3年ぶりの映画出演となる香取慎吾と、市井昌秀監督がタッグを組んだ 新作映画『犬も食わねどチャーリーは笑う』が9月23日(金・祝)に公開となります。

結婚4年目を迎える田村裕次郎(香取)と日和(ひより/岸井)。 表向きは仲良し夫婦の2人の間に生まれた綻びが、 過激な SNS「旦那デスノート」の存在によって引くに引けない夫婦ゲンカに発展! コミカルな悪口が並ぶ「旦那デスノート」とは対照的に、 シリアスなシチュエーションにもがく裕次郎と日和の未来は一体どうなるのか…?

本作制作にかける想いや、キャストとの撮影秘話など、市井監督にお話を伺いました!

――本作大変楽しく拝見させていただきました!まずは、香取慎吾さんに裕次郎役をお願いした理由から教えていただけますでしょうか?

2008年の「ぴあフィルムフェスティバル」にて初めてお会いしてから、いつか慎吾さんの映画を作りたいと思っていました。すごく熱血とか、強烈なキャラ付けがされている作品が多い印象があったので、キャラクターがいわゆるアニメや漫画の様に突出しているわけではなく、平凡な男を香取慎吾さんに演じてもらえたら面白いだろうなと思い、(裕次郎の役は)ほぼあて書きで書いています。だらしなさも弱さもさらけ出す、人物像を描きたいなと思いました。

――いち観客としても、香取慎吾さんの“普通の役”というのはすごく新鮮でした。実際に現場でご一緒してみての印象はいかがですか?

本作の制作2年くらい前にMV(#FUTUREWORLD feat BiSH」)を撮影させてもらったことがあって、その時に感じたのが、「空間を把握する能力に長けている」という事です。自分がどういう風に撮られているか、アングルやサイズも全て頭に入っていて、どう動けば良いのかを瞬時に判断してくれるんです。全て把握している感じが、カメラをまわしてすぐ、「わっ、すごい!」と分かりました。

その印象がとても強かったのですが、今回の映画の撮影でも同じで。監督としての僕からすると、俳優さんにカメラの位置を気にされる事はあまり好きではないのですが、慎吾さんは、全て把握した上で、「そこにいる」事をしてくれる。すごく色々考えた上で現場に入ってくれるんだけど、カメラがまわると本能で野生的に動くという、理想的な俳優像だなと思っています。そういう方ってなかなかいないんですよね。

――素晴らしいですね。共演の岸井ゆきのさんはいかがでしょうか?

慎吾さんが決まった時に、身長差がある夫婦の画を撮りたいなと思ったのと、(僕が)単純に岸井ゆきのさんとご一緒したかったんです。顔が本当に魅力的で。一度見たら忘れられない個性的なお顔なのに濃いわけではないから、表情の機微が分かりやすくて、観客に感情が届きやすいというか。稀有な映画的な女優さんという印象が強かったです。

気持ちがすれ違っていく様も、見た目的な身長差も、こんな“凸凹夫婦”がいたら面白いなと思いながらシナリオを書いていきました。

――“旦那デスノート”がモチーフというのはドキッとする怖さがありますが、岸井さんが演じてくださると、どこかチャーミングに思えるシーンもありますよね。改めて、旦那デスノートを扱おうと思ったきっかけを教えてください。

オリジナル脚本で0から書かないといけない時には、どうしても自分の身の回りの出来事、体験を切り売りする様な部分が出てくるんですね。パーソナルな部分が出てしまいます。僕も妻と結婚して15年ほど経つのですが、15年の間には色々なことがあって。この脚本を書き出した時も色々あって。そんな話をプロデューサーにしていたら、「旦那デスノートという面白いサイトがありますよ」と教えてくれて。サイトを色々見ていたら、面白いなと。

感情の吐き出し場、恨みが書いてありつつも、「5・7・5」で書いている人もいたり、コミカルさも共存しているというか。こういうバランスのコメディを作りたいなと思っていたので、自分の私生活の切り売りも交えつつ脚本を書き始めました。

――では、監督と奥様のやりとりのニュアンスなども、映画の中に取り入れられているのですか?

そうですね、多少はあります。(妻にも)脚本を読んでもらっています。「夫婦」に答えは無いですが、そのもがいている感じをそのまま映画にすればいいなって途中で思いました。

――また、名脇役であるフクロウのチャーリーも本当に可愛らしかったです!

