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日本財団(東京都港区:笹川陽平会長)では、アスリートが中心となって社会課題解決の輪を広げるプロジェクト「HEROs」を展開しています。同プロジェクトの一環として2020年からスタートしたのが「HEROsLAB」。これは次世代のHERO育成を目的としており、スポーツ界で活躍した一流アスリートが自身の経験や価値観、考えなどを伝えていく学校訪問イベントです。これまで元サッカー日本代表の中村憲剛氏やバドミントン人気向上に尽力している潮田玲子氏などが参加し、生徒に熱いメッセージを贈っていました。
さて、3月20日にぐんま国際アカデミーで実施された「HEROsLAB」にはロンドンオリンピックボクシングミドル級で金メダルを獲得し、WBA世界ミドル級スーパー王座にもなった村田諒太氏が登場。「罪を犯した人の更生を社会問題として捉え、解決策を議論する」をテーマにした講演や生徒とのディスカッションが行われました。
村田氏がまず伝えたのは「成功のための数式は存在しない」ということ。村田氏は2004年と2008年にオリンピック出場を狙うも敗戦。2012年のロンドンでようやく念願が叶いました。「成功者になる方法はない。目の前のことに一生懸命取りかかって、それが成功しようが失敗しようが別のものが見えてくる。そして、またそれに取り組んでいく。その繰り返し」と語りました。
紆余曲折の人生を歩んでいる村田氏。自身が大学4年生の時、当時の後輩が罪を犯して刑務所に入りました。以来、精力的に少年院や福祉施設などへ訪問しています。「自分の後輩もそうだが、そんなに悪い人ばかりが刑務所に入っているわけではない。更生の余地があるにも関わらず、今の社会では就職にハードルがあったり刑務所にいたことを隠したりしなければならないという現実がある」とし「特に少年院は罰を与える場所ではなく、更生する場所。それを受け入れられる社会になれば」と話します。
罪を犯してしまう人の心情に関しては「報酬の先送りができない」と指摘。「頑張って真面目に練習すれば世界チャンピオンになって大きな報酬を得られるかもしれない。それまで我慢できないから、悪い道に行ってすぐに報酬を得ようとしてしまう」。村田氏のリアルな経験談に、生徒たちは真剣に耳を傾けていました。
講演に続いて実施されたのはグループディスカッションです。「罪を犯した人の社会復帰が難しいという事実をどう認知させていくか」について、生徒たちは村田氏とともに議論を交わしました。
「YouTubeに広告を出す」、「SNSを使って広く知ってもらう」といった意見が出る中、あるグループは「被害者からの理解を得る必要がある。加害者にとって、被害者の言葉が一番心に響くと思う。それがあれば、世間も受け入れるのでは」と発表。これに対して村田氏は「今まで無い視点だった。例えば入所から10年経って出所した後に、被害を受けた人からの言葉は確かに残る。これはすごく重要なこと」と、生徒の柔軟な発想に感心していました。
現役時代同様、熱いスタンスで生徒と向き合っていた村田氏。村田氏から授かった“金言”は、生徒の今後の人生において、大切なものになるでしょう。アスリートが持つエネルギーやスピリットで社会課題解決を目指すHEROsの活動に、これからも注目です。