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作家として、演出家として、さらにドラゴンクエスト3の楽曲『そして伝説へ… Into The Legend』の歌手としても知られている人物・鴻上尚史さん(64歳)。彼が新たに成人を迎える若者たちに対して言葉を発表した。
当初は時事通信の依頼により執筆したものだったが、原稿に対して「体言止めが美しい」など20か所以上も指摘が入り、時事通信と決裂。時事通信から公開できなくなったようである。
鴻上尚史さんは自身の公式Twitterに「せっかく書いた文章なので、ここに載せます」とツイート。以下は、鴻上尚史さんの公式Twitterに書かれたコメントと、彼から成人の皆さんに送る言葉である。
<鴻上尚史さんのTwitterコメント>
「時事通信から、「成人の日によせて」という原稿の依頼が来て書いたのですが、書いた文章に20カ所以上の直しが入りました。「体言止めが美しい」というような理由で、納得できないと申し入れたら決裂しました。せっかく書いた文章なので、ここに載せます。多くの若者に届きますように」
成人の日によせて
成人おめでとう。でも、「大人になる」はどういうことでしょうか?
僕は、親や先生や先輩や友達の意見にただ従うのではなく、「あなた自身の頭で考えること」だと思っています。 自分の人生を自分で決めるということですね。けれど、これはとても難しいことです。だって、日本の若者達はずっと「自分の頭で考えるな」という訓練を受けてきたからです。
日本の多くの中学校や高校では「中学生らしい」「高校生らしい」服装や髪形にしようと言われています。 けれど、「高校生」というイメージは、様々です。 それぞれの人の頭には、それぞれのイメージがあります。 それを「高校生らしい」という一言でまとめるということは、「考えるな」ということです。
リボンの幅が3センチは「高校生らしい」が4センチになると「高校生らしくない」ということを論理的に説得できる大人はいないと思います。
僕は愛媛県出身ですが、「愛媛県人らしい服装をして下さい」と言われたら、絶句すると思います。あなたも「出身の都道府県人らしい格好をして欲しい」と言われたら混乱するでしょう。
それと同じくらい「高校生らしい服装」というのは定義不能なのです。
「服装の乱れは心の乱れ」という日本中でくり返される標語がありますが、大人に気付かれないように巧妙にいじめる奴らの服装は乱れているでしょうか。 陰湿な奴ほど、ちゃんとした服装をしていじめることをみんな知っています。
黙ってブラック校則に従え、疑問を持つなと教えられて来たのに、成人する時にいきなり「自分の頭で考える人になって下さい」と言われるのです。ずっと「一人で泳ぐな!」と言われてきたのに、成人したらいきなり「一人で泳げ!」と言われるようなものです。それは無理です。僕は、日本の若者に深く同情します。
が、嘆いてもしょうがないです。 自分の頭で考える訓練を始めるしかありません。そのためには、本を読んで下さい。僕達は、国語の授業でずっと「退屈な本ほど価値がある」と思い込まされてきました。でも、ワクワクドキドキしながら、本当面白く、あなたの生き方の役に立つ本が間違いなくあります。本屋さんに行って、面白そうに感じた本の最初の1ページをとりあえず読んで下さい。つまらなければ、すぐに次の本に移ります。それでいいのです。何十冊とくり返すうちに、あなたにぴったりの本がきっと見つかります。読書は作者との対話であり、あなたの考えを深めます。やがて、「自分の頭で考えること」が身につくようになるのです。さあ、成人して、やっとあなたは自分の頭で考えていい世界に来たのです!
鴻上尚史
※書き起こし、改行は編集部
時事通信から、「成人の日によせて」という原稿の依頼が来て書いたのですが、書いた文章に20カ所以上の直しが入りました。「体言止めが美しい」というような理由で、納得できないと申し入れたら決裂しました。せっかく書いた文章なので、ここに載せます。多くの若者に届きますように pic.twitter.com/ryEgFvjhnE—鴻上尚史 (@KOKAMIShoji) January 6, 2023
時事通信と決裂してしまったことは残念かもしれないが、鴻上尚史さんがTwitterで公開することにより「多くの若者に届きますように」という願いは叶ったのではないだろうか。
あくまで筆者の感想でしかないが、若者でなくとも、今回の鴻上尚史さんの言葉は読む価値があると感じた。皆さんは鴻上尚史さんの文章を読んでどのように感じられただろうか。
※冒頭画像はフリー素材サイト『写真AC』より成人式のイメージ
(執筆者: クドウ@地球食べ歩き)