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今年6月の本社移転にあわせて立ち上がった「TOKYO BASE」は、三菱地所グループとして初のABW(Activity Based Working)を採用しており、業務内容に合わせ各種ワークポイントを自由に選択できるフリーアドレス型のオフィスです。現在480名が所属し、うち6割が日替わりでリモートワークといったバランスに保たれています。
大きく、カフェ空間と執務エリアに分かれ、それぞれに岩手県雫石町と山梨県甲斐市から提供を受けたスギ・ヒノキ・カラマツの原木や廃材などを活用したリチャージスペースを設けており、注文住宅事業に携わる会社としてSDGsや環境保全を考え、国産材を活用する商品思想や価値観を共有するようなイノベーティブなデザインが特徴のひとつです。
また、執務エリアにある10種類のワークポイントにはそれぞれ個性をもたせ、コミュニケーションを促進する空間、アイディアを閃きやすい空間、生産性をたかめ“時間”を産みだす集中作業空間など、業務内容にあわせて選択できるように工夫されており、コロナ禍をへて求められている、リモートワークとの併用を可能にしたハイブリット型勤務オフィスの代表といえます。
今関氏によると、2022年の四半期段階では都心5区の中型ビル以上の空室率は5%、募集面積は100万坪と高い水準となっており※、働く場所を選べる時代となった今、テナント側は激しい競争を強いられ、賃料以外での差別化が必要になってきています。(※出典 三幸エステート)
仕事効率が上がる空間設計や、対面コミュニケーションを促進させる工夫、出社ついでに寄りたい魅力的な施設が近隣あるか否かなど、今やオフィスに通いたくなる環境がなければ借りる理由はなく、また、何よりも感染対策や衛生管理がしっかりとなされている “ウェルビーイングなオフィス”が求められます。
このウェルビーイングの客観的な指標として、最近では「WELL認証」や「CASBEE ウェルネスオフィス評価認証」などがあり、健全で健康的なオフィス環境であることをアピールする手段のひとつとなっています。ビルオーナーにとって、このような認証取得は競合ビルとの差別化につながりますが、仕様や館内設備といったビル側での対応が不可欠なため、簡単に改善、取得できないのが現状です。
見えるところに空気清浄機があることが安心の基準だった2020年にくらべ、コロナ禍以降は除菌が当たり前のフェーズに入ってきており、置くだけでなく、より効率的で心理的に圧迫感のない設備が求められてきています。
日機装が今年9月に企業のファシリティ担当者200名、オフィスワーカー200名を対象に行った「アフターコロナ時代のオフィスに対する意識実態調査」の「オフィスの感染対策についてストレスを感じることは?」という質問では、「アクリル板等の仕切りによる圧迫感」「手指消毒が面倒」「社内が感染対策で溢れている」といった回答が挙げられました。
感染対策が心理的にも物理的にも苦しいものであり、今後、感染対策を続けるためには、「スペースパフォーマンス=空間対効果」の在り方を考える必要があります。
風通しがよく自由に動けるシェアオフィスは、閉鎖された空間が多かった今までのオフィスとは異なった感染対策が必要になってきます。前出の「TOKYO BASE」では、除菌脱臭と空気清浄ができる天井対応型の全館空調を取り入れており、執務エリアにおいては、デットスペースを産む置き型の空気清浄機は設置せず、社内に必要以上の圧迫感を与えない効率的なクリーンエア対応を実施しています。
一方で、カフェテリアなど訪問者をふくめ人が頻繁に訪れる空間には、あえて置き型の空気清浄機を設置し、見た目の安心につながるような工夫をしており、空間の用途に応じてフレキシブルな対応と配慮が感じられます。
リモートワークが当たり前になった今、オフィスに対して求めるものは、単なる作業の場ではなく、より良質なコミュニケーションやパフォーマンスを発揮できる空間。
さて、あなたの会社のオフィスは自宅よりも安心でき、近所のカフェより居心地が良く、太陽と緑と風が心地よい公園よりも健康的で健全な“ウェルビーイングなオフィス”でしょうか。まずは、安心して社員同士のコミュニケーションが行えるオフィス環境や設備を整えることがビルオーナーの直近の課題といえそうです。