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東日本大震災から11年、政府主催の追悼式は10年の節目となった昨年2021年で最後となり、今年は行われなかった。震災の被害を受けた東北沿岸の自治体でも、今年からは式典を行わずに献花台の設置のみとする所も多いという。
そんな中、震災の記憶を風化させない為に毎年イベントを行っているスケーターがいる。
阿部直央(38歳)。宮城県塩釜市に実家があり、自身も震災当日は仙台で被災にあう。
地元の友人達が津波の被害を受け、苦しむ姿を見る中で、スケートボードを職業にする自分が出来る事は何かと考えた時、世代をまたいで語り継がれるようなパーティを行いたいという思いから、Don’t Forget Partyの開催を決意した。
【「千年続くように…」スケーター阿部直央の考える東日本大震災“Don’t Forget Party”】(阿部直央2018年インタビュー記事)
東日本大震災の翌年、2012年から始まったDon’t Forget Partyは今回で11回目となる。
※2020年はコロナ禍の為中止。
245スケートパーク
3月13日、会場となったのは山形県村山市にある245スケートパーク。
名前の由来は元々、山形県村上市西郷に20年以上続くプライベートパークがあり、そのパークに通うローカルスケーター達がニシゴウ(245)パークと呼んでいた事が由来だと、オーナーの矢萩翔一さんから伺った。
今年(2022年)1月から本格的にスケートパークとして運用するようになり、雪国のスケーターにとっては貴重な屋内型スケートパークとして、地元のスケーター達に愛されている。
コロナ禍の影響もあり、規模を縮小しての開催となったが、イベントにはインペリアル(Imperial Skateboard)やエレメント(ELEMENT SKATEBOARDS)などの所属ライダー達が集まり、イベントを盛り上げた。
松木愛瑠(あやる)/バックサイドフリップ
青木勇貴斗/ノーリーインワードヒールフリップ
星野玄翔(はると)/バックサイドビッグスピン
(左)阿部直央(右)松木愛瑠
——震災から今年で11年。(スケートボードを通して)どんな思いで地元や被災地を見てきましたか?
自分は宮城県出身なので、ちょくちょく地元にも帰るのですが、その度に友達に会って世間話しをする感じでお互いの状況を確認し合ってきました。
もちろん人によって被災の影響は違うのですが、今でも変わらずに苦しんでいる人がいるのは確かです。
そんな中、せめて自分が出来る事の一つとして、最高のメンツでスケボー出来る機会を届けたいなと思っていました。
みんなのバイブスを上げに行く感じなんですけど、実際には自分達がみんなから気持ちを貰っているって感じです(笑)
今後は未来に向け、自分達がハブとなって今回のようなイベントを主催したりして、そこをきっかけにいろんな人達がリンク出来る、最高の環境を提供していければと考えています。
それが11年経った今、出来る事なのかなと。
——今年からは追悼式自体を行わない東北沿岸部の自治体も出てきているけど(献花台を設ける形式)、イベントを続ける事にはどんな思いがありますか?
まず第一に、今まで毎年イベントを続けてこれたのは、周りの協力無しでは出来なかったという事。
以前はイベントを通して寄付や、被災エリアのスケートパークに少しでもお金を落とせたらと思って開催していたのですが、今は未来に向けた(スケーター等の)人材発掘や、先ほども言ったように、人と人をリンクさせる繋ぎ役として、そして今の状況について生の声を聴き、皆とコミュニケーションを取っていく。この3つを柱に考えています。
このイベントではやっぱりスケーターだから出来る事として、“スケーターって最高でしょ”っていう部分を伝えたいです。この言葉は一言では言い表せない、いろんな意味が込められているので、実際に見に来て一緒に体験して欲しいと思います。
そして毎年、このイベントを応援してくれる人達には、本当に感謝しているし、これからもずっとリンク(繋がって)していきましょうって伝えたいです。
——なぜリンクする事が大切だと考えますか?
自分の体験として、今回のコロナ禍でプライベートも仕事も、いろいろ厳しい場面に直面する事が多かったけど、最後の最後は人と人とのリアルな繋がりが活きました。
自分たちの世代は、コミュニケーション能力が高い人が多かったけど、今のスケーターはSNSなどインターネット上のコミュニケーション能力が高い分、リアルな部分が苦手な面がある。
昔はキックフリップ1つ決めたら「イェーイ!」だったのが、今はSNSの普及でプロの技をすぐに見れて、技術は上手くなったけど「イェーイ!」を見なくなった。
だったらドントフォーゲットパーティで、スケートボードの持つリアルな繋がりの良さを伝えていきたい。
だから“繋がる”“繋げる”“リンクしていく”事が大切だと思っています。
【レッジコンテスト】
レッジコンテスト受賞者
【フラットバンクコンテスト】
フラットバンクコンテスト受賞者
【ステア&ハンドレールコンテスト】
ステア&ハンドレールコンテスト受賞者
ドントフォーゲット特別賞受賞者
ある追悼番組で被災した方が「テレビでは“忘れない”って言うけど…“忘れたい”」と話しているのを見て、震災から11年経った今でも改めて考えさせられた。
当たり前だが、視点が変われば物事の見方も変わる。
被災者ではない自分達の目線で今出来る事は、やはりあの日の出来事や気持ちを忘れない事であり、今の人達に語り継ぐ事。
直央君が言っていた「スケーターって最高でしょ」。
この言葉には人と人とを繋いで、お互いを高め合うというスケートボードの素晴らしさを、スケーターだからこそ出来る事を通して伝えてくという事なのだと考えた。
ドントフォーゲットパーティを通して、これからもスケートボードが持つ素晴らしさが多くの人に伝わればと願う。
写真・文 小嶋勝美 Twitter: @katsumikojima1
スケートボードを趣味としており、ライターとしてスケートボード関連の記事を執筆。
約10年間芸人として活動後、現在は放送作家としても活動中。