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日清『どん兵衛』と『U.F.O.』の発売45周年を記念した“特別コラボ”商品がついに発売となりました。
“入れ替えて作ったらうまかった件”として、『どん兵衛』と『U.F.O.』それぞれの美味しさを“入れ替える”という謎の攻めっぷり。
先に言っておきますが新海誠作品のアレは言いませんからねっ。「これってもしかして、俺たち/私たち、入れ替わってる?」っていうアレは言いませんからね。
発表時、ネットでは「間違えて買う人が出るのでは」とトラブルを心配する声もあったようです。パッケージを見ると確かにそのくらいに情報が交錯しているデザイン。良く読めばわかるんですけど、うっかりさんは間違えてしまうかも?
とは言え、趣旨を理解している我らにとっては無問題。
……そう思っていた時期もありました。こうして並べて、パッケージを並べて開いてみると、その自信が崩壊していく音が聞こえてきます。
『どん兵衛』の中は、キャベツと肉片のかやく。『U.F.O.』の中にはかまぼことおあげ。付属されているソースも食い違っています。混乱。
お湯を入れて所定の時間を経過したら湯切りをしてソースを入れるのですが……『どん兵衛』には濃い濃いソース風味の液体ソース。一方、『U.F.O.』には和風だしがたっぷりと香る醤油の液体ソースが用意されています。
仕上げに『どん兵衛』にU.F.O.のふりかけ、『U.F.O.』にはどん兵衛マヨがかけられてしまいます。なんてこった。
まず『どん兵衛』から。そもそも、『どん兵衛』の器で『どん兵衛』の麺が入ってるにも関わらず、U.F.O.味のあのソースの味がするって時点でものすごく混乱するんです……が、すごいのは、めちゃめちゃ美味いんですよ。
濃い濃いソースなんですけど、どん兵衛(のこの麺)に合わせた濃度に調整されているんです。具もふりかけもU.F.O.なんですが、調和をきちんと果たしている。「単に入れ替えただけじゃないぞ」をこの時点で感じます。
では『U.F.O.』サイドはどうでしょう。
『U.F.O.』は真円に近い中太ストレート麺。ここにどん兵衛のだしを基調とした醤油ダレが絡み、かつ、マヨネーズが濃厚さを補っています。麺がつくづく『U.F.O.』だなあって思いながら後からどん兵衛が香って来る調整、見事すぎます。
どちらのタイトルも、日清開発陣の職人芸が垣間見えます。
ドラえもんの道具に『家族合わせケース』というアイテムがあります。いきなりすみません。この道具、コミックスの3巻に出てくるのですが、作中でこの道具を使ったのび太やスネ夫、しずかたちは親子の組み合わせが一時的に交換されてしまいます。「もし自分が他の家の子だったらどうなったのだろう」というシミュレーションができてしまう道具だったのです。
今回の特別コラボは、もしもの“交換”を果たしたという点ではまさに一致。お互いのアイデンティティの一部とも言えるソースや具材を交換してしまったらどうなるのだろう……? そんな「もしも」をメーカー自らが体現してしまいました。
いや、このひみつ道具の事を知らずとも、私たちが過去の事を追想したときに「あのときにあの人と付き合っていたら、今の環境はどうなっていたのだろう」「どうしてどうして僕たちはあのとき出逢ってしまったのだろう」「離れてしまったのだろう」「できるだけ優しくしなかったのだろう」―そんなことを思わずにいられない、そのくらい完成度の高い仕上がりなのです。
今『どん兵衛』が『どん兵衛』として在ること、今『U.F.O.』が『U.F.O.』でいられる幸せ―そんな現状の良さを再認識しながら「少し不思議なif」を感じられるこの自社内コラボは、“単に入れ替えた”にとどまらない内容になっていると感じるのは筆者だけでしょうか。
歴史の分岐点の先に、こんな甘美な未来がもしあったのだとしたら……。
『日清の汁なしどん兵衛 濃い濃い濃厚ソース焼うどん』『日清焼きそばU.F.O. だし醤油きつね焼きそば』は2021年5月10日(月)から193円(税別)にて全国で発売となります。
ネタ企画という言葉で終わらせるにはもったいないくらいの仕上がりを、ぜひ確かめてみてください。