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イギリスで美術教師をしていたジョン・マイアットは妻が出て行ってしまい、幼い子供の面倒をみるため教師を辞めることにしました。この間、自宅で名画の模写し、それを模写として売る仕事をしていました。その腕前は見事だったそうで、これに目を付けたのが、「教授」を名乗る詐欺師。最初は客として近づき、マイアットの信頼を得ると贋作を持ち掛け了承したんだとか。そして作品を本物として競売にかけると、ついた値はなんと1200万円。
ここからマイアットは子供のために贋作の道に入りました。この教授も相当の凄腕プロモーターだったようで、大手競売会社も騙され、売りさばいた贋作は200点、被害総額は3億円に上ると言われています。のちに2人は捕まり、主犯の教授は懲役6年、マイアットは捜査に協力的だったことからか懲役1年でした。服役後、マイアットは「二度と絵を描かない」と決心しましたが、彼を救ったのは事件を捜査していたひとりの刑事。マイアットの才能を惜しんだ刑事は、自身の家族の肖像画を依頼。100万円以上で買い取り、その後も合法的な絵画の以来の仲介役を務めマイアットの再起に一役かったそうです。
ちなみに約200点の贋作lを描いたそうですが、120点以上が未回収。マイアットは自分の贋作が正規のカタログに載っているのを発見することもあったそうです。
ドイツの天才贋作師「ウォルフガング・ベルトラッチ」。彼が描いた贋作は2000点以上にのぼり、その被害額は45億円以上といわれています。
彼が天才といわれる所以は、その徹底ぶりがあげられます。美術史や絵画理論、有名作家の人生や技術を研究し造詣が深く、制作にあたり画材をのみの市で購入し、仕上げるこだわりぶり。また、彼が描き上げる贋作も独特で主に2パターンあるんだとか。
ひとつは、「行方不明作品」。
有名画家の作品の中には描いたことは確実で、資料にタイトルや簡単な解説が残っていますが、所在がわからなくなっている物があります。この認知度の極めて低い作品を狙い制作します。
もう一つは「作家の空白期間」。
これは有名作家の作品制作が少ない時期を狙い「この時期に描いていた作品」として全くの新作を作り上げるという手法です。
さらに奥さんもベルトラッチの贋作活動に大きな力添えをします。奥さんは夫が制作した作品が存在するかのような書類を作成。警察の目も騙す仕上がりだったそうです。結局は2人とも逮捕されますが、2015年に釈放されました。
1900年代に活動したオランダの画家で20世紀で最も巧妙な贋作者の一人とされる「ハン・ファン・メーヘレン」。小さい頃は画家を志しますが父親から猛反対され、大学では建築を学びます。ところが卒業制作で描いた絵が評価を受け、一念発起で画家の道へ。
しかし売れない日々を過ごし、絵画の修復、絵画教室の先生や絵葉書の絵柄を描くなどして食いつないでいました。その後、売れない事を逆恨みし、美術界への復讐として贋作の道に入ったそうです。有名な贋作はフェルメールで11作品を制作。そのほかの作品もあわせ60億円以上の売り上げがあったといいます。
そして時は第二次世界大戦の真っただ中、メーヘレンが制作したフェルメールの贋作をナチスドイツのナンバー2で美術コレクターの「ヘルマン・ゲーリング」が購入してしまいました。戦後、オランダ当局にバレてしまいメーヘレンは「ナチスの協力者」「オランダの文化財の略奪者」として国家反逆罪で逮捕、国民からも糾弾を受けました。
しかしメーヘレンは、売った絵画は自分が描いた贋作だと告白。監察官の前で、実際にその超絶技巧を見せつけフェルメールの贋作を描き上げたそうです。
自ら潔白を証明したメーヘレンは、結局、贋作にフェルメールの署名を偽造した罪のみの軽い禁固刑となりました。さらに当初は「反逆者」のレッテルを貼られましたが、一転「ナチスを騙した画家」として英雄視されるようになりました。