【Web3って、結局なんなの? #6 経済圏編】さよなら、プラットフォームの「壁」。ステーブルコインが実現する、誰もが主役のオープンな経済圏とは?
みんなの銀行 経営企画部の市原です(広報を担当しています)。
前回の連載#5(資産運用編)では、不動産やビルを100円から小口で購入できる「RWA(現実資産トークン化)」や、資産を眠らせない「DeFi」の光と影について学びました。
第6回となる今回のテーマは「経済圏編」です(次回、いよいよ最終回の「未来構想編」へと続きます!)。
お金が完全にデジタル化され、プログラム可能になると、私たちのビジネスや生活には一体どんな変化が起きるのでしょうか? 2代目AI先生である、パートナー共創事業部web3開発グループ マネージングディレクターの田口さんと一緒に、少し先の未来を覗いてみましょう!
1章:なぜ今、銀行がWeb3のお金に取り組むのか?
生徒(経営企画部コーポレートコミュニケーショングループ シニアマネージャー市原):AI先生、この連載も今回を含めて残り2回ですね! これまでステーブルコイン(デジタル決済手段)の基本やその可能性について学んできましたが、今回はさらに一歩踏み込んで「経済圏」がテーマだと聞きました。
そもそも、なぜ今、私たち「銀行」がこうしたWeb3の技術に本気で取り組み、新しい経済圏を作ろうとしているんでしょうか?
AI先生(パートナー共創事業部web3開発グループ マネージングディレクター田口):よい着眼点です。その答えは、デジタル社会における「お金の信頼性」にあります。まずはこちらの図1をご覧ください。
図1:Web3が抱えていた3つの構造的課題
AI先生:この図1が示すように、過去、Web3の世界では大きな事件が相次ぎました。巨大プラットフォームによる独自通貨構想は国家の警戒を招き、裏付け資産のない設計や、ずさんな管理体制は、多くのユーザーの資産を失わせることになりました。
生徒:自由で便利な反面、ルールや管理者がいないことで、大きなトラブルに繋がってしまった歴史があるんですね……。
AI先生:その通りです。だからこそ、誰もが安心してWeb3の恩恵を受けられる「信頼できるルール」と、それを裏支えする存在が必要です。
2023年には、日本でもステーブルコインに関する規制を盛り込んだ改正資金決済法が成立・施行されました。
これは単なる「規制強化」ではなく、「ルールが整ったことで、企業や大きな資金が安心して参加できるようになる、健全な市場への転換点」と歓迎されています。私たちみんなの銀行がこの領域に深くコミットするのも、Web3という新しい世界においても、信頼のインフラとしての役割を果たすためなのです。
そして今回、その信頼をさらに強固にする新しい主役としてご紹介するのが、銀行だからこそ発行できるデジタル通貨「トークン化預金」です。
生徒:トークン化預金! ステーブルコインとどう違うのか、すごく気になります!
2章:【徹底比較】ステーブルコインとトークン化預金
生徒:先生、ステーブルコインとトークン化預金、どちらも「日本円と同じ価値で、ブロックチェーン上を動くデジタルなお金」というイメージですが、一体何が違うんでしょうか?
AI先生:実は、この2つは法的根拠となる法律が違っていて、それによって「ユーザー体験(UX : User Experience)」や「ビジネス上の扱い」が決定的に異なります。日本のルールに基づいた比較表を見てみましょう。
表:【比較】ステーブルコイン(電子決済手段)とトークン化預金の違い
AI先生:さらに、この2つのユーザー体験(UX)の違いを図解したのがこちらの図2です。
図2:ステーブルコインとトークン化預金の最も大きな違いは「誰と繋がれるか」
AI先生:この図2が、両者の決定的な違いをよく表しています。
ステーブルコインは、「発行・償還時(入り口と出口)」には厳格なKYC(※)が必要なものの、一度手に入れればKYCをしていない相手や海外のサービスとも自由に繋がれる「オープンで自由な公道」。
一方、トークン化預金は、「送る人」も「受け取る人」も銀行が身元を保証した相手(ホワイトリスト)だけで構成され、KYCをしていない相手とは繋がれない「安心な会員制の私道」のようなものです。
※KYCとは
「Know Your Customer」の略で、金融機関などがサービスを提供する際に、法律に基づき、運転免許証やマイナンバーカードなどの公的な本人確認書類を用いて行う「本人確認手続き」のことを指します。
生徒:なるほど! 自由でグローバルなステーブルコインと、安全でビジネスにも優しいトークン化預金。どちらか一方が勝つのではなく、用途に合わせた「共存と使い分け」が重要なんですね。
AI先生:ステーブルコインは2023年の改正資金決済法で発行に関するルールが決められました(誰が発行できるのか、誰が交換、仲介できるのか、利用者の保護など)。
一方で、税務は財務省や国税庁、監査は監査法人、給与は厚生労働省などの管轄であるため、ステーブルコインをどのように扱うのかは各省庁などの判断に委ねられています。まだこれらの取り扱いが曖昧なため、ステーブルコインのビジネス利用では、こうした制度の整理を含めて検討していく必要があります。
また、ステーブルコインを法人で取り扱う際は管理するweb3ウォレットが本当にその法人の持ち物なのかどうかなどの証明も必要になってきそうです。
トークン化預金は銀行の預金口座に紐づいているのでこの辺りの利用にあたっての証明が不要となり、従来の銀行預金と同じ取り扱いで利用できることが利点でもあります。
3章:「お金にルールを書き込む」魔法、スマートコントラクト
生徒:では、そうしたデジタルなお金が普及すると、私たちのビジネスや生活には、ほかにどんな変化が起きるんでしょうか?
