11月7日(土)より大ヒット上映中の日本語吹替版が反響を呼んでいるアニメ映画『羅小黒戦記(ロシャオヘイセンキ) ぼくが選ぶ未来』でフーシーの声を担当した櫻井孝宏さんのインタビューをお届けします。


『羅小黒戦記(ロシャオヘイセンキ) ぼくが選ぶ未来』は中国のアニメ監督、アニメーターのMTJJ及び寒木春華(HMCH)スタジオが制作したアニメ作品。2011年3月17日からWEBアニメシリーズが動画サイトで公開された後人気が上昇し続け、中国アニメを代表する作品まで成長。その後劇場版が制作され、中国国内での興行収入は3.15億人民元(約49億円)を記録し異例の大ヒットとなりました。


2019年9月には、小規模ながら日本国内でも字幕版が公開され、上映直後からアニメファンやアニメ関係者たちは、その想像以上のクオリティに圧倒され「今後、これを作った人達と競っていかないといけないのか」「痺れるほどかっこいい!もう感心を通り越し、嫉妬を覚えてしまう」と称賛の声が多く寄せられました。



日本語吹替版では、人間に住む場所を追われた黒猫の妖精シャオヘイを花澤香菜さん、そこに手を差し伸べる植物を自在に操る妖精フーシーを櫻井孝宏さん、人間でありながら最強の執行人であるムゲンを宮野真守さんら豪華キャストが務めます。さらに、フーシーの仲間の妖精であるシューファイ役に斉藤壮馬さん、ロジュ役に松岡禎丞さん、テンフー役に杉田智和さんなど、豪華キャストが出演します。


心の奥底には譲ることのできない思いを秘めているフーシーを、櫻井さんはどのように捉えて演じたのか。作品の印象や櫻井さんが今見つけ出したものなど、たっぷりとお話を伺いました。



「フーシーが望んだ未来・信じた未来は決して悪いものじゃない」


――日本語吹替版のオファーをいただいたときの感想を教えてください。


櫻井:作品の存在は知っていて、もう劇場公開されていたものなので、日本語吹替版の制作についてちょっとした驚きはありました。実際に映像を観て面白い作品だなと思ったので、出演できるのはすごく嬉しかったです。


――内容や映像の印象は?


櫻井:テーマが普遍的で話は王道なんですけど、割と童心に帰るような気持ちで観られたというのが大きかったです。その他に、アニメーションのクオリティーがすごいなと思いますね。日本人は日本のアニメーションを誇りがちですが、今はそんなこともなくて。日本のアニメーションの影響もあるのかもしれないですけど、そこからちゃんと自国の文化と融合して昇華されて、日本人から見て新鮮に思うような部分もあったりして、相互にいい関係だなと思いました。すごく素敵なアニメーションで、「面白いよ、みんな観なよ」と勧められる作品だなと感じました。


――どういったところに中国らしさを感じましたか?


櫻井:例えば、風景の描き方もそうだと思うんですよね。とにかく、デカい、広い(笑)! スケール感がデカいんですよね。あとはバトルシーンも、ああいったカンフー文化が当たり前だとアクションの表現もちょっと違う。ファンタジックではあるんですけど、どこか重心がきちんと乗っているというか、足腰がちゃんと入っているパンチみたいな。質量があるというか、それが画に乗っかっているんですよね。


――お話も大自然の中のシーンと、電子マネーを使うようなデジタル化された都会的な社会の様子が一緒に描かれているのも、日本とは少し違う感覚かな、と思いますよね。


櫻井:森の真横に大きなビルがあったりするじゃないですか。それは日本人からすると、ちょっと違和感がある風景だったりすんですけど。僕も実際に中国に行った際に経験したのは、八百屋さんみたいな青果店でもカードで支払いができるとか。


根っこごと変えるんじゃなくて、そのままの姿を残しながら今っぽくしていくというか、その取り入れ方が日本と違う気がします。日本って更地にして全部新しくすることが多い。それはもったいないなと少し思うんですけど、中国はそうじゃなくて、上手くしたたかに取り入れるじゃないですけど、「なんで全部そうしなきゃいけないの?」とあっけらかんとしているところもあるというか。それを堂々と描いているので、不思議な感じや少し違和感はあるんですけど、ストレスにならずにすごいなと思います。



――フーシーをどんなキャラクターだと捉えて演じましたか?


