――サービス提供開始を目前に控えた2021年5月の中旬、デジタルバンク「みんなの銀行」の取締役会において「代表取締役の対外呼称」についてのディスカッションが行われました。ここでは役員陣の実際の意見をもとに構成したストーリーに、一部脚色を施して公開します。
※この記事はオウンドメディア『みんなの銀行 公式note』からの転載です。

みんなの銀行 出席役員(計7名)
• 横田浩二(取締役頭取)*議長
• 永吉健一(取締役副頭取)
• 宮本昌明(執行役員)
• 役員A
• 役員B
• 役員C
• 役員D

事実! 銀行トップの呼び方には、誰も興味がない

横田(議長) 私個人に対してですが、「デジタルバンクという先進的な取組みをするのに、トップの対外呼称が頭取というのはいかがなものか?」というご指摘をいただくことがありました。仮に頭取という呼び方が世の中にネガティブなイメージを与え、それがみんなの銀行のブランドに傷を付けるものであるならば、変えた方が良いように思います。今日は、代表取締役の呼び方に関して、今のまま「頭取」で良いのか、「社長」や「CEO」に変えるべきか、皆さんにディスカッションをお願いしたいと思います。

永吉 銀行のトップが頭取と呼ばれることを知っているのは、金融関係の方や年配の方、TVドラマの『半沢直樹』を見た人くらいではないですか(笑)。こうした人たちは、「伏魔殿のイメージがある、古臭い呼称を使っているのね」と思うかも知れません。

一方で、みんなの銀行のメインターゲットであるデジタルネイティブ世代にとってはどうでしょうか? おそらく銀行のトップが誰かなどには何の興味もないでしょうから、もちろん頭取という呼称にも、関心がないと思います。

横田(議長) 肝心のお客さまは、頭取か社長かCEOか、横田浩二が何者か、誰も何も気にしていない。確かに、そうかもしれませんね。しかし、呼ばれる私としてはハッキリしておきたい。折角の機会なので、ディスカッションして、みんなで決めましょう。

頭取の起源は、江戸時代まで遡る

横田(議長) それでは、ディスカッション開始のきっかけに、議長である私の意見を申し上げます。もともと頭取という言葉は、江戸時代には組織リーダーの呼称でした。落語『火事息子』に出てきますが、江戸町火消し「いろは四十八組」の長が頭(かしら)で、その頭を束ねるのが頭取でした。明治になって、明治政府が国立銀行条例で、銀行の代表者の呼び名を頭取と定めました。その名残で、法律は無くなっても、今日までその役職が残っています。今放送されているNHK大河ドラマ『青天を衝け』の主人公、渋沢栄一も明治8年に第一銀行の頭取に就任しています。

老中や奉行、番頭や手代はとっくに消えてしまいましたが、頭取だけは江戸時代からの呼び名が残っています。なんせ江戸時代ですから、頭取なんて古臭くて、床柱を背にした敷居の高いイメージで、国内初のデジタルバンクみんなの銀行のブランドを傷付けるかも知れません。しかし一方で、ヨーロッパやアメリカ、とりわけ金融の世界では、古いものに信用や信頼の価値があると見られています。

ビル・ゲイツ氏が言うように、「Banking is necessary, banks are not.」で、これから銀行は、溶けてなくなるのかもしれません。しかし、百年先に多くの銀行がなくなって頭取が居なくなっても、みんなの銀行の頭取は、代々脈々と残り続けるように、誇りを持って敢えて「頭取」としたいと考えました 。

頭取の代わりに「総司令」「船長」「提督」もユニークだけど

宮本 ではトップバッターは私から。みんなの銀行では「銀行らしさからの脱却」をバリューに掲げているので、頭取以外の呼び名がふさわしいかと考えました。それに全国のデジタルネイティブ世代をターゲットとするみんな銀行では、地域金融機関を敢えて前面に打ち出さない戦略をとっていますし。しかし一方で、社長やCEOではありきたりな感がある。それならば重みがあり王道感のある頭取が良いとも思います。

