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「従来までの楽しさ」を大事にしながら、いかに「新しさ」を加えていくか?──息の長いシリーズでは常につきまとう課題だ。国民的タイトルのひとつといっていい『モンスターハンター』シリーズも、この課題に挑み続けてきた。
そして、最新作『モンスターハンターライズ』でも、この課題に対して回答を提示している。その回答とは、「翔蟲」「操竜」、そして「百竜夜行」。この回答、筆者的には「アリ」だと感じた。
『モンスターハンターライズ』は、Nintendo Switch向けに発売された『モンスターハンター』シリーズ最新作。基本的な内容は、これまで同様、ハンティングアクション。多彩な武器を駆使してモンスターを倒し、素材を獲得。素材を使って新たな武器や防具を作っていく。よりモンスターを倒すとランクが上がり、より強大なモンスターが出現。それに伴い、より強力な装備を作れるようになる。この繰り返しが楽しいゲームだ。
また、協力してモンスターを倒すマルチプレイ要素も強い魅力。それぞれの得意な武器で連携しつつ、タフなモンスターを追い込んで倒す。「樽爆弾投げて!」とか、「ちょっと今回復するから耐えて!」…なんて声を掛け合いながらプレイするのが、非常に楽しい。
一応、筆者の『モンハン』歴に触れておこう。筆者のプレイ歴は、PSP版の『モンスターハンターポータブル2rd』から。以降、『モンスターハンターポータブル2rd G』『モンスターハンターポータブル3rd』、Wiiの『モンスターハンター3(トライ)』といった形。『モンスターハンター4』や『モンスターハンタークロス』、『モンスターハンターダブルクロス』、それと『モンスターハンター:ワールド 』には触れていない。『モンハン』に触れるのは、実に久しぶりだ。
なので、今回のレビューでは、やや回顧的な形になるものの、筆者がプレイしていた時期の『モンハン』と要素を比較しつつ、『モンスターハンターライズ』の要素を紹介していきたい。
そんな筆者がまず『モンスターハンターライズ』を見て思ったことは、「懐かしい」ということ。というのも、『モンスターハンターライズ』はご覧の通り「和」テイストの作品だ。タイトルに「ハンター」とつくだけあって、これまでのシリーズは狩猟民族の集落的な世界観を描いてきた。なので、「和」が舞台になることは珍しい。
ただ、ちょうど筆者がプレイしていた時期の『モンスターハンターポータブル3rd』『モンスターハンター3(トライ)』はアジアンテイスト。だから、懐かしさを感じてしまったのだ。だが、いざプレイしてみると、「懐かしさ」よりも「新しさ」の方を多く味わった。
まず味わった「新しさ」のひとつは、読み込みスピードだ。特にPSP版の『モンスターハンターポータブル2nd』は、読み込みに時間がかかった。読み込み時間を短縮するため、「メディアスティック」という保存媒体にゲームデータをインストールする「メディアインストール」という機能もあったが、それでも時間がかかった記憶がある。
しかし、『モンスターハンターライズ』では読み込みに悩まされることがない。それもそのはず、マップがエリア毎に分かれていないからだ。
筆者がプレイしていたころの『モンハン』は、マップが小さなエリア毎に分かれており、エリアからエリアへ移動する度、読み込みが発生していた。しかし今作『モンスターハンターライズ』は、マップがシームレスに繋がっている。一応、地図上ではエリアとして区切られているが、エリアからエリアに移動する際、「切り替わる」ことがない。『モンスターハンター:ワールド』に触れていない筆者としては、これが非常に新鮮だった。感覚的な問題だが、「狩っている」気分が味わえるのだ。
この感覚は、「モンスターを追い続けている」からこそ味わえる感覚だろう。エリア毎に分かれていると、「モンスターが別のエリアに逃げて、画面から消える」→「モンスターを追う」→「画面が切り替わり、読み込み発生」→「別エリアにいるモンスターを発見」という形になる。技術的にしかたがないことだし、当時はこれでも十分「モンスターを追い詰めている気分」を味わえた。しかし、いざシームレスに描かれているのを見ると、まったく違う。逃げるモンスターを目でとらえながら追い続ける…これが狩りだ!
