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兵庫県加東市にある天台宗の寺院『御嶽山 播州清水寺』が、現在話題になっています。それは、お寺の魅力を十二分に理解した、いわゆる“寺マニア”以外にも広がっているというんですね。
さて、なぜこの『御嶽山 播州清水寺』がフィーチャーされているのか……そこには、ご利益のある《とあるアイテム》の存在があったのでした。
今回は、実際に筆者が足を運び、こちらの寺院の歴史と共に注目の的になっている《アイテム》について解説していきたいと思います。
清水寺といえば、京都にある清水寺が最も有名だと思うのですが、実際には京都清水寺、鎌倉清水寺、今回ご紹介する播州清水寺という《日本三大清水寺》と呼ばれているお寺があります。
訪れたこの寺院は、播磨の大自然の山々に囲まれ、境内がキチンと整備されていて静寂に包まれる居心地のよい場所でした。
この『御嶽山 播州清水寺』は、西国三十三所第25番札所であり、十一面千手観世音菩薩をご本尊とするもの。非常に歴史があり、その起源は古墳時代である1,800年前、古代インド(天竺)僧の“法道”が天竺から紫の雲に乗って日本に渡来、創建したという伝説があります。さらに、西暦627年(推古35年)に推古天皇勅願所として根本中堂が創建。725年(神亀2年)には聖武天皇勅願所として大講堂が創建されました。
仏教が伝来したのは聖徳太子がいた1,600年前の6世紀ごろということから、伝説であることは間違いないと思われるのですが、兵庫県南部にはこの“法道開基”を伝える寺院が集中しているということから、由来につながる仏教者がここに存在したということは想定できますね。
1913年(大正2年)に根本中堂などがすべて焼失してしまうのですが、その4年後の1917年(大正6年)には再興。この地方には法道伝説があちこちに残り、毎年多くの参拝客が訪れるこのお寺には多くの人を引きつける不思議な魅力があるといいます。
駐車場に車を止め、まず大正時代に菅原大三郎が作成した金剛力士像が並ぶ仁王門をくぐる。そして石垣の道を300メートルほど進むと、まずは平清盛の義母である池禅尼が創建したとされる薬師堂(堂内には薬師如来とせんとくんの生みの親である東京藝術大学大学院教授兼彫刻家の籔内佐斗司先生作の壁面を飾る十二神将がある)、そして標高約500メートルほどに位置する大講堂、その脇にある石段を駆け上がると右側には地蔵堂、左側に《国登録有形文化財》の“開運の鐘”である鐘楼が建っています。
積み上げられた石段を最後まで登り切れば、正面に《国登録有形文化財》である根本中堂(本堂)があり、心地よい風が頬を撫でます。やはり仏様の気配がある……福井県にある永平寺を総本山とする曹洞宗の孫である筆者はそう感じました。
法道が渡来する前、この地は水が乏しい場所でした。神通力を持っていたといわれる法道は渇きに苦しめられるこの地のため、水神に祈願して霊泉が湧きでるようになったと伝えられています。この伝説から、この寺院は“清水寺”と名づけられたわけなんですね。
根本中堂の後ろには、藁ぶき屋根に囲まれた井戸。この井戸は法力で法道が水を湧き出させた場所だといいます。もたらされた滾浄水(こんじょうすい)に自分の顔が映れば、3年寿命が延びるとも。
さらに、加東市指定有形文化財に指定されている本尊十一面観音立像は30年に一度の開帳の秘仏となっています。その裏側を40メートル上がれば、多宝塔跡。その他にも、月見亭、阿弥陀堂跡、常行堂跡などがあり、見どころ満載なんですね。
かなり整備の行き届いた境内は、国指定の公園に来ているような気分になります。
正直、素晴らしい寺院で人気が高いことは当たり前だと思いました。参拝にくる皆さんもこの場所で清々しい気持ちになるのでしょう。しかし、さらに驚いたのが《とあるアイテム》の売り上げが絶好調だというのです。
それが、現在予約待ちまで入っているという《蛇の抜け殻 金運御守》。
お話をお聞きできたのは、企画・広報担当の徳田康雄さんです。
<写真:上段の左から朱と黒、下段の左から煌・曙・雅という全5種類>
丸野(以下、丸)「売れ行きがかなり好調だそうですね。なぜ、蛇の抜け殻を?」
徳田さん「本物の蛇の抜け殻を使用しているのは、日本で昔から伝えられてきた“金運上昇”というご利益がベースになっているからです。古くから《繁栄の象徴》とされる蛇の抜け殻を財布の中に忍ばせておくと、お金が貯まると伝えられてきました」
丸「ええ、そうですよね」
徳田さん「しかし、核家族化が進み、おじいちゃんやおばあちゃんが語る、その“いわれ”は孫の世代にまで継承されにくくなってきたわけです。それを現代社会に語り継ぐことへの大切さを『播州清水寺』は伝えたかったんですね。この御守を授与するまでには、2年もの歳月がかかりましたよ」