自主映画の『隼』(2005)という映画を作っていた時に、猛禽類の生態を調べました。「一度夫婦になったら一生離れないのが猛禽類」ということを知って、それでフクロウのキャラクターにしたのですが、どうやらフクロウはその生態じゃないらしいんです(笑)。でも、フクロウは幸福の象徴だったり、隼などに比べたら飼っててもおかしくないかなと。

あと、「ホームセンターで割引になっていたフクロウを買ってきた」という設定があるんですよ。小説には書いているのですが、日和が一人暮らしの時から飼っていて、その時は裕次郎がペット不可の物件に住んでいて…という設定があります。

――フクロウと一緒の撮影は大変でしたか?

フクロウカフェに行った時にあまりにも動かないから驚いたのですが、チャーリー役のまるちゃんは話している人の方を向くんですよ。フクロウってあまりそういうことをしない様なのですが、あの子はすごく上手でした。何より、表情がすごく良いんですよね。「台本読んだんじゃないか?!」ってくらい(笑)、良い表情をしてくれました。動物と一緒の撮影って、「狙ったシーンが撮れるまでずっと待つ」とかそういう事があると思うのですが、この子の場合は全然なくて。あとは、岸井さんがよく触ってくれていたので、愛情を感じて飼い主として認めていた部分もあったのかもしれません。

――他のキャラクターもどの方もすごく魅力的で。市井監督の他作品もそうですが、個性的で素敵なキャラクター描写はどの様に生まれているのでしょうか?

慎吾さんと岸井さんの役柄は当て書きですけれど、他のキャラクターは、普段から「こういう人いるな」と思って残していたメモなんかを使いながら作り上げています。笑いに走るのではなくて、人間の滑稽さみたいなものが出てくることで笑えたら良いなと思っていて、そういう部分に一番興味があります。

――また、オリジナル作品というのはご苦労も多いと思うのですが、監督の中ではオリジナル作品をやる意義みたいなものを感じられていますか?

地図があまりにも無いので、「本当にこれ面白いのだろうか?」と思う事はよくあります。小説だと文章として、時間が経った後にそれが面白いか面白くないかは分かるのですが、シナリオってあくまで設計図でしか無いというか。ただ、ぐだぐだ行ったり来たりしながらもシナリオが完成して、クランクアップ出来た瞬間は無茶苦茶テンションがあがります。そして一番嬉しいのは、やっぱり公開初日です。しんどい事の方が多いですけれど、ほんの少しの楽しさのために、オリジナル作品は続けていきたいです。

――監督が今まで影響を受けた作品や、映画監督はいらっしゃいますか?

相米慎二監督の作品好きですね。僕は劇団「東京乾電池」の研究生だったんですけれど、お芝居を始めた時に色々な映画を観る様になって、相米監督の作品に影響を受けました。北野武監督や、SABU監督の様な役者さんから映画監督になった方も影響をうけているのですが、相米監督の作品は長回しをすることで、生きている人間のどうしようもないところも表現していて、そういう姿勢が素晴らしいと思います。本作ではあまり長回ししていないのですが、相米監督には今も刺激をいただいています。

――素敵なお話をありがとうございました。本作もたくさんの方に観て、色々な感想を見ることが楽しみです。

まずは無事に作品が完成出来て本当にありがたかったです。ご時勢的に今は打ち上げも出来ないので、一人一人にお手紙を書かせていただいたのですが、本当に感慨深かったです。ぜひ多くの方に楽しんでいただきたいです。よろしくお願いします。

――今日は素敵なお話をありがとうございました!

『犬も食わねどチャーリーは笑う』
出演:香取慎吾 岸井ゆきの
井之脇 海 中田青渚 小篠恵奈 松岡依都美 田村健太郎 森下能幸 / 的場浩司 眞島秀和
徳永えり 峯村リエ 菊地亜美 有田あん 瑛蓮 / きたろう 浅田美代子 / 余 貴美子
監督・脚本:市井昌秀 音楽:安部勇磨 主題歌:「こころのままに」/never young beach
小説:「犬も食わねどチャーリーは笑う」市井点線・著(小学館刊)
配給:キノフィルムズ/木下グループ
公式 HP:inu-charlie.jp 公式 Twitter:@inucha2022

(C)2022 “犬も食わねどチャーリーは笑う”FILM PARTNERS

情報提供元: ガジェット通信
記事名:「 映画『犬も食わねどチャーリーは笑う』市井昌秀監督インタビュー「香取慎吾さんは全てを把握した上で野生的に動いてくれる」