。美しい風景と音楽に感化されたこの感情を、目に見える形で残しておきたい。そうして書き上げたのが「聖女の罪と罰」です。
実は旅行中にSDカードを紛失してしまったため、手元に写真があまり残っていませんでした。ですから、後からインターネットで検索したり、現地の知人に問い合わせたりといったように、資料集めには苦労しましたね。
数々の有名な観光地が小説の舞台ですが、日本とスイスの主な舞台はあえて特定できるようには書きませんでした。
読んで下さった方が推測して下さるのを楽しみにしております。
今は「聖女の罪と罰」の商業出版化を目指していますが、作品を小説だけにとどめず、さまざまなコンテンツに昇華させたいと考えています。読者からは「映画を見ているようだ」「大河ドラマにするべき」というお声をいただき、期待に応えるべく実現させる次第です。しかし、映像化というのは簡単にできるものではありません。ですので、まずは2021年には、物語の中で扱われているアリアを中心とした音楽会を開催。現在は、小説の中でも取り上げているわらべうたをアレンジした「通りゃんせ変奏曲・喜怒哀楽」を用意し、コーラスで舞台を彩りたいと考えています。
現代のテレビドラマは非常にマンネリ化しています。私の小説でしたら、今までにないダイナミックさと華やかさを提供できると思います。また、日本やヨーロッパの各地を舞台にしていますから、そういった都市の観光の活性化にも貢献できると考えています。ゆくゆくは映画化、舞台化なども行い、閉塞感のある日本のエンターテイメントに新しい風を送りたいですね。