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「ぜひとも試してみて欲しいんです!」
そう切り出してきたのは、ガジェット通信でも執筆をしているアイス評論家のシズリーナ氏。年間4000種以上のアイスを食べ歩く、アイス界の猛者とも言える存在です。
■シズリーナ 記事一覧
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そんな彼の新たな試みが、“耳栓をして食べると気持ちがいい”という「音グルメ」なるものなのだとか。どういうこと……?
「とりあえず送りますから、気が向いたら試して欲しいんです」
要領を得ないまま生返事をして待つこと数日、家に届いたのは“妙な宅配便”でした。
「音漏れ注意」と書かれた箱を空けると、中に入っていたのはお菓子と手紙、そして耳栓でした。
手紙に書かれていたのは“お品書き”と“食べ方のアドバイス”。
半信半疑ながら、そのアドバイスに沿って入っていた品物を試食してみました。
強炭酸と天然水仕込みのレモンの香りが特徴の『天然水スパークリングレモン』。まず集中してほしいのはその開栓音とのこと。
ボトルキャップの上部を指でつまみ、一気にひねると「シュポッ!!!」と強い破裂音。強炭酸だけあって気持ちがいい抜け方です。
炭酸のシュワシュワとした音を楽しんでから、耳栓をしてまずは一口。
……想像よりも音が大きい。炭酸のはじける音、動きが、奥歯の根元を経て内耳に響いてくるのがわかります。さらに一口飲むと、顎の付け根に残る余韻が心地いい。
今までこんな風に炭酸を「音」として感じたことが無かったので、これは新鮮。
シズリーナさんの言ってることが少しわかってきたかも。
おなじみ、辛くておいしいロングセラーのポテトチップス、カラムーチョです。
アドバイスによれば、まず「秘伝のスパイスを楽しむために開封前に3回袋を軽く振ってから香り立たせる」のだとか。
開封したときに立ち上るあの風味、確かにいつもより良く感じられます。
続いて耳栓をしたまま、指示通りカラムーチョを2枚重ねて口へ運び、ゆっくりと噛みしめます。
……バリバリバリ、と顎全体に音が響き渡ります。今まで無自覚だったはずの音が、耳栓をすることによって非常に心地いいものに変化しました。先ほどのシェイクによって改めて行き渡ったスパイスの重なりにも鋭敏になっているのがわかります。乾いた薄い木材のような硬質の音。美味なそのかけらが今、自分の口のどのあたりにあるのか、というところにまで意識が集中できます。一口一口の密度が非常に高くなりますね。
続いてはこちらもおなじみ、ブラックサンダーです。ブラックサンダーの場合は、「3時間冷凍庫に入れてから」との指示が。
……3時間経過し、冷凍庫に入れたブラックサンダー、そして比較用の常温のブラックサンダー、それぞれが用意できました。まずは常温の方から。
サク、ザク、っとチョコレートとクッキーの交じり合った食感が伝わってきます。チョコレートのまろやかさから時折、ココアクッキーのザクザク感。いつものブラックサンダーの美味しさです。
冷凍庫に入れたほうのブラックサンダーはどうでしょう……。最初の一撃の音が、まず違います。コキッとさきほどよりも明らかに硬質なチョコの破砕音が口腔内に響きます。詰まった質感なチョコ独特の「割れる」音、シャクシャクとザクザクの2種類のクッキーの音、同じ砕ける音でも質の違う3種類が、上あごを経て頭の中に響いてきます。今までこんな音がしてたなんて気づかなかった……。
アイスを焼くという着想を形にしたというブリュレは香ばしく焼き上げたキャラメリゼが特徴のアイス。2017年の発売直後、人気の余りわずか10日で販売休止になったという商品です。2019年秋にブラッシュアップされて再登場したブリュレとのことですが、筆者は初体験。
まずはスプーンでそのキャラメリゼに力を入れて押し込むと、メキメキッと甘そうなメイラード色の板が音を立てて白いクリームにそそり立ちます。耳栓を付けて、いざ、実食です。
……キャラメリゼ部分のバリバリ、ボコリボコリという食感。砂糖の持つ質感が氷に似た裂開音を奏でます。ジャリジャリとした砂糖の粒はなめらかなクリームと混じりながら液体となってのどに流れていきます。溶解していく音と甘さがシンクロするのも、実に気持ちいい感覚です。
いやはや、想像以上でした、「音グルメ」。
耳栓をすることで、音と味覚への集中が強く促される体験となりました。
炭酸水で、上あごから後頭部に泡が抜ける感覚を味わうとは思いもしませんでした。
「耳栓は、食事をより楽しむための調味料」とうたうのには、全面同意です。
耳栓をするだけで食の日常が、大きく変わる可能性がありますね。
今回以外のメニューでも、新たな発見がありそうです。音の心地よい食体験、ちょっと試してみてください。おすすめです。
■音グルメ公式
https://www.otogourmet.com [リンク]