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2020年6月18日よりNetflixで独占配信されている長編アニメ『泣きたい私は猫をかぶる』。『美少女戦士セーラームーン』『おジャ魔女どれみ』など数々の名作を手掛けた佐藤順一氏とスタジオジブリ出身の柴山智隆氏がW監督を務め、『心が叫びたがってるんだ。』の岡田麿里氏が脚本を担当するということで、配信前から期待が高まっていました。
ストーリーで注目したいのは、中学二年生の「ムゲ(無限大謎人間)」こと笹木美代(声・ 志田未来さん)が、一見空気の読まない性格だと周囲から見られていますが、家を出ていった母親の美紀(声・大原さやかさん)から同居を持ちかけられ、家では父親の婚約者の薫(声・川澄綾子さん)との関係がギクシャクしていて、無理をして明るく突飛な言動をしているということでしょう。最近では「空気の読めない人」について話題になることが多いですが、そういった人が本当はどのようなバックボーンがあるのか、ということをムゲを通じて見せたかったように感じられます。
そんなムゲが、お祭りの日に猫店主(声・山寺宏一さん)と出会い、お面を被ると猫の太郎に変身できることで、一見クールな同級生の日之出賢人(声・花江夏樹さん)の家族思いで優しい性格に触れて惹かれていきます。『泣き猫』の舞台は窯業で栄えた愛知県常滑市がモデルで、賢人の祖父も陶芸家をしており、とても尊敬しているのですが、彼自身が成績優秀ということもあって、母親から進路について急かされるシーンもあって将来について思うところがある様子。そんな賢人の「力になりたい」と、猫の太郎に変身したムゲは願うようになるのです。
猫の太郎でいる時の心地よさと、人間のムゲでいる時の気まずさや周囲との軋轢。そんなムゲに猫店主は人間を捨てて猫として生きるよう迫ります。猫だけに見えるという「猫島」は、雄大な木のようでいてどこか面妖な雰囲気に圧倒されるはず。古くからの町並みの描写がリアルなだけに、その幻想さが際立ちます。
ほかにも、ムゲの幼馴染の頼子(声・寿美菜子さん)や、薫が飼っている猫のきなこ(声・喜多村英梨さん)など、脇を固めるキャラクターも魅力的。柴山監督がジブリ出身ということを考えれば、近藤喜文監督作品『耳をすませば』(1995年公開)に通底するテーマを描いた作品と捉えることもできそう。冒険要素がありつつも、根底には家族や友情、愛といったテーマを正面から描いており、エンドロールが流れる頃には、花江さんがコメントしていたように「大切な人を思い浮かべる」ことになるのではないでしょうか。
『泣きたい私は猫をかぶる』公式サイト
https://nakineko-movie.com/ [リンク]
『泣きたい私は猫をかぶる』(Netflix)
https://www.netflix.com/jp/title/81281872 [リンク]
(C) 2020 「泣きたい私は猫をかぶる」製作委員会