どうも特殊犯罪アナリストの丸野裕行です。

これまで、刑務所へ収監されていた元受刑者への聞き取り取材をし、刑務所の現状をお伝えしてきた《実録! 刑務所シリーズ》。様々なインタビューを経て、執筆してきました。

彼ら刑務所で懲役刑を受けてきた受刑者たちの話を聞くほど、刑務所側の対応や受刑者を管理する側の難しさ、収監されたあとの制度に関する矛盾点などがわかってくるわけです。

【実録! 刑務所シリーズ】
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さて、今回は《一般的な刑務所とは違う、交通刑務所について》です。「交通刑務所って何?」というあなた、実は一般的な刑務所とは違い、交通刑務所というのは独自のシステムがあるのです。では「交通刑務」とはどのようなところなのか? 本日も深掘りしていきましょう。

全国の中で交通刑務所があるのは2か所です。一般刑務所と併設されている兵庫県の《加古川刑務所》、そして千葉県の《市原刑務所》です。今回は市原刑務所に収監された経験のあるW氏(54歳)に話を聞きました。

「交通刑務所」って一体なんなの?

まずは予備知識からです。「交通刑務所」という言葉は俗称になり、そのような刑務所というのは日本には存在しません。道交法(道路交通法違反)などの軽い罪であれば罰金で済むわけですが、重大な事故を起こした場合などは、懲役や禁固刑になります

そのような罪を犯した人間を専門的に受け入れる場所を「交通刑務所」と呼ぶわけです。交通に関する罪状が付いた受刑者は、凶悪犯というわけではなく、粗暴な素行も少ないために「行動制限」を最低限に抑えているというわけなんですね。ですから、よく見かける刑務所の高い塀などは皆無で、所内でもある程度、自由が許されているということです。

道路交通法を犯した受刑者には、高い塀以外にも鉄格子もなく、厳重な監視体制もなく、房の鍵、面会制限も一部ありません。刑務作業が科される程度のお灸というわけです。手錠や腰ひもなどの拘束もなく、刑務所内の移動ですら自由なわけです。

交通刑務所の刑務作業とは?

丸野(以下、丸)「一般の刑務所と違って、自由なものですね」

W氏「ですが、刑務所であるということには違いありません。刑務作業もちゃんとあります。印刷や木工、金属加工、洋裁、革加工なんかがありますね。最近では、出所した後のために農業という刑務作業もあります。作業時間は、一般的な刑務所と同じく、朝8時から16時まで、1日8時間。作業内容については、受刑者の職歴やスキルで振り分けられます

独特の交通安全指導というものがある

丸「交通教育というものがあると聞いたことがあるのですが……」

W氏「そうですね、特徴として《交通安全に関する指導》があります。この刑務所には、危険運転やひき逃げ、飲酒運転で人を殺害したという悪質な道交法違反をした者が収監されることになっています。ですから、交通安全の講習などが日常的に行われ、公道への復帰に向けた矯正指導が行われるわけです。刑期終了前には、敷地内にある教習所で、自動車の教習が受けられます。飲酒運転で物損事故を起こしたとなれば、罰金刑になりますが、人身事故になると罪は重くなりますね」

丸「どのくらいの罪になるのでしょうか?」

W氏「人を負傷させた場合は、15年以下の懲役、人を死亡させた場合は1年以上の有期懲役になります。最長で20年と定められていますね。刑が確定するまでに、逮捕、勾留、起訴、刑事裁判、判決という手順を踏みます。私も飲酒運転だったために交通刑務所に入りました」

丸「ちょっとわかりづらいですね。収監のポイントはどのようなものがありますか?」

W氏「刑務所に収監されるのが初めて、脱走の恐れがない、更生の可能性が高い受刑者という3つになります。刑務所に何度も収監されている人間は更生の可能性が低いので、一般刑務所に入れられる可能性が高いということです

交通刑務所に収監されたあとに待っている生活

W氏「交通刑務所は、面会時間と曜日の指定がないという特徴があります。毎日面会することが可能だということですね。祭日は除外され、面会時間は1日1組30分までになります。面会者は、身分証明書を提示しなければいけません」

丸「食事に関してはどうですか?」

W氏「食事に関しては、一般刑務所と同様のものです。主食とおかず、汁物という非常にシンプルなもの。しかし、しっかりと栄養管理などはされているので、栄養失調とは無縁の食事です。シャバよりも逆に栄養価は高いのかもしれません。朝食は7:10〜7:25、昼食12:00〜12:30分、夕食は17:00〜15分という風に決まっています。昼食時は休憩時間も含めた時間帯になります」

交通刑務所の基本は寮生活

丸「交通刑務所というのは、収監される期間で違う寮に移されると聞いたことがあるんですが?」

W氏「交通刑務所の寮は4つ。《新入寮》、《準開放寮》、《開放寮》、《希望寮》になりますね。新入寮は独房となっており、鍵もかけられます。収監期間が長ければ長いほど、どんどんと自由度が増していき、《開放寮・希望寮》では鍵すらかかっていないので、移動は自由です。所内では生活態度の良し悪しに応じて寮を移動するということになるわけで

収監される条件が厳しいといわれる「交通刑務所」。道交法違反の大半の受刑者は一般的な刑務所に収監されることになるそうです。道交法を甘く見ている方も多いかと思いますが、あなたが交通刑務所に収監されれば、哀しむ方もいるわけです。いくら自由といっても、社会的なペナルティーは大きいと考えられます。

あなたがハンドルを握るとき、大切な人のこと考えながら、アクセルを踏むようにしましょう。

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※写真はイメージです

(執筆者: 丸野裕行)

情報提供元: ガジェット通信
記事名:「 一般刑務所と違う「交通刑務所」を知っていますか?