櫻井:僕は結構、信念の人だなと思いましたね。覚悟を持って生きている。人間に対してあまり良い感情を抱いていない妖精という設定ではあるので、単純に敵か味方かと考えると、少しダークな方に行ってしまうキャラクターではあるのですが、でも僕は彼が望んだ未来・信じた未来というのは決して悪いものじゃないと思っていて。だから、悪びろうとか嫌な奴の感じにしようとは思いませんでした。どちらかというと、僕はフーシーの方が共感できるな、と思いました。


――共感できたのはどのような部分でしょう?


櫻井:彼が望んだ未来を悪く思わなかったですね。それは1つの答えとして有りだな、と。それが正解かと言われると難しいですけど、でも導き出した答えが彼の中にあって、そこに向かって突き進む。ただ、綺麗事だけでは済まないからグレーなこともやり、その結果、利用したりだとか、裏をかいたりしているように見える。だけど、それは表現としてのアニメーションの方向性なだけであって、彼が悪だとは僕は思わないですね。悪に見えるようにしたくないと思いながら演技しました。戦闘シーンも勝つつもりでやりました! 最後の場面で立っているのはフーシーだと(笑)!


――フーシーは冒頭のシャオヘイを助ける登場シーンは優しく「すごくイケメンなキャラクターだ!」と感じたのですが、物語が進むにつれ印象が変化していくキャラクターですね。


櫻井:白っぽく見えていたものがグレーになって黒くなっていくような、ダーティーなキャラの描かれ方をするので、先程も言いましたが、ただの悪者には見えるようにしたくない、というのはあったし、「結果的に、負けた方の正義が悪になった」という解釈で僕はいるので。彼が堕ちていくような感じに描かれていくのを切ない目で見ていました。



「シャオヘイが選んだ道はすごく強い人が選ぶ道」


――演じてからフーシーへの印象や想いの変化はありましたか?


櫻井:僕は、よりフーシーを好きになりましたね。台本を読んで映像を観て、実際に自分の中で読み解いていく中で、「ちょっと共感できちゃうな」って。彼の中の弱さもあるんですよね。でも、彼はそれを認めていないわけではなく、たぶん自分でわかっていて。


ムゲンの強さもわかっていて皮肉めいたやりとりもするんですけど、相手の強さを知るというのは己の弱さを知ることでもあり、ちゃんとそれを理解できていれば、それが強さにも転じる。じゃあどうしたらいいのか?という、ある種の計算ではあるんですが、信念・目標・目的のためだったら綺麗事ばかりではダメであると、ドラスティックに動くようになるんですけど、そこがなし崩し的ではなくて、覚悟と意思を持ってやっていると伝わるようにしたいと考えていました。


――私もフーシーに共感しながら観ていたので、シャオヘイの決断がとても切なかったです。


櫻井:そうなんですよね……。ムゲンは初めからそうなる覚悟でいたんでしょうけど、シャオヘイが選んだ道というのはすごく強い人が選ぶ道だなと思いました。そう言うとフーシーが弱く感じるかもしれないですけど、決して彼が望む道がなだらかな道なわけではなく、たぶん茨の道で。そういうこともフーシーはわかっていて行動を起こしたと思います。


――フーシーがシャオヘイに対して言う「今やめたら本当に行き場を失うぞ」というセリフがとても胸に刺さりました。


櫻井:そのセリフは印象的ですよね。フーシー側は徒党を組んで影で動かないといけないような状況に追い込まれていたりする。ああいう状況を見て察するに、フーシー自身は上手くいくかどうかのビジョンはハッキリ見えてはいなかったと思うんですよね。もうそうするしか手がない。最終手段じゃないですけど、残されている唯一の手というか。でも、シャオヘイが本能的にピュアなリアクションをとる子だったので、フーシーはそこでもう1つギアを上げて“それなら、こうするしかないか”となった。彼が吐く言葉は悲哀を帯びているというか、哀愁が漂っているというか……、なんだか切ないですよね。



――共感できるとおっしゃいましたが、ご自身とフーシーとの共通点はありますか?


