映画『見えない娘 THE INVISIBLES』毎熊克哉インタビュー「透明人間という設定だけれど、現実社会や家族にも置き換えて考えられる作品に」
「もしも、生まれた娘が透明人間だったら?」 透明人間というSF的題材を通して普遍的な家族の葛藤を描く、映画『見えない娘 THE INVISIBLES』が公開中です。
家族を想う心配性の父親で本作の主人公・星野学役を、ミステリアスな役から強烈なインパクトを残す悪役まで、幅広い役柄をこなす実力派俳優・毎熊克哉さんが好演。いつも眉間にシワを寄せ、透明人間の三女を守るシングルファザーの娘を想うその姿は、改めて親子の関係について考えさせられます。毎熊さんにお話を聞きました。
●今回演じられた星野学という人物について、改めて教えてください。
星野学という男は、3人姉妹を育てるシングルファザーです。数年前に妻を病気で亡くしていて、最後に生まれた三女が、なんと透明人間なんです。
ただでさえ、男一人で女の子3人を育てるのは大変なのに、三女は透明人間。この状況の中で、ものすごく心配性な父親なんです。言い方を変えると、ものすごく愛情深いわけです。
「なんとか、この見えない3人目の子の存在が人にバレないように!」と、一生懸命、娘のためにいろんなものを隠しながら生きている。本当に細かいところまで気にする、心配性の父親ですね。
●透明人間という非現実的な設定でありながら、学の父親としての人間味がすごく伝わってきました。
実は僕の中では、裏テーマとして考えていたことがありました。映画としては透明人間という、絶対にありえないだろうという設定だからこそ面白いシーンがありますよね。勝手に物が動いたように見えたり、いると思っていたらいつの間にかいなくなっていたりして、「やめて、やめて!」となったり、そういう面白さがあります。
でも自分の中では、仮にこの透明人間という存在がものすごく現実的なマイノリティだったら、この父親はどうするんだろう、ということを考えていました。
●と言いますと???
たとえば、透明人間になる病気があるとして、それが世の中によくある別の病気に置き換えて考えてみるわけです。そう考えると、親としてはものすごく心配じゃないですか。
それは全然笑い事じゃなくて、本当にリアルな現実として、そういうこともあるだろうと思うんです。
だから、映画として透明人間は面白いんだけれども、親としてはそれくらい三人目の子どものことを心配しているんだと。そいうところは、映画の中でも感じてもらえるんじゃないかなと思っていました。
あくまで透明人間という設定だけに留まらず、現実ならどうなるか、現実の家族や社会にも置き換えて考えられる作品になっていると思いました。
●子育ての難しさも関わってきますよね。難しさというか大変さというか、常に平等に接しているのか、そういうことも現実にはありそうで。
そうですね。この映画でも、父親は三女が透明であることにものすごく気を使っているじゃないですか。でも、実は一番上の子には、一番上の子なりの悩みがあって、お父さんに相談する時間がなかったりする。そんなこともあるのかなと、完成した映画を観て僕はそこも感じましたね。
真ん中の子には真ん中の子で、また違う事情があるかもしれない。そう考えると、人間関係のバランスって難しいですよ。
●この作品が観客のみなさんに伝えたいことについて、これまでのお話をはじめ、毎熊さん自身はどのように受け止めましたか?
一番表に見えてくるところとしては、おそらく竹林亮監督と脚本を書かれた夏生さえりさんのメッセージにもあるように、「親にとって子を想う時に、子どものことって分からないことが多くて心配だけど、分からなくてもいいんじゃないか」ということなのかなと思います。まず、パッと今思いつくことは、そういうニュアンスというか、香りでしたね。
その次に、やっぱり「子どもに限らず、見えないものっていっぱいあるけど、それを信じる力」というものを感じました。昔って、もっとそういうものがあった気がするんですよね。たとえば、街を歩いていて、「風の香りが変わったな」と感じたり。そういう、勘で感じるものというか。
でも今は、いろんなことが分かりすぎている。情報もたくさんあって、何でもすぐに調べられる。逆に、それによって分からなくなってきていることもあるんじゃないかなと思うんです。そう考えたときに、「見えないものを、どう感じますか」ということを、この映画を観てすごく感じました。
もしこれが30年前の映画だったら、また全然違うニュアンスになっていたと思うんです。けど、今は何でも見えるし、何でもすぐ手に入る。情報だってすぐに手に入る。でも、本当に大事な情報って、それなのかなって。見えないところで感じる力というものが、本当はすごく大事なんじゃないのか――。この映画は、そんなことを言っているような気がします。
●今日はありがとうございました!
■公式サイト:http://mienaimusume.com/ [リンク]
■ストーリー
とある島で、ひそやかに暮らしている父と三姉妹。
この家族には、秘密がある。
それは、末娘の“ひかり”は、生まれつき透明人間であること。
ある日、疎遠になっていた祖母が入院したという連絡が入り、心配性の父と、娘たちは東京への旅に出ることになる。
(C) THE INVISIBLES Production Committee
(執筆者: ときたたかし)