SFCで『クロノ・トリガー』(以下、“クロトリ”)を遊んだ頃の、あの独特の高揚感をまた味わいたい――それが、筆者が9月17日に発売した『アナザーエデン ビギンズ』をプレイし始めた一番の理由だ。


加藤正人氏がシナリオを手掛け、光田康典氏がオープニングテーマ等を担当していると知り、名前だけは以前から意識していたモバイルゲーム『アナザーエデン』(以下、“アナデン”)。


2017年のサービス開始時から「いつか触れてみよう」と思いつつも、筆者が本格的にモバイルゲームを遊び始めたのが2018年ごろ。当時はリリースしたばかりの『ドラガリアロスト』や『ロマンシング サガ リ・ユニバース』にハマり、“アナデン”に関しては完全に手付かずのまま年月を経てしまった。


今回、コンシューマー向けに『アナザーエデン ビギンズ』が発売されたことで、ようやくその世界に浸れる機会が得られた。スマホ版“ミリしら”状態の筆者が、買い切りのRPGとして遊んだ印象をレビューとして記したい。


『クロノ・トリガー』との共通点と、決定的な違い


加藤氏も関わっていたSFCの名作“クロトリ”との共通点は、想像以上に多かった。


最初はちょっとしたタイムスリップだったのが、やがて世界を救う壮大な物語につながっていくところ。現代では魔獣たちとの敵対や共存を描き、未来では機械(本作では「合成人間」と呼ばれる存在)の反乱を描いているところも、かなり近い印象がある。



▲「現代」では人間と魔獣が敵対している



▲未来では「合成人間」の兵士、「合成兵士」などが人類の脅威として登場


未来でロボット(本作では「アンドロイド」と呼ばれる)が仲間になったり、過去の時代でカエル男が仲間になる点も似ている。しかもそのカエルには「サイラス」という、“クロトリ”に登場した重要人物と同じ名前が付けられている。



▲仲間になるアンドロイドのリィカ。だいぶファンシーな見た目だが、喋り方はロボっぽい



▲カエル男のサイラス。剣ではなく刀の使い手で、語尾も「ござる」と和風な感じだ


しかしながら、“クロトリ”の焼き直しとは感じさせない。そもそもアートワークも違い、フィールドもスマホ版の名残を感じさせる横スクロールに近く、視点が異なるだけでも「まったく別のゲーム」という印象を抱いた。



▲スマホ版を元にしたフィールドは、やや奥行きが追加されていたあみだくじのような見た目


そして決定的に違うところもあった。“アナデン”、少なくとも『アナザーエデン ビギンズ』では、「古代」「現代」「未来」の3つの時代しか行き来できない。それはスマホRPG向けに簡略化されてしまったと言うより、「タイムトラベルもの」のゲームとしてより洗練されているとポジティブにも感じ取れた部分だ。



▲行き来できるのは「古代」「現代」「未来」の3つ。どの時代にも属さない「???」は“クロトリ”でいう「時の最果て」的な位置づけだ


また、主人公の描き方が真逆だった。“クロトリ”の主人公は喋らなかったが、“アナデン”の主人公・アルドはよく喋る。人気声優の内山昂輝氏を起用し、モバイルゲーム全盛期のキャラクターとしてそうなったのは理解できる。


ただ、主人公自身が感情や決意を表明しながら、攫(さら)われた妹はそっちのけでどんどんいろんな事件に積極的に巻き込まれていく様は、違和感を覚えた。



▲序盤ではとても妹思いな主人公・アルド



▲妹は魔獣に攫われてしまうが……



▲中盤では、攫った側の魔獣を信用して(!?)冒険を優先するようなセリフも……


壮大なストーリーと、プレイヤーと主人公にとっての結末の意味


それでもエンディングまで見終えたときは、めちゃくちゃ壮大なストーリーに、シンプルに感動してしまった。先に述べたようなツッコミどころにも目をつぶろうと思えるほどに。


わちゃわちゃとしていた部分や、物語の途中で登場人物が語るタイムスリップに関する設定に何やら矛盾が生じているように見えた途中の説明も、このラストを見せるためのものだったのかと腑に落ちた。衝撃的な結末と伏線回収もすさまじく、筆者としては「終わりよければ全てよし」と感じさせられるものがあった。


ただ、その感動はあくまでプレイヤー側の話だ。物語の中の主人公にとっては少し異なるもので、「これでよかったのか」という問いをラストに残す。だからこそ、2周目からが本番になる。



▲1周目の終わりに表示されるメッセージ。「殺された未来を 救けに行こう」はオープニングでも出てくるフレーズだが、エンディングを見た後ではまったく印象が違う


ニューゲーム+は、序盤から厳しい


本作には“クロトリ”の「強くてニューゲーム」に近い2周目として、「ニューゲーム+」というモードに挑める。キャラの持ち物やレベル、ステータスなどを引継ぎ、いきなり序盤からラスボスにも挑めるようになる。しかし1周目よりはるかに強くなっているため、ただ挑めばいいというわけではない。改めてのレベリングや、パーティ構成の見直しなどを考えさせられた。



▲1周目クリア後はタイトル画面にも変化が!