櫻井:うーん……、僕はたぶんフーシーと同じ道を辿ると思います。ちょっと昔を儚んでいるところがあるので(笑)。今の時代やこの世の中にもちょっとストレスを感じたり、昔の方が良かったと安易に思っちゃうこともあったり。でもそういうのって感覚が錆びたり、老いを早める気もするし、今を受け入れられないってダメだな、と冷静な客観視もできるんですけど、やっぱり“取り戻したいな”と思う部分も持っているので、彼のような思考を辿りそうですね。


――そうなのですね。今の世の中だと、時代の流れに逆らうような選択ができる方がとても意思が強い人に感じます。心の中ではフーシーのような選択をしたくても、長いものに巻かれてしまったり、便利な方に流されてしまう人の方が多そうです。


櫻井:フーシーの周りにいる人達って、同じように生きづらさとか、不安や恐怖を抱えていて、たぶんそこにフーシーが現れて説得をしたメンバーだと、僕は勝手に解釈していたんです。フーシーが中心にいて、彼の言葉を受けて共鳴して。だから、あの中にいてもフーシーってちょっと孤独なんですよね。やや浮いてるところがあるというか。自己分析すると僕も同じようなところがあったりするので、やっぱりちょっとフーシーに心寄せてしまいますね。



超人的なアクションシーンに少年心をくすぐられる!


――では、演じていて楽しかったシーンは?


櫻井:それは本当にバトルシーンです! カッコイイな~って(笑)。もちろん、そこにはちゃんとドラマがあって、苦さもあるし、優勢・劣勢の状況がバトルでも描かれているので、ただカッコイイでやっちゃダメなんですけど(笑)、やっぱり少年心をくすぐるバトルシーンが「カッコイイな!」と、ジャッキー・チェンを見ている感じになっちゃうんですよね……、すみません、こんな46歳のオッサンが(笑)。超人的なアクションシーンに生身の僕は息切れてしまったり、満足のいかないシーンは「絶対にダサくしたくない!」と思って何度がトライさせていただきました。少しこだわってしまいましたね。


――日本のアニメと違ってやりやすさ、やりにくさを感じた部分はありましたか?


櫻井:やりやすい、やりにくいは特になく、楽しかったです。元々の作品の原音の良さをもちつつ、吹き替えの味わいを出して乗っけっていく。すべてを刷新するというよりは“乗っけていく”という方法で僕はやりました。


原音の印象はテキパキ、サバサバ喋る。それはおそらく言語の発音から受ける印象だと思うんですけど、歯切れの良い言葉の強さを感じたので、そこに翻訳されたセリフのニュアンスをどうやって温度として乗せていくのかは、新しく行わなければいけない作業で考えたり工夫することはあったんですけど、それも楽しかったです。


――吹替前のキャストさんの演技で取り入れた部分はありますか?


櫻井:リスペクトは持ちつつ、割とアクションなどは日本に寄せています。原音は「フッ」「ハッ」など歯切れがいいんですよね。俊敏だったり、呼吸がアクションに伴っている。でも僕はもう少し色をつけるような、いわゆる少しアニメーションっぽい見せ方に落とし込みながらやらせていただきました。原音の方にもっと寄せてほしい、というオーダーがあれば変えようと思っていましたが、OKして貰えたので。少し苦い展開になったときに、ニュアンスを入れながら。原音は割とサバサバした印象を受けるんですよね。




・“かっこよすぎるアクション編”『羅小黒戦記(ロシャオヘイセンキ) ぼくが選ぶ未来』TVSPOT

https://youtu.be/og2wykDbSdE[YouTube]


櫻井孝宏が見つけ出したいもの……「見かけても絶対に声をかけないで(笑)」


――フーシーは劇中でシャオヘイを見つけ出すために奔走しますが、櫻井さんが今見つけ出したいものを教えてください。


櫻井:すっごい居心地の良い喫茶店……(笑)。カフェじゃなくて喫茶店がいいんですよ。カフェはキラッキラしていて、メニューもややこしくて(笑)。ちょっとジジ臭いんですけど、オーダーを聞きに来てくれる店がいいです。家以外に自分の落ち着けるようなスペースやスポットがいくつか欲しいなと思っていて。


――今は決まった場所はないのですか?