みんなの銀行のプロジェクトはノアの方舟に例えて紹介することもあるので、「総司令」とか「総合指揮官」、「船長」「提督」などもユニークで良いかとも思います。「あの会社面白そう!」と興味を持ってもらうためユニークな呼称とするか、「ちゃんとしているぞ感」を出すために頭取とするか、「ちょっとライトな感じ」を出すためにCEOとするか。色々と悩みましたが、自分の中で思いの一番強い、「頭取」に一票入れさせて頂きます。

横田(議長) 永吉さんが応援団出身なので、私が「団長」で、永吉さんが「親衛隊隊長」とかも実は考えました(笑)。でも宮本さんは、最終的に冒険はせずに、重みで頭取を選ばれたわけですね。

すでにウィキペディアには「頭取」と書かれていた!

役員A 私は今のまま頭取で良いと思います。理由は、「頭取=銀行」のイメージは恐らく変わらないと思っているからです。確かに、みんなの銀行は今までにない新しい銀行のカタチを目指していますが、銀行の名前を掲げる以上は、銀行としての誇りがあるべきではないかと思います。因みに頭取で検索してみたら、ウィキペディアでは以下の内容が記載してありました。信託銀行とその他銀行約30行の中で、みんなの銀行だけが頭取と出ていて、他と違って逆に目立っている気がします。

代表者が「頭取」と名乗るものは普通銀行であり、それ以外の銀行や金融持株会社は社長と名乗る。(中略)信託銀行やネット銀行など(金融庁の分類による「新たな形態の銀行」)では、ふくおかフィナンシャルグループ傘下のみんなの銀行だけが「頭取」と、同行以外は全社が「社長」と名乗っている。(引用:ウィキペディア)

横田(議長) すでにウィキペディアで、みんなの銀行は頭取と出ていますか。早いですね。ちなみに「Wiki」って、ハワイ語で「早い」っていう意味だそうです……、脱線してすみません。

トップを「CEO」とするなら、その他もCOO、CFO、CTO、CIO、CRO……

役員B 法律上は代表取締役であり、その下にどのような呼称を置くのか……、頭取、社長、CEO、いずれの選択肢もあると思います。頭取というのは銀行ならではの風習だと思いますが、サービス業を意識して、銀行でも社長と付けているケースはあると認識しています。CEOはまだ前例もないでしょうね。

代表取締役の呼称をどうするかについては、私は組織のあり方、チームメンバーの位置付け、モチベーションにも影響する問題だと思っています。つまり横田さんを頭取と呼ぶならば、永吉さんが副頭取で、あとは特に呼称なしでしょうか。横田さんを社長と呼ぶならば、永吉さんが副社長で、あとは専務や常務になるのでしょうか。横田さんをCEOと呼ぶならば、永吉さんがCOOで、あとはCFOやCTO、CIO、CRO……など自由に付けやすくなる、というメリットがあるように思います。

つまり、みんなの銀行をスタートアップとして位置付けるなら、全員野球というか、全員がその役割のトップとなり得るということを呼称としても感じられるので、横田さんをCEOと呼び、他の皆さんにもCxO(Chief x Officer)の呼称を使用してもらう。また日本企業でも海外取引が多いケースでは、CEO等を積極的に付けている場合が多いので、将来、海外のスタートアップとも互角に張り合い、「国内初のデジタルバンクを、国内外に発信していく」ことを想定した呼び名にするのは、一つの新しいやり方かなと思いまして。CEOに一票とさせてください。

横田(議長) 確かに、頭取・副頭取以外の、専務や常務については意識していませんでした。対外的にはCxO(Chief x Officer)も併せて使っており、例えば私は、頭取・CEOと称する時もあります。フラットな組織として、CxO(Chief x Officer)を多く登用するメリットはありますね。

近日公開 みんなの銀行「社内総選挙」前夜(中編)に続く

(執筆者: みんなの銀行)

情報提供元: ガジェット通信
記事名:「 頭取?社長?CEO? 銀行トップの対外呼称が決まるまで|みんなの銀行「社内総選挙」前夜(前編)