殺人鬼“ブギーマン”=マイケル・マイヤーズと生存者ローリー・ストロード。1978年のホラー映画『ハロウィン』から始まった因縁の対決がついに決着! 一作目の40年後を描く続編3部作、『ハロウィン』(18)、『ハロウィン KILLS』に続く最終章『ハロウィン THE END』が現在公開中だ。

傑作ホラーを続々と世に送り出しているブラムハウス・プロダクションズによる製作と、シリーズの生みの親であるジョン・カーペンターが音楽・製作総指揮で携わるという強力布陣で作られてきたこの3部作。そのすべてで監督・共同脚本を手掛けたのは、監督としての手腕を買われて抜擢されたデヴィッド・ゴードン・グリーン。現在は『エクソシスト』の続編に取り組んでいるという。

マイケルとローリーの最終対決シーンはどのように撮影されたのか? 監督が大事にしたかった“ブギーマン”像とは? オリジナル版『ハロウィン』をリスペクトし、愛ある3部作を作り上げたグリーン監督にお話を伺った。

デヴィッド・ゴードン・グリーン監督 インタビュー

ローリー役ジェイミー・リー・カーティスとデヴィッド・ゴードン・グリーン監督

――観客ではなく続編のクリエイターとして78年版の『ハロウィン』を観直して、どういうインスピレーションを得たのでしょうか?

デヴィッド・ゴードン・グリーン監督:以前から思っていたことでもあるんだけど、『ハロウィン』一作目の大好きなポイントというのが、マイケルのモチベーションがまったく分からないことなんです。どんな子供時代を過ごしたのかも分からない、完全に不明な“邪悪なもののエッセンス”であるということ。以降のシリーズ作品ではその要素が薄れてしまっていた。それでシリーズに興味を失ってしまったところがあったので、原点回帰をしたかった。“ブギーマン”である、それ以上のことは分からない。そういう存在として描こうと思いました。

――ほとんど不死身と言えるマイケル・マイヤーズには超常的なニュアンスを感じますが、今回のシリーズでは彼の周囲で起こり得ることをかなり現実的に分析して描いていますね。

グリーン監督:邪悪のエッセンスを掘り下げていく感じですね。僕の中ではマイケルを超自然的なものとは思っていないんですよ。ただとてつもない存在であり、とてつもない回復力を持っている、そしてフォルムとしては人間なのだという感じです。ただ、彼という存在がハドンフィールドの街やローリーや人々にどんな影響を及ぼすのかというのを掘り下げたかった。ある意味実存主義的なホラーですよね。自分たちの脳裏で感じる恐怖、あるいは事件が終わったあとに起こるトラウマであったり。邪悪なエッセンスが人々にもたらす影響を描きたかったのです。

――そういった視点は過去にヒューマンドラマを撮っていた経験が活かされているのですか?

グリーン監督:本当にそうだと思います。『ハロウィン』とか(現在製作中の)『エクソシスト』とか、こういったホラー映画の看板は映画を観てもらうためのきっかけでもあるんですよね。作品を観てもらえれば、自分の子供時代のことや人生で経験したことに当てはめて意義深いパーソナルなものを感じてもらえると思うんです。そういった意味ではヒューマンなストーリーと言えますね。

――今作にはとてもアイコニックなローリーとマイケルの最終対決のシーンがあります。撮影はどのような感じだったのですか?

グリーン監督:すごく高揚していました。あのシーンは4日間かけて撮影したんですが、自分としてもエモーショナルだったし、同時にテクニカルでもあって、撮っていてめちゃくちゃ楽しいシーンでもありました。奇妙なことに、ロマンチックな感じに近い空気もあったんです。キッチンのあの空間で――これまでお互いに危害を加えあってきた二人による、戦いでもあり、ダンスでもあり、セックスでもあるような。そういうシーンになっていたと思うんです。実はこのシークエンスに関しては、脚本をみんなにシェアしていなかったんですよ。ときにはプロットを知られないようにするためにそうすることもあるけれど、今回僕がそうしたのは“結果がどうなるか”というのをその場で見ながら決めていきたかったから。つまり、ローリーとマイケルのどちらが死ぬかは撮ってみるまで分からなかったんです。

――キャストも知らなかったのですか?

グリーン監督:早い段階での脚本を渡しておいて、「他の方向にいくかもしれないからね」と伝えてある状態でした。実は、(対決の後の)最後のシーンは2ヶ月あとに撮っているんです。彼らの戦いがどうなるのか分からなかったから、あとで決めようと思ったんですよ。

――キャラクターがストーリーを動かしていったという感じなんでしょうか。

グリーン監督:その通りです。もちろん戦いの振り付けはしてあるので、何度も何度もリハーサルはしていたんだけれど。フィルムメーカーとして、その場のインスピレーションにオープンでいたかったのです。こういう作り方をしたのはキャリアにおいても初めてでしたね。

――ホラー映画のシリーズは上手くいっているもの・そうでもないものなど様々な前例があります。そういった前例をふまえて、グリーン監督は今回どういう道を進もうと思ったのですか?

グリーン監督:そうなんですよね。今回僕はこのシリーズを自分にとってどういう風にパーソナルなものにできるかということを考えていました。(ジョン・)カーペンターにもジェイミー・リー(・カーティス)にも言われたことなんですが、「自分のインスピレーションがそれぞれの作品に反映されていなければいけないよ」と。というのは、ファンを全員満足させることというのはできないわけです。だからこそ作り手として、推進力になるものを持っていないといけない。今回僕はホラーというジャンルの中で3作品それぞれが“立っている”作品にしようと思いました。1作目は伝統的なホラー、2作目はホラーにおけるアクションとエクストリームなバイオレンス、そして3作目はドラマと親密性とラブストーリー。こういった要素を“立てる”作品にしようと思ったのです。

――ローリーとフランクの会話の中で、トラウマを乗り越えたあとの人生の象徴的なものとして“桜”が出てきますね。このアイデアはどこから来たのですか?

グリーン監督:実は以前から魅力を感じていたんです。象徴的でもあるし美しいですよね。ローリーとフランクの物語の詩的な部分はどういう風に表現するかと考えたときに、桜というのは意義深いんじゃないかと自然に浮かんできた。それで選んだんです。実は来週プライベートで日本に行く予定なので、桜が見られるといいなあと思っていますよ!(※取材時は桜の開花時期)

――このシリーズが初めて監督するホラーだったと思いますが、実際にホラーを作ってみて、このジャンルを創作することの魅力はなんだと思われましたか?

グリーン監督:今まで自分が手掛けた作品では、ヒューマンドラマというだけではお客さんが来てくれないこともありました。ホラーは映画館で多くの人に観てもらえるジャンルであると同時に、カンバスとしてとてもクリエイティブなものだとも感じています。SFXや特殊メイクなどのスタッフたちと創造的な楽しいコラボレーションをしつつ、パーソナルな物語を綴ることができ、ホラーというフォーマットをとっているからこそたくさんの人に観てもらえる。そしてサウンドデザインは驚くほど面白いんです。これはコメディやドラマの制作では体験できないことで、すごく新鮮でした。一番好きな部分かもしれませんね。

『ハロウィン THE END』
TOHO シネマズ 日比谷、渋谷シネクイントほか全国公開中

配給:パルコ ユニバーサル映画

(C)2022 UNIVERSAL STUDIOS

情報提供元: ガジェット通信
記事名:「 『ハロウィン THE END』デヴィッド・ゴードン・グリーン監督インタビュー 因縁の最終対決の結果は「撮ってみるまで分からなかった」[ホラー通信]