AI先生:最大の変化は、お金にルールをプログラムできる「プログラマビリティ」が解放されることです。ブロックチェーン上で動く自動契約システム「スマートコントラクト」を活用することで、ビジネスから「請求書の発行」「入金確認・消込作業」といった煩雑な事務作業が、すべて自動処理されて消えていきます。
生徒:これを「クリエイターエコノミー」に応用すると、どうなりますか?
AI先生:良い視点ですね。これまでの世界(Web2)では、ファンが投げ銭をしても、一度巨大なプラットフォームがすべての資金を預かり、後日、プラットフォーム手数料を差し引いた金額を銀行振込でクリエイターに支払う、という多段階のプロセスが一般的でした。
しかし、スマートコントラクトを介したWeb3の経済圏なら、ファンが応援の気持ちを支払ったその瞬間に、例えば「クリエイターに7割、共同編集者に2割、プラットフォームに1割」といったルールに沿って、資金が関係者全員のウォレットへ自動的かつ即時に直接分配されます。
生徒:これまでは巨大なショッピングモール(プラットフォーム)に出店して、売上を一度モールに預けてから精算してもらっていたのが、Web3ではファンとクリエイターが「街角のフリーマーケット」のように、その場で直接、温かい応援の熱量を交換できる、ということですね!
AI先生:その通りです。そして、この図3こそが、私たちみんなの銀行が目指す「新しい経済圏」の全体像です。
図3:みんなの銀行が目指す、Web2とWeb3が滑らかに繋がる経済圏の全体像
AI先生:銀行の預金口座(Web2)とWeb3ウォレットが裏側で滑らかに繋がり、様々な価値が摩擦なく循環する。こうした自由な経済圏が健全に発展するための土台こそが、2023年に施行された改正資金決済法なのです。
4章:Web3が可能にする「新しい地域通貨」の姿
生徒:先生、この「即時・自動」という仕組みは、私たちの身近な「地域活性化」や「地方創生」にも応用できそうですね。
AI先生:まさにその通りです。従来の「地域通貨(観光ポイントなど)」を思い浮かべてみてください。お得ではあるものの、実際に使ってみると色々と不便な「摩擦」がありませんでしたか?
