8月21日、品川プリンスホテルにて、静岡市とAホールディングスの「亜臨界水総合システム」社会実装のための包括提携式・調印式が開催された。「永遠の化学物質」とも呼ばれるPFASによる汚染除去を目的としています。

PFASとは

PFASとは有機フッ素化合物。炭素とフッ素の結合を持つ有機化合物で、自然に分解されにくい性質があるため、「永遠の化学物質」と呼ばれている。

PFASの中でもメッキ処理剤や、泡消火薬剤などに含まれるPFOS(ペルフルオロオクタンスルホン酸)と、撥水剤や界面活性剤などに含まれるPFOA(ペルフルオロオクタン酸)は発がん性を有する可能性があるとみられており、かつ、生物蓄積性も高いとされているため、現在は国内での使用や製造が禁止されている。

静岡市PFAS問題とその対応

なぜ、今回、静岡市がこの問題に取り組んでいるのか。2023年秋、三井・ケマーズフロロプロダクツ株式会社清水工場にてPFASを使用していた事実が判明したことからはじまる。現在は使用も保管もしていないが、静岡市がPFAS濃度を調査した結果、工場周辺の水路から基準値を超える高濃度が検出された。

高濃度の原因は工場であるが、最終的に公共用水域に高濃度水を排出している静岡市が、主体的に問題に取り組むことになった。なお、清水港の海水のPFAS濃度は広大な海の水量によって希釈されており問題はないことが確認されている。

静岡市はこれまで活性炭による浄化装置の設置や工場内の高濃度地下水の雨水排水管への流入防止などの対策を実施。一定の効果を上げたものの、日量最大一万トンの量を浄化させるためには巨大な設備が必要とされる。さらにPFASを吸着した活性炭の処分も課題となってしまい、抜本的な解決には至っていない状況だった。

Aホールディングスの問題解決のための着眼と実施したPFAS実証実験

Aホールディングスが、2024年5月にラボ検証試験をした結果、基準値まで除去できる可能性を見出し、7月22日に最初の検体を採取して検査を実施した。その結果、大幅な汚染除去に成功。

今回の検証実験で実施された、加圧浮上分離装置を使ったPFAS処理は、超微細気泡を製造して極小な物質を分離する。つまりは、泡を使った装置であり、これならば活性炭装置のように処理すべき活性炭のような物質を作り出すことはない。

PFAS処理には、河川や地下水などの大量の水を処理する必要があり、かつ、問題解決には時間がかかるためにランニングコストを抑える必要がある。加圧浮上分離装置での処理は、活性炭装置よりもコストがかからないため、この課題をクリアできるのだ。

実際、第一フェーズでは加圧浮上分離装置とさまざまな基軸薬剤を用いた処理を試し、それによって有効な基軸薬剤を発見した。その基軸薬剤を確定させた加圧浮上分離装置を使った実験による平均除去率は82.1%である。

分離したPFASは亜臨界水総合システムで無害化できる可能性がある。それが安定して成功すれば、PFAS問題を解決に導ける。なお、そのために、さらなる研究と実証実験をすすめる必要がある。

Aホールディングス・粟井社長の意気込み

株式会社Aホールディングス 代表取締役社長 粟井英朗氏:
「過去、日本が新幹線と原子力で海外へ出た。今、残念ながらIT、EV、水素からすべてアメリカにもインドにも太刀打ちできない可能性を感じている。人類を、地球を救う。その為に、まず日本を救う。その技術を世界に通用する経済価値とできるのではないか。

私は65歳でゼロから会社を作って今80歳。創業のときから、国に対して、県に対して、市町村に対して、すべて社会問題を解決にするために定めていきました。そうした貢献が、私の人生の生き様でございます。

今日、感謝と感動と決意だけを述べさせていただいて、挨拶にかえさせていただきます」

今後の静岡市とAホールディングスの動きに注目したい。

情報提供元: ガジェット通信
記事名:「 静岡市とAホールディングスが「亜臨界水総合システム」社会実装に向け包括提携、「永遠の化学物質」を除去するための計画が動き出す