数々の名コラムを世に送り出してきた高山真の自伝的小説「エゴイスト」。主人公の浩輔役に『孤狼の血 LEVEL2』で第45回日本アカデミー賞最優秀助演男優賞ほか、俳優として栄誉ある受賞が続く、今最も勢いに乗る鈴木亮平、浩輔の恋人となる龍太役には『騙し絵の牙』や『グッバイ・クルエル・ワールド』『レジェンド&バタフライ』、NHK連続テレビ小説「ちむどんどん」など話題作への出演が続く宮沢氷魚、さらに浩輔の父親役に柄本明、龍太の母親役に阿川佐和子を迎えて映画化。昨年の東京国際映画祭ではコンペティション部門に選出され上映回ではほぼ満席回が続き、「アジア全域版アカデミー賞」と言われるアジア・フィルム・アワードでは公開前でありながら、そうそうたるヒット他作品とともに主演男優賞・助演男優賞・衣装デザイン賞の3部門でのノミネートが発表され、国内だけてなく海外からも話題を集めた本作が、2月10日(金)より劇場公開となります。

映画『エゴイスト』が、日本外国特派員協会記者会見を実施。出演の宮沢氷魚、監督の松永大司が登壇し、海外メディアによる試写鑑賞後の質疑応答機式の会見となりました。

宮沢は英語を話すのは久しぶりだと話したが、「お招きいただき光栄に思います。また、素晴らしい監督とご一緒することができて感謝しています。ここにくるのは前々からの夢だったので嬉しいのですが、英語を話すのは久しぶりなのでお聞き苦しい点があったらご容赦ください」と冒頭から流暢な英語で自己紹介と挨拶。

松永監督はこのテーマを手掛けようと思った動機について聞かれると、2つの理由があるといい、「1つ目は2011年のデビュー作『ピュ〜ぴる』で、様々な海外映画祭に招待され、その中でLGBTQ+を取り囲む環境が圧倒的に日本と違いました。それから10年以上経って、以前よりは理解され、言葉が浸透していってる気がしますが、先日の岸田首相の『同性婚を認めると社会が変わる』という発言や、首相秘書官の同性愛者への差別的な発言は、誤解や大きな差別を生むと思っています。この映画はLGBTQ+に対しての定義や理解を深く求めるものではありませんが、この映画を見た方が考えるきっかけになったら良いなと思ったことです。LGBTQ +用語を正確にメディアの方に伝えてもらうのも僕らの役割だと思うので、プレス資料の後ろに用語集をつけました。2つ目は、阿川佐和子さん演じる妙子が愛について伝えている言葉があり、それを読んで映画にしようと思いました」と回答。

続いて龍太役を引き受けた理由について聞かれた宮沢は、実は2度ほどオファーがあったことを明かした。「今回のオファーを受けるそのさらに2年前に1回目のオファーがあったときは実現できませんでした。そこから再度お話をいただいたときに決め手となったのは15年来の友人との体験でした。彼はゲイで、知り合ってからずっと、心地よく過ごせる自分の居場所を探しているように感じました。この映画を作ることを通して、友人のためになるのではないか、そしてLGBTQ+コミュニティのためにもなるのではないかと考えました」と自身の体験から出演を決めたことを明かしています。

会場から質問を募ると、早速松永監督へ『エゴイスト』と言うタイトルの理由が聞かれた。高山真さんの小説「エゴイスト」が原作となった本作だが、タイトルの理由はそれだけではなく、「一般的に『エゴイスト』と言う言葉はポジティブな意味では使われない。この映画で描かれている「エゴイスト」については、主人公の行動が悪いことなのか、良いことなのか、愛のあり方とはどういうことなのか、を問いたいなと思ってそのままつけました。観る前と観た後とで、「エゴイスト」の意味が変わると良いなと思います」とタイトルに込められた思いを語ります。

演出について聞かれた宮沢は、「松永監督の演出がユニークで、撮影に入る前にリハーサルを重ねていきました。脚本ベースではなく、監督からはシーンの展開の説明のみだったので、即興で芝居をする感じでした。、脚本に書かれている言葉がそのままセリフになるのではなく、お互いに開かれた気持ちで自由にやらせていただいたので、いきいきとした芝居になったかなと思います。慣れない撮り方でしたが、自分の感情が湧き出て刺激的な体験となりました」とこれまでにない、演出と現場であったことを告白。見事な英語で応じます。

続いてクレジットの中に出てくるIntimacy choreographerという役割について、Intimacy シーンを撮るにあたってどのように感じたかという質問に宮沢は、「過去にIntimacy choreographerが現場に付くというのがこれまでの現場ではありませんでした。これからはIntimacy choreographerがいないという現場が想像できません。こういうサポートがあるというのは日本映画において大きな一歩であると思います」とIntimacy choreographerの存在が安心できる上にIntimacy シーンの同意については必要であると回答した。

※Intimacy choreographer(インティマシー・コーディネーター)とは:映画やテレビの撮影現場でセックスシーンやヌードシーンをサポートするコーディネーターです。

またこの作品ではIntimacy choreographerとLGBTQ+ inclusive directorという担当者について監督へ質問があると「この作品は誰1人欠けても完成させることはできませんでした」と語り、「LGBTQ+ inclusive directorとして入ってくれたミヤタ廉さんの存在はとても大きかったです」とミヤタ廉の存在について話す。居酒屋のシーンなどで出演する浩輔の友人は、皆ゲイ当事者であるため、彼らを探す相談をしたり、Intimacy choreographerのSeigoも誘ってもらったと明かします。宣伝において正確な言葉を伝えるために、監修をしてくれている松岡宗嗣について紹介し、ミヤタ廉と松岡宗嗣が今日も記者会見を見守っていることに感謝をすると会場は拍手に包まれました。

海外記者からミヤタ廉とSeigoは現場ではどういったことをしたたのか具体的に質問されると「細かく所作やセックスのシーンなど細かい部分を一緒にモニター越しで観てもらい、役者が何か演技でわからないことがあったときは、常に2人(ミヤタ廉、Seigo)に質問してもらうようにしていました」とふたりの役割について説明。

記者から宮沢に、更迭された首相秘書官のLGBTQ +に関する不適切な発言に対してどう思われるのか、そして日本社会のLGBTQ +に対する理解不寛容、法制化の遅れに対してどう思うのか質問されると宮沢は、政治的な発言はあまり表立って述べてこなかったと語るも、「発言が出たことによって、たくさんの人が声を上げて、その失言に意見をする姿をたくさん見ることができました。日本の今までの歴史を考えても、間違いなく前進はしていると思いますが、他国に比べると遅れを取っているところもあると思います。そんな中、世論がたくさんの声を上げたことは日本の未来に希望が見えました。とても悲しい出来事ですが、それによって前向きな皆の意思の強さが見えましたし、そこに、もっと注目が集まってもいいんじゃないかなと思っています」と自身の気持ちを露わにしています。

映画『エゴイスト』は2月10日公開。

情報提供元: ガジェット通信
記事名:「 映画『エゴイスト』日本外国特派員協会記者会見レポート  LGBTQへの不適切発言について「とても悲しい出来事ですが、それによって前向きな皆の意思の強さが見えた」