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ヒューマントラストシネマ渋谷の特集上映「未体験ゾーンの映画たち2024」にて、映画『COME TRUE/カム・トゥルー 戦慄の催眠実験』が2月9日より上映。本作を手掛けたアンソニー・スコット・バーンズ監督のオフィシャルインタビュー、日本の観客へのメッセージ動画が到着した。
本作は、悪夢をめぐるサイコホラー。悪夢と不眠症に悩まされる高校生のサラが、とある研究の臨床試験に参加することになるが、やがて被験者たちの身に次々と奇妙な現象が起こるようになる。
バーンズ監督はインタビューで、ショックな出来事が原因で体験した“金縛り”から本作の着想を得たこと、ミュージシャンとして担当した本作の音楽、日本の作品からの影響などについて語っている。特にJホラーから多く影響を受けているといい、黒沢清監督の作品を生涯のベストに挙げている。
また、メッセージ動画では、本作を劇場で観る観客に向けて「本当に光栄に思います」とお礼のコメント。「今度の新作も劇場で観てもらえるよう取り組んでいます」と付け加えている。メッセージのあとには予告編も見ることができるので、作品の雰囲気を知りたい方もどうぞ。
──『COME TRUE/カム・トゥルー 戦慄の催眠実験』においてバーンズ監督は脚本も手掛けられています。物語の着想元についてお聞かせください。
私自身幼少の頃、母親が亡くなっており、そのショックから睡眠麻痺(金縛り)を患った経験がありました。その時の感覚は今でも強烈に記憶に残っています。 あの時見た夢の中では、何が起こっていたのかを理解したいと常に思っていました。そして、同じように金縛りを経験した人たちがもし、私と同じ光景を目にしていたとしたら、それはどれほど恐ろしいだろうかと想像したんです。 これは心理学的な興味関心にも通じており、同様に金縛りを経験した人々の根底に共通する恐怖が存在すると考えました。またこのアイデアはホラー映画を作る上での良い実験になると思い、物語を書き始めました。
──バーンズ監督は本作にて、ミュージシャン名義「パイロットプリースト」として、オースティン・ギャリックとブローウィン・グリフィンによるシンセ・ポップデュオ、エレクトリック・ユースとともに音楽も担当されています。
彼らとの出会いは数年前のお互いトロント出身。バンクーバーまで遡ります。私も彼らも映画作品に楽曲提供をした経験があるので、お互いの曲について話し、打ち解けました。 我々の仕事での出会いは前作の『アワーハウス』(2018)でした。同作で私はスタジオの決定に納得できず、監督を途中で降りました。作品にはクレジットされているものの、完成したものは私が目指したものではありません。その作品に彼らエレクトリック・ユースが素晴らしい楽曲を提供しており、いくつかの曲をリミックスして『COME TRUE/カム・トゥルー 戦慄の催眠実験』のイメージ曲を作りました。それを元に彼らはユーロスタイルのニュアンスを、私はホラーらしいニュアンスを曲内に取り入れてアルバムを仕上げました。彼らとの楽曲制作は本作における最高のコラボレーションの一つでした。
──タイトルロゴをはじめとした青色、ブラウン管モニターから発せられるブルーライトにも共通する、ブルー・トーンの色彩設計が印象的でした。
意識していたわけではないのですが、自分が親しんできた映画に近づけようという思いから自然とブルートーンの画面を作るようになっていきました。人に指摘されるまで青すぎることに気付かなかったほどです。 これは『ターミネーター』『アビス』『エイリアン2』などジェームズ・キャメロン監督作品の色に影響を受けていると自覚しています。彼の作品が出すブルートーンの色合いは、映画の世界が私が今いる“ここ”とは異なる、特別な別世界であると強く認識させる役割を果たしています。
──映像制作を手がける中で日本の作品の影響を受けたことはありますか。
『COME TRUE/カム・トゥルー 戦慄の催眠実験』は日本のホラーファンにこそ届けたい作品です。私自身Jホラーの影響を多く受けており、特に黒沢清監督の『CURE』と『回路』が生涯ベスト。 日本の映画作品とはじめて出会ったのは16歳の時に郊外のショッピングモールの中にあった、寂れたビデオ屋で見つけた塚本晋也監督作品『鉄男』でした。レーザーディスクで観て、日常生活の中に暗いスチームパンク世界が徐々に広がっていくという、低予算ながら実験的な表現も多く、映画の世界に強く引きつけられる衝撃と後に自身が映像制作をする上で、創造力においてとても影響を受けた作品です。
『COME TRUE/カム・トゥルー 戦慄の催眠実験』
2024年2月9日(金)よりヒューマントラストシネマ渋谷にて上映