しかも2周目には追加のシナリオや複数のエンディングが用意されていることで、1周目で感じた壮大さの先に、さらに別の答えがあるのだろうという期待を持たせる作りになっているのもワクワクさせられるところだ。



▲2周目は序盤からラスボスに挑める。かなり手ごわい


モバイルゲームっぽさと、パーティ編成の自由度


本作はコンシューマー向けとして完全に作り直されているが、仲間キャラの多様性は健在だ。キャラクターごとに武器種や得意な属性が設定されており、自然と「もっと強い組み合わせはないか」「あのキャラも入れてみたい」と収集欲を刺激される。


ガチャのない買い切り作品ではあるものの、コンシューマー版で新たに追加された出会いのサブクエストにより、キャラクターを集めて編成を考える楽しみを味わえる。



▲ちょっとセクシーな大人のお姉さんも仲間にできる!



▲キャラによっては誘い方がかなり軽い。「とんでもない旅だけど マリエルも来るか?」じゃあないんだよ……


パーティ編成の自由度も高い。筆者も当初はアルド、エイミ、リィカ、サイラスという、メインシナリオに深く関わっているキャラクターで編成していた。しかし途中で女騎士・アナベルの高いタンク性能に気づき、メインキャラとして使うようになると安定感がまるで違った。



▲「ホーリーセーバー」のアナベル。高い防御力を誇りつつ「タウント」で敵を挑発し、自分に攻撃を集中させることができる。パーティの「盾」となる心強い存在だ


さらにサブパーティを登録して戦闘中に切り替えるシステムもあり、4人パーティ×2の最大8人で挑むことができる。



▲1パーティ4人だが、8人まで編成することに意味がある


筆者は強いボスと戦う際、まずアナベルを主軸としたメンバーで敵のヒットポイントを3/4ほど削り、残りの1/4は高い攻撃力を誇るシュゼットを主軸にしたサブパーティに切り替えていた。切り替えた直後、連撃が可能な「アナザーフォース」で一気に攻め落とす戦法は気持ちがよかった。



▲メインのパーティで敵のHPをだいぶ削れた



▲ここで「チェンジ」を発動!控えの高火力パーティにバトンタッチ!



▲連撃が可能な「アナザーフォース」を使って一気に攻める!


キャラクターと追加コンテンツ


なおキャラクターの描き方について、メインで深く描かれる面々と、ゲスト扱いに近い面々の差ははっきりしている。“クロトリ”では各イベントごとに、どのキャラをパーティに加えているかで違う台詞が楽しめるという細かさもあった。


“アナデン”ではアルド、エイミ、リィカ、サイラスなどメインのキャラしかシナリオには関わらず、筆者の推しであるアナベルやシュゼットは、メインシナリオではほぼ「いないもの」として扱われており、世知辛かった。



▲パーティの編成をどんなに変えても、メインシナリオで会話するのは大体この4キャラ


一方で、キャラクタークエストや親密度を高める要素があり、ゲストキャラクターにも一定の掘り下げがある。中には単に「目的の場所を往復させられるだけ」と作業感があるものもあったが、クエストをクリアすることでキャラ専用のバッジも手に入るので、時間がかかっても進める意義をしっかり感じられた。



▲キャラの普段の仕事ぶりを垣間見られるクエストや……



▲指定されたネコを探して目的地を往復するクエストも



▲クリアすると報酬はもらえるので、ちゃんと進める意義がある


さらに本作には、追加コンテンツとして追加のキャラクターパックも販売中だ。2キャラずつのセットで1000円、10キャラ分セットで4500円だ。1キャラあたり500円程度と考えると、スマホ版のガチャより明らかに良心的だ。



▲「ゆっくりアルドです」「ゆっくりサイラスだぜ」……なんてセリフが聞こえてきそうなシュールなシーンを描くキャラストーリーもある


総括――『クロノ・トリガー』の先へ


『アナザーエデン ビギンズ』は、タイムトラベルから始まる壮大な物語の骨格は“クロトリ”とよく似ている一方、主人公が目の前の冒険に積極的すぎて妹を後回しにしているように見えたり、サブのキャラクターがメインシナリオに関われなかったりするなど、気になる点も多かった。


しかしながら壮大なラストではしっかり心を動かされたし、2周目の追加シナリオや追加キャラなど、ワクワク感も大きい。



▲2周目から新たな仲間となるラミュ。スマホ版でも『ビギンズ』購入時にもらえるコードを入力することでキャラを獲得できる


パーティ編成の自由度やキャラクター収集の楽しさは、モバイルゲーム版の名残を感じさせる部分でもあると同時に、ガチャ運に頼らず「好きなキャラを集めて強い編成を考える」楽しさが味わえるのは買い切りソフトゆえのメリットだ。


そして「ビギンズ」という名前の通り、ここから先の世界を知りたくなった。すでに追加キャラクターが販売されていることに加え、本作に収録されなかった第2部・第3部の物語を描くスマホ版にも手を出したくなる。少なくとも、筆者はそう思った。


“クロトリ”の世界に再び浸りたいと思っていた人にとって、本作はその延長線上にある。もちろん主人公の性格や時代の制約、モバイルゲーム的な要素を含めて「同じもの」ではないが、それでも時空を超える物語の入り口として、十分に勧められる一作だ。



▲“クロトリ”の魔王城を彷彿とさせる、“アナデン”の魔獣城。アートワークは違えど、“クロトリ”ファンもニヤリとしてしまうようなセルフオマージュもたっぷりだ


(文/平原学)


(執筆者: ガジェ通ゲーム班)


情報提供元: ガジェット通信
記事名:「 『アナザーエデン ビギンズ』レビュー:ラストの先に「始まり」がある壮大な物語 」