もうひとつ、筆者の中の『モンハン』感を覆したのが、「オトモガルク」の存在。ガルクは、狼のようなモンスターで、プレイヤーの仲間である「オトモ」として自動的に戦闘のサポートをしてくれる存在だ。
「オトモ」自体は筆者がプレイしていた当時から存在していた。マルチプレイを前提とした『モンハン』は、ソロでプレイすると難易度が急上昇する。というのも、モンスターの攻撃がプレイヤーだけに集中するからだ。この対策として『モンスターハンターポータブル2G』から導入されたのが「オトモ」の存在。なので、「オトモ」が存在すること自体は新しいと感じない。だが、「オトモガルク」は新しさを感じた。何せ、乗って移動できるのだ。しかも圧倒的にスピーディー!
狩ゲーの元祖『モンハン』のイメージとして強く押し出されているのが「重量感」だろう。巨大なモンスターを、身の丈ほどもある巨大な剣で刈る。ビジュアルイメージのみならず、攻撃時の重々しいモーションをはじめ、様々なモーションから「重量感」を感じるよう作られている。つまり、『モンハン』とスピーディーさは真逆といっていい。間違ってもハンターは、『デビル メイ クライ』ダンテのように銃でモンスターを宙に浮かせ、自らも空中に舞い剣でぶった斬って“Smokin’Sexy Style!!”なんてことにはならないのだ。
しかし、「オトモガルク」はスピーディー。プレイヤーキャラクターがスタミナを減らして走るのより速くマップを移動でき、しかもスタミナを消費しない。その上、乗ったまま素材を採取することもできるので、採取が目的のクエストでは最初っから最後まで乗りっぱなしで、超スピーディーにクリアできる。『モンハンポータブル3rd』世代の筆者からすれば、これは衝撃的。もはや別ゲームと言っていいレベルのプレイ感だ。しかし、それでいて本作は確かに『モンハン』。イメージが壊れていないのが凄い。
なぜイメージが壊れなかったのかというと、それは本作のテイストが「和」だから。「和」のテイストなので、狼に乗ってスピーディーに狩る…そんな文化を持つ集落だったのだろう…そう納得してしまったのだ。「和」と「洋」と比べた場合、「和」には重厚なイメージが少ない。たとえば、「洋」の「プレートアーマー」に対して「和」の「具足」。石やレンガづくりの家屋に対して、木造の家屋…と、「和」テイストは軽妙な印象がある。だからこそ、スピーディーに狩りが行われても、違和感がないのだ。そして、違和感がない上に、快適。サクサク進められるので爽快感がある。
狩りの爽快感を高めているのが、「翔蟲(かけりむし)」を使ったアクションだ。これは、翔蟲という虫から伸びた糸を使って繰り出すアクションで、一言でいえばワイヤーアクション。翔蟲のワイヤーを使ってより高い所へ登ったり、幅の広い穴を跳び越えたり、瞬間的にモンスターとの距離を詰めて攻撃したり、受け身を取ったりといったことができる。
これまでの『モンハン』にはないアクションだが、これも「和」テイストによって筆者的には違和感がなかった。感じたのは、違和感よりもむしろ「カプコンらしさ」。というのも、『トップシークレット(ヒットラーの復活)』や『BIONIC COMMANDO』、『ロストプラネット エクストリームコンディション』などのワイヤーアクションゲームから、「ワイヤーアクションといったらカプコン」という印象があるからだ。
これはカプコンに限った話じゃないが、ワイヤーアクションもののゲームというのは、「華麗な立ち回りを追求する楽しさ」を持っていることが多い。ワイヤーを使うことで無駄なく軽快にマップを動き、目的を達成する。そこにはただ「爽快感」や「上手なプレイ」といった要素だけでなく、「カッコよさ」が感じられるように思う。「翔蟲」もまた、カッコいいプレイを追求する楽しさを持っていると感じた。ただ探索に使うだけじゃなく、効率よくカッコよくプレイを追求する…そんな深さを持っている。
また、「翔蟲」は他にも使い道がある。本作からの新要素である「操竜」だ。その名の通り、モンスターに乗って操るというアクション。
このアクションによって、モンスターとモンスターを同士討ちさせたり、モンスターを壁に突進させてダメージを与えたりといったことことができる。繰り出すためには、「翔蟲」を使った攻撃を重ね、モンスターを「操竜待機状態」にしなければならない。なので、「操竜」アクションを使うためには、積極的に「翔蟲」を使う必要がある。逆にいえば、「翔蟲」を使えば使うほど、ゲーム内で有利な条件が揃っていくといっていいだろう。「翔蟲」は本作のアクションの中核にある要素だ。