生徒:ありました! 以前、島旅で使えるデジタル地域通貨を使ったことがあるんです。おトクに旅を楽しめる素晴らしい制度なのですが、リアルな運用面で少しドキドキした経験があります。
例えば、お土産屋さんや飲食店で使うときに「1,000円単位」でしか使えないためお釣りが出ず、端数の計算に頭を悩ませたり。何より、島内は場所によって電波が弱かったり圏外だったりするので、いざ使おうとした時にSMS認証や電話認証が通らなくて焦ってしまって……。実は、Wi-Fiに繋がっていても電話回線が圏外だと、認証システム自体が動かないんですよね。
AI先生:非常にリアルで、示唆に富んだ体験談です(笑)。実は、それら従来の地域通貨が抱えていた「電波の問題」「お釣りの問題」「店舗側の精算負担」といった物理的な不便さは、ブロックチェーンやWeb3の技術によって劇的に解決されます。
Web3地域通貨が解決する、従来の「3つのストレス」
●【利用者】「1円単位」のシームレス決済とお釣り問題の解消:
裏側にステーブルコインやトークン化預金を活用することで、1円単位での細かな決済が可能になり、利用者側の「お釣りが出ない」というストレスは完全に解消されます。
さらに、この仕組みは「お金を出す側(自治体や運営組織)」にも大きなメリットをもたらします。例えば、あらかじめプールしていた事業予算のうち、利用期限が過ぎて使われなかった資金をプログラムによって自動かつ即座に元の口座へ回収し、すぐに他の用途へ再配分するような、デジタル通貨ならではの高度な資金効率化がすでに国内の先進的な実証例でも実現しつつあります。
●【利用者・事業者】事前KYCによる「現地での認証ストレス」のゼロ化:
電波の弱い現地に到着してから、わざわざ身分証明書をアップロードして審査を待つ必要はありません。みんなの銀行が提供するような「本人確認(KYC)済みウォレット」をあらかじめスマホに紐づけておけば、現地ではログインするだけで安全に地域通貨と接続できます。ネットが繋がりにくい場所でも、裏側で銀行が「身元保証」を完了しているため、スマートに決済が完了します。
●【事業者】売上の「即時入金」とキャッシュフロー改善:
従来の多くの地域通貨では、加盟店が売上金を受け取るまでに、利用期間終了後の集計を待つ必要がありました。しかし、トークン化預金などを活用した地域通貨では、顧客が決済した瞬間に「1円単位」で加盟店の口座へ即時に直接入金されます。回収や清算の事務コストがゼロになり、事業者のキャッシュフローは劇的に改善します。
生徒:使う観光客も、受け取るお店や宿の人も、ストレスフリーでみんなハッピーになれますね!
AI先生:さらに面白いのは、ここに「社会貢献」や「エコ行動」をスマートコントラクトで結びつけられる点です。
例えば、エコ通勤(車を使わず公共交通機関を利用する行動)や、市が認定したボランティア活動に参加すると、お礼として自動的に地域通貨がウォレットに付与される仕組みを作れます。
生徒:「良い行動」や「共感」が、血液のように滑らかに循環する、地域に根ざした自律的な経済圏ですね!
おわりに:価値の尺度が「残高」から「行動・共感」へ
生徒:今日お話を伺って、Web3の経済圏がもたらすお金の未来が、ハッキリと見えてきました。これまでは、いかに銀行の「残高」という静止した数字を増やすか、というゲームのようにお金を捉えていました。でも、これからは違いますね。
お金は単なる「決済の道具」ではなく、自分の共感や、エコ・健康などの「良い行動(貢献)」が、目に見えるカタチ(信頼)になって、社会と温かく繋がっていくための血液なのだと納得しました!
AI先生:よいまとめですね。複雑な技術や専門用語は、私たち銀行が「黒子」として裏側に隠しておけばいい。利用者はただ、いつものように便利に、楽しく暮らしているだけで、裏側で「信頼」と「温かい価値」が滑らかに巡っていく。
これこそが、Web3決済とスマートコントラクトが創り出す、新しい経済のスタンダードです。
生徒:図3の全体像を見て、Web2とWeb3が融合した、新しくて滑らかな経済圏の姿はとてもよく分かりました! ……でもAI先生。ここまでお話を聞いて、どうしても最後の1ピースが繋がらないんです。
Web3の本質って「非中央集権(仲介者がいないこと)」ですよね。だとしたら、究極的には、中央集権の代表である「銀行」は不要になる技術のはず。
それなのに、なぜ私たち「みんなの銀行」というデジタルバンクは、自らこの技術に飛び込んで、これほど熱心に実証実験を重ね、本気で未来を切り拓こうとしているのでしょうか?
AI先生:ふふふ、良い問いですね。その「矛盾」に気づくことこそが、実はこの連載で最も重要なポイントなのです。
なぜ、銀行である私たちがWeb3を推進するのか。その答えこそが、まさに私たちの存在意義であり、私たちがブロックチェーン技術の先に描く、本当の未来の姿に直結しています。
さて、次回はいよいよ本連載の最終回となる「#7 未来構想編」をお届けします。ステーブルコインやトークン化預金が当たり前になったその先、私たちの社会や生活はどう変わっていくのか。そしてそこに、私たちみんなの銀行はどう関わっていくのか。
私たちが描く、壮大な未来のビジョンを皆さんにお届けします。
―― 次回、ついに最終回「#7 未来構想編」へ続く!
※この記事は、みんなの銀行公式noteからの転載です。
最新情報やサービス詳細は、みんなの銀行公式サイトをご確認ください。
公式サイト:https://www.minna-no-ginko.com/
(執筆者: みんなの銀行)