富岳シンポジウム記者説明会が、オンラインで開催された。
まずは、文部科学省 研究振興局参事官(情報担当)付 計算科学技術推進室長の宅間裕子氏から、スーパーコンピュータ「富岳」について方針・施策及び「富岳」成果創出加速プログラムの概要についての説明があった。

「富岳」は、平成26年に「京」の後継機として開発を行ってきた。HPCIの中核をなしており、世界最高水準のスーパーコンピュータを国として戦略的に整備し、科学技術の振興のみならず産業競争力の強化や安全・安心の国づくりなどに貢献するということを目的としている。

昨年4月からは、新型コロナウイルスの感染拡大という不測の事態に対応し、緊急的に本格共用開始前の「富岳」を稼働。いくつかの課題を実施してきた。
そのような社会的必要性を受け、当初の予定を前倒し。令和3年3月9日に本格共用を開始した。

「富岳」は、一般利用のほか産業利用や成果創出加速など高度な計算環境が必要な様々な分野において活用されている。 基礎研究分野では太陽の自転分布に関する研究、産業利用では「富岳」とAIを使った津波の予測に関する研究など、「富岳」を使うことによってこれまでにない成果を上げているという。

次世代育成にも「富岳」を活用しており、実際に「富岳」に触れた若い世代からは「良かった。」という前向きな声が挙がっているそうで、このような機会を増やしていきたいと語る。

今回のシンポジウムでの講演内容や展示の見どころについて、5つの分野より各チェアの先生から説明があった。まずは、「富岳」成果創出加速プログラム 領域総括 早稲田大学 総合研究機構グローバル科学知融合研究所 研究院教授の高橋桂子先生から防災・減災分野の課題概要の紹介だ。

「台風・線状降水帯の新時代の数値予測」についてを佐藤氏から、「地震を知って震災に備えるために富岳を活かす」についてを堀氏から発表される。成果創出加速プログラムにそれぞれ対応しており、課題の概要は佐藤氏が「防災・減災に質する新時代の大アンサンブル気象・大気環境予測」。減災及び防災のために数日程度から季節スケールまで大規模に災害をもたらす事例の気象にも「富岳」を使い、リードタイムや予測の確率を向上させるという研究を行っている。

堀氏は、「大規模数値シミュレーションによる地震発生から地震動・地盤増幅評価までの統合的予測システムの構築とその社会実装」についてだ。実際に「富岳」を使い、地震の震源から地下を伝い地上の構造物まで揺れる一気通貫の地震動計算をしようという試みなのだそう。「富岳」のプログラムとも連動しながら、どのような状況が実現される可能性が高いか示されるという。

大阪大学 蛋白質研究所 教授の岡田眞里子先生からは、ライフについての紹介だ。

「大規模データ解析と人工知能技術によるがんの起源と多様性の解明」という宮野氏の課題では、発がんした後にどのように転移や治療・抵抗性・再発といったものが生まれるのかということを遺伝子変異を中心に解析を進めている。

そして克服するための戦略に関しても研究しており、医者の立場からどのようにしてこの計算が研究に貢献してきたかを小川氏が発表する。「脳結合データ解析と機能構造推定に基づくヒトスケール全脳シミュレーション」は、山崎氏が発表。人の脳のインタラクションをシミュレーションで再現するという研究をしているほか、齧歯類の脳身体のシミュレーションをし、マウスのモデルを実際に動かすというチャレンジングな研究も
行っている。

続いては、「富岳」成果創出加速プログラム 領域総括 東京大学 大学院理学系研究科 教授の常行真司先生から材料の課題についての紹介だ。

「次世代二次電池・燃料電池開発によるET革命に向けた計算・データ材料科学研究」について、館山氏から説明いただく。電池は重要な役割を担うデバイスで、その中でいろいろな材料が組み合わされて使われている。その材料開発に「富岳」を利用しようという試みで、計算機シミュレーションからデータ科学までいろいろな手法を駆使しこの課題に取り組んでいるのだ。

「富岳」成果創出加速プログラム 領域総括 東京理科大学 工学部情報工学科 教授の藤井孝藏先生からは、ものづくりの紹介だ。

「スパコン富岳で航空機のながれを科学する~次世代のシミュレーション科学と航空機開発~」について、河合氏を講演対象として取り上げている。航空機のシミュレーションができるだけではなく、日本の風土ではできない試験をシミュレーションに置き換えることができるのではという可能性を示すものだそう。フライトデータも得られているので、三菱重工株式会社の協力を得ながら進めている課題について発表する。

最後に宇宙・素粒子の紹介を日本学術振興会 世界トップレベル拠点形成推進センター センター長の宇川彰先生が紹介。

「宇宙の構造形成と進化から惑星表層環境変動までの統一的描像の構築」という牧野氏の課題は、現在の宇宙にあるさまざまな天体の姿や宇宙の現象を理解するという内容になっている。「核燃焼プラズマ閉じ込め物理の開拓」を渡邉氏の課題では、プラズマは宇宙の普遍的な現象であり、核融合の関係で非常な重要性を持ってこの研究が行われているという。

基礎科学の分野では素粒子の構成、そしてそれによって起こる現象の分野が「富岳」により大きな成果を出している。太陽がどのようなメカニズムで回転をし、光を放っているのかという研究では、宇宙は大規模構造があると知られているが、そこにおいてニュートリノが果たす役割の研究についても大きな成果
が上がっているという。それらの研究発表を堀田氏が行う。

「富岳」の共用開始によって開拓された多くの研究の進捗状況や成果を、今回のシンポジウムの発表でより詳しく知ることができる貴重な機会となるだろう。

週刊東洋経済 2020年10/24号 (発売日2020年10月20日) 東洋経済新報社
Fujisan.co.jpより
情報提供元: マガジンサミット
記事名:「 スーパーコンピュータ「富岳」の共用開始一周年!研究成果の見どころを各分野のチェアの先生がオンラインで説明!