そして、「翔蟲」や「操竜」を大いに活かす場となる新要素が「百竜夜行」。モンスターが集団が村に襲い来るという要素で、従来「狩る側」だったプレイヤーが、「百竜夜行」では「守る側」となる。「百竜夜行」ではプレイヤーは何度でも復活できるが、「砦」を破壊されてはならない。集団化したモンスターに対して、プレイヤー側は単独で立ち向かうのかというと、そうではない。フィールド上に様々な設備を建設できる。
設備の中には、プレイヤーが搭乗して戦うもの、自律的にモンスターを攻撃してくれるもの、モンスターに接触することで作動するものなどが存在。これらの設備と、プレイヤーとオトモによる直接攻撃を組み合わせてモンスターを迎撃するわけだ。一言で言えば、モンスターハンターの操作システムでプレイする、タワーディフェンスゲーム。
この「百竜夜行」、ネット上で感想を見ていると、賛否両論のようだ。というのも、『モンハン』といえば、プレイヤー自らが選んだ武器と道具を使い、モンスターを狩るゲーム。これに対して「百竜夜行」は、設備を使って守るゲーム。180度真逆と言っていいだろう。特に、設備による攻撃は砲撃中心。ハンターの武器にもボウガンなど射撃系の武器はあるものの、剣系の武器を使っているプレイヤーからすると、楽しくないと感じられるかもしれない。
確かに、ファンとしては新要素は欲しい。けど、「期待の延長線上にある新要素」が欲しいのであって、期待とまったく方向性が異なる新要素は欲しくない。そんな感想をいくつか読んだ。その気持ちもわかる。「百竜夜行」は一見すると、あえて『モンハン』に加える必要がないものにも思えるからだ。ただ、筆者としては、「百竜夜行」はおもしろかったし、本作に必要な要素だったと感じている。
何がおもしろかったかというと、「百竜夜行」は先に書いた「翔蟲」「操竜」といった新アクションを大いに活かす見せ場になっているのだ。というのは「百竜夜行」をプレイする上で、移動が重要だから。「設備でモンスターを倒す」というタワーディフェンス的な意味では、「設備の配置」も重要。また、「砲撃でモンスターを倒す」という点では、エイミングが重要となる。ただ、「百竜夜行」のモンスターを倒す上では、この2つだけではなく、プレイヤーの立ち回りも必要。設備の自動攻撃や砲撃をくぐり抜けたモンスターを追い、砦が破壊される前に倒さなければならないからだ。
この、「設備だけでは敵を倒せない」というのは、タワーディフェンスとして中途半端に思えるかもしれない。しかし、タワーディフェンスの中には、プレイヤーキャラクターを操作可能なタイプなものもある。プレイヤーキャラクターを操作するタイプのタワーディフェンスでは、本作のように設備だけでは敵を倒せず、プレイヤーの立ち回りが求められる。プレイヤーが設備の中でも防御の弱い場所や、敵の攻勢が強い場所を移動してフォローするわけだ。ここで活躍するのが、「翔蟲」による移動。
また、いよいよモンスターが砦に到達し、追い詰められた際の切り札として「操竜」が活用できる。「操竜」によって一気に2体のモンスターを処理できるわけなので、非常に頼りになるアクションだ。だから、「翔蟲」や「操竜」などを駆使すればするほど、楽しい。これは筆者の憶測にすぎないが、「百竜夜行」は本作で新規導入されたアクションを最大限活用する場として設計されたのではないだろうか。となると、「百竜夜行」は本作に必要不可欠。なので筆者は、「百竜夜行」はアリだと思っている。
最後にまとめると、『モンスターハンターライズ』は『モンハン』シリーズのナンバリングタイトルとしても、いちゲームとしても、オススメできる作品だ。プレイヤーによっては「百竜夜行」について思うところがあるかもしれないが、これまでの延長線上ではなく、本作のアクションの延長線上として捉えると、また違った印象でプレイできるのではないかと思う。
ちなみに、本作で再び『モンハン』の魅力を知ってしまった筆者は、『モンスターハンター:ワールド』の購入を検討中。多分、次のセールのときに買うと思う。それくらい、シームレスのインパクトは凄かった。『モンハン』ファンはもちろん、筆者のように『モンハン』から少し離れていた人も、是非本作をプレイしてみてほしい。
文/田中一広