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どうも、特殊犯罪アナリストの丸野裕行です。
暴力団対策法や地方公共団体制定した暴力団排除条例など、反社会的勢力に対する締め付けが厳しくなっています。ところが、締めつければ絞めつけるほど、暴力団はマフィア化して闇に潜り込み、どんなことをしているのかすらわからなくなってしまいます。
例えば拳銃や日本刀などの武器は準備集合罪などが適用され、即逮捕になってしまうのは昔からですが、ヤクザたちもいろいろと考えるわけです。そこで今利用されているのが、不動産業者などが運営しているトランクルーム。
実はヤクザたちが生きにくくなった今、半グレなどを顎で使うヤクザたちは、自分たちのつながりのある企業経営のレンタル倉庫に様々なものを隠し持っているそうです。もちろん、組事務所にはそれらを置いておけないからです。
彼らが利用するトランクルームでバイト管理人をして、騒動に巻き込まれた男性がいました。その名も、矢島くん(仮名、31歳)。
今回は、彼が体験したヤクザ御用達のトランクルームでの戦慄のバイト経験について、告白してもらいたいと思います。
丸野(以下、丸)「何をキッカケにしてそんなトランクルームで働くことになったんですか?」
矢島くん「バイト情報誌『F』で見つけたトランクルームバイトでした。時給が1,800円と高収入だったんですよ。で、すぐに面接に行きまして、普通の会社だったんですけどね、即採用というわけで……」
丸「その後は、すぐに勤務に就くことになったんだ」
矢島くん「いきなり初心者なのに、現場責任者という役職をいただいてびっくりしていたんですけど。まぁいいや、というノリでしたね。まずはマニュアルを渡されて、前の責任者から通路や空室の掃除の指導を受けまして。あとは詰め所で本を読んだり、借り主の希望者に部屋を見せたりしているだけの仕事です。時折、暗証番号を忘れたりする人がいるので、お教えしたりという仕事ですね」
矢島くん「そのうち、どうもイカつい男の人たちが荷物を運びこみまして、“おう、兄ちゃん、ご苦労さん”と声をかけてくれたんです。段ボール10箱くらいでしょうか。やけに重たそうに運んでましたね。そのうちに、“おう、手伝ってくれ”というふうに言われました」
丸「で、手伝ったんですか?」
矢島くん「お手伝いするのも管理人の役目だと思って、横止めになっていたバンから荷物を下ろしたんですが、家紋のか言った提灯や看板なんかが見えてましたね。それと、大量の小さな袋です。あと、注射器みたいなものが入った袋もありました」
丸「そのときは怖くなかった?」
矢島くん「まぁ、そのときは何を運び込もうが、トランクルームにしまおうが、借り主の勝手ですから、と。トランクルームなんてそんなもんだ棟と思っていました」
丸「で、それからは?」
矢島くん「それからは一般のお客さんももちろん来てましたけど、深夜になるとやはり眼光の鋭いガタイのいい男性たちが出入りしていましたね。基本的にカードキーなのでこうしたことはあまりないのですが、僕が夜勤に入るときはカードキーすら持っていない人もいましたよ。出社するのは面倒だけど、そこで、“ちょっと運び出すのを手伝ってくれ”と首までタトゥーの入った若いお兄さんに小遣いを渡されて頼まれましてね。持った段ボールが異様に重い。すると、前を歩いていたお兄さんが持つ段ボールの隙間から、黒い塊が落っこちたんです。よく見ると拳銃でした」
丸「それ、どうしたの?」
矢島くん「“それ拳銃じゃないですか?”って聞いたら、“オモチャだよ!”って頭を殴られて……」
おかしいなと思った矢島くんは、怪しい連中が使っていた部屋の暗証番号を勝手に開けて探ってみた。すると、ヤッパ(小刀)や拳銃、ダイナマイト、自動小銃、計量器、袋などが大量にあったという。おまけに、ヤクザや半グレたちの物騒な事件がニュースになると、半グレらしき連中がトランクルームを出入りする、警察関係が動くとすべての荷物を大型のワゴンに積んで部屋を出ていく。
そんなことが何度かあった。おそらく、警察にバレるとマズいものの場所をすぐに変えるのだろうと確信した。
丸「それでおかしいと思ったとき、矢島くんはどうしたの?」
矢島くん「もちろん、自分の雇い主の本部に連絡を入れましたよ。“これこれ、怪しい連中が出入りしていますよ”と。そうすると、“黙っていろ、おまえが責任者だ。警察にバレるとおまえが引っ張られるぞ”と脅されました」
丸「反社会勢力の息がかかった会社だったんだ」
矢島くん「そうですね。それからは、清掃をしているときには、冷暖房のついた一室に帰ってくる女を見ました。話し方が片言で、中国人っぽかったんですが、次の日嫌がりながら男に車に乗せられて連れていかれました」
矢島くん「いろいろと謎が多いこのトランクルーム。他のお客さんから変なにおいがするという一方が入って、覗きに行ったんですが、その一室の中で大麻を栽培している部屋を見てしまったんですよね、もうこりゃダメだ、と」
おかしな世界に足を踏み入れてしまったと思った彼は、それから給料ももらわず一目散に逃げ出したということです。
そのトランクルームは今も現存しているということ。世間の闇はまだまだ広がりを見せているということです。
(C)写真AC
※写真はイメージです
(執筆者: 丸野裕行)