櫻井:いくつかありますけど、少ないんですよね。なんか長い時間過ごせるような場所ってなかなか少なくないですか? 長時間居させてくれて、なおかつ、時間を忘れてふっとリラックスできるような。“あのおじさん2人、何の話してるんだろ?”とか、“あのおじいちゃん朝からずっといるな”みたいな(笑)、居心地の良い喫茶店を今見つけたいなと思っています。


――昔ながらの純喫茶という感じですよね。こんなBGMが流れているお店がいいなどありますか?


櫻井:それは雑音でいいです。環境音が楽しいですね。ちょっと漏れ聞こえてくる胡散臭い話とか、中身のない雑談とか、そういうのがすごく好きです。


――声優仲間の方に教えていただいたりは……?


櫻井:誰かの行きつけのお店だという話を聞くんですけど、「あの人の行きつけだから、なんか気まずいな」とか(笑)。「別に俺の店じゃないし全然いいよ~」と言ってくれるし、その通りなんですけど(笑)。でも同じように、「良いコーヒー屋とか喫茶店知らない?」って話になるんですよ。だから、みんなやっぱり安心して1人になれるような場所を探しているんだろうなって。ある種のオアシスですよね。


――自分だけの秘密の場所が見つかるといいですね。


櫻井:コソコソと作っているので。仮に見かけても絶対に声をかけないでください(笑)。



――では、作品を楽しみにされている方にメッセージをお願いします。


櫻井:年齢性別問わず楽しめる作品です。ドラマが今を風刺しているような社会問題的な側面もあるし、人間だったら誰しも漠然と思っている「これでいいのかな?」とか「この先どうなるんだろうな」という不安も落とし込まれていて、でもちゃんと希望を持って終わる作品になっています。どんな人が観ても共感できるような、懐が大きい作品だと思うので、たくさんの方に観ていただけたら素敵だなと思っています。


――ありがとうございました!


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『羅小黒戦記(ロシャオヘイセンキ) ぼくが選ぶ未来』大ヒット上映中!

<STORY>

人間たちの自然破壊により、多くの妖精たちが居場所を失っていた。森が開発され、居場所を失った黒猫の妖精シャオヘイ。そこに手を差し伸べたのは同じ妖精のフーシーだった。フーシーはシャオヘイを仲間に加え、住処である人里から遠く離れた島へと案内する。その島に、人間でありながら最強の執行人ムゲンが現れる。フーシーたちの不穏な動きを察知し、捕えにきたのだ。

戦いの中、シャオヘイはムゲンに捕まってしまう。

なんとか逃れたフーシーたちはシャオヘイの奪還を誓い、かねてから計画していた「ある作戦」を始める。一方、ムゲンはシャオヘイとともに、人と共存する妖精たちが暮らす会館を目指す。シャオヘイは、新たな居場所を見つけることができるのか。そして、人と妖精の未来は、果たして――


原作/監督:MTJJ プロデューサー:叢芳氷、馬文卓 副監督:顧傑 脚本:MTJJ、彭可欣、風息神涙

作画監督:馮志爽、李根、周達炜、程暁榕、鄭立剛 美術監督:潘婧 撮影監督:梁爽 3D 監督:周冠旭

音響監督:皇貞季 音楽:孫玉鏡 制作会社:北京寒木春華動画技術有限公司

<日本語吹替版>

音響監督:岩浪美和 音響制作:グロービジョン 配給:アニプレックス、チームジョイ

シャオヘイ:花澤香菜 ムゲン:宮野真守 フーシー:櫻井孝宏

公式サイト:https://luoxiaohei-movie.com/[リンク]

公式 Twitter:@heicat_movie_jp

(C) Beijing HMCH Anime Co.,Ltd


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情報提供元: ガジェット通信
記事名:「 櫻井孝宏「フーシーが望む未来を悪く思わなかった。僕はたぶん彼と同じ道を辿ると思います」 映画『羅小黒戦記(ロシャオヘイセンキ) ぼくが選ぶ未来』インタビュー