丸「今どきの若い人たちは、そのことを知らない人がほとんどじゃないですかね。僕らは徳田さんがおっしゃられている通り、祖母などから語られてきましたけど」
<写真:縦8センチ、横5センチ、厚さ1ミリのカード御守。プラスチック樹脂製の黒>
徳田さん「そうですよね、昔よく聞きました。“財布の中に蛇の抜け殻を入れておくとお金が貯まる”と……。子供の時に聞いたその風習を伝えれば、この時代の若者のみなさんでも実際に財布に入れて持ち歩こうと思うのではないか? さらに、オシャレでスマートなカードサイズのものに、正真正銘・本物の蛇の抜け殻が入ったアイテムを作れば喜ばれるんじゃないか、と考えました。中心にひし形や丸形のくりぬいた部分、ここに金色に輝くウロコ状の模様。この部分が、金紙に貼られた蛇の抜け殻になります」
丸「ほほう、なるほど」
<写真:内部には本物の蛇の抜け殻が納められ、唯一無二の御守になる>
徳田さん「御守の種類は全部で5種類。プラスチック樹脂製の朱と黒、さらに丸形にくりぬかれた和紋柄の紙製である黒色の煌(きらめき)、赤色の曙(あけぼの)、白色の雅(みやび)になります」
丸「これは……すべて模様が違いますね」
徳田さん「ええ。本物の蛇の抜け殻を使用しているので、同じウロコ模様はひとつもないとのこと。まさに世界にひとつだけの御守になります」
<写真:白色の雅(みやび)>
丸「財布の中にも入れやすいカード状になっているわけですか?」
徳田さん「そうです。しかも御守は、すべて住職によって祈祷されています。日本文化の中で時代が変われど大切にされているのが、御守やお札文化です。子どもたちや若者の中でもなにか話題になるようなアイテムをつくりたい、さらにそのアイテムをちゃんと祈祷済みにしている。このご利益があるように、と思う気持ちが大切だと思います」
<写真:御守のすべてが祈祷済み>
丸「でも、授与までに2年もの歳月がかかったんですよね。それの理由は?」
徳田さん「まず、大量の蛇の抜け殻を継続的に入手できるルート探しに手間取りました。支援者や協力者に恵まれたためにキレイなものばかりが手に入り、2年ほどで済んでよかったと胸を撫でおろしています。さらに、手に入れたくしゃくしゃの蛇の抜け殻をしっかりとキレイに伸ばし、金紙に貼りつける技術に時間を要しましたね」
丸「そこまでこだわった御守って他府県でもなかなかないと思うんですが……」
<写真:十二神将>
徳田さん「やはり、日本遺産である西国三十三所札所、古刹である『御嶽山 播州清水寺』なので、参拝される皆様に違和感を覚えてもらっては困ります。ですから、この寺院らしいアイテムであることにこだわりの照準を絞りました。たくさんの皆様の手に届くように、一定数が作れてそれを何年も継続していける計画で進めなければいけないわけです」
丸「素晴らしい完成度だと思います」
徳田さん「かなりステキな御守ができたな、と手ごたえを感じました。多くの方々の手元に届き、喜んでもらいたいと常に願っています。かなり苦労して時間はかかりましたが、私もこの御守の完成度には満足しています。
丸「メディアでも数多く取り上げられてきたそうですね」
徳田さん「地元紙の神戸新聞さんに掲載されたあとは、お寺への問い合わせ電話が殺到しました。急遽追加した1500枚もすべて完売。FNNプライムでも取り上げられて、また追加の枚数を確保しました」
丸「反響がいいですね」
徳田さん「実際に御守を購入した方は、オンライン授与所だけでなく、こちらまで足を運ばれて実物を見て買って帰られる方も多いですね。ビジュアルなどの評判も上々です。スタッフ一同、購入される方に“ご利益がありますように……”と常に考えています。祖先の時代から伝聞されてきたことを、若い世代に伝えつなげていくツールになればうれしいですね」
授与を開始してから1年数ヵ月。この《開運アイテム》の授与は継続しています。1枚1枚のウロコには様々な模様の違いがあり、それを見比べるのも楽しいかもしれません。
この『御嶽山 播州清水寺』の蛇の抜け殻を利用した御守は、一つ2000円。大講堂の納経所、播州清水寺ホームページからオンラインサイトで授与してもらえるとのこと。
この地を訪れてお話を伺い、帰りに授与していただいた御守を大切に財布の中へ納める。非常に晴れやかな気分になり、筆者は家路につきました。
『御嶽山 播州清水寺』
住所:兵庫県加東市平木1194
TEL:0795-45-0025御守購入オンラインサイト:https://kiyomizudera.base.shop/
開門時間:8:00~17:00
電車・バス:JR福知山線相野駅下車 清水寺行バスで約35分
車:舞鶴若狭自動車道三田西インターより約20分、中国自動車道ひょうご東条インターより約20分、駐車場/無料 (乗用車340台・大型バス20台)
拝観料:大人500円/高校生300円/小学生無料
公式サイト:http://kiyomizudera.net/
(執筆者: 丸野裕行)