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どうも特殊犯罪アナリスト&裏社会ライターの丸野裕行です。
巷には様々な刑務所関連の本というものが売られていますが、細かい部分や詳しい話までカバーしてあるものは、なかなかありません。刑務所レポートのほとんどが、受刑者が食べるご飯の話や受刑者の生態、刑務作業のイロハについてです。
そこで、前々回からはじまった《シリーズ・細かすぎる刑務所の話》では、「細かな刑務所の決まり事や仕組み」をレクチャーしていきたいと思います。
<※写真はすべてイメージです>
■シリーズ・細かすぎる刑務所の話 記事一覧
第1回 https://getnews.jp/archives/2568172
第2回 https://getnews.jp/archives/2570149
第3回目となる今回は、懲役刑と禁錮刑、労役の違い についてです。
懲役刑というのは、受刑者をしっかりと懲らしめ、労働(役)させて罪を償わせるということ。服役している間は免業日(休日)を除き、工場や舎房の中で何か与えられた仕事をこなさなければなりません。
この刑務作業というのは、刑法に規定される懲役刑であると共に受刑者の矯正と社会復帰へむけた最も大切な処遇のひとつになります。
病気になった受刑者は別にして、この仕事を拒むことは絶対にできないので、日々の労働にいそしまなければなりません。もしこの労働を拒否した場合は、懲罰などの対象になってしまいます。
しかし刑務所ビギナーは、ベテラン受刑者とのコミュニケーションの取り方がわからず、配役されたあとに工場内での人間関係に悩まされてしまうことが多々あるようです。しかも彼らは受け持った現場の労働を拒否してしまうので、継続的に懲罰を受け続けることになるわけです。
懲役刑は、受け持つ仕事をこなすことで「作業報奨金」というものが払われます。領置金(所持金)がない貧乏受刑者にとっては、書籍や雑誌、日用品を刑務所内で購入するときに必要なものになるんですね。
作業報奨金は、工場作業などの能力や経験によって1等工~10等工という風にステップアップし、大きく金額が変わります。新入り受刑者として作業についた場合はまず10等工からスタートして、1ヵ月以上時間が経つと9等工に格上げされます。
作業にも慣れてそこから2ヵ月以上経過した場合は、8等工に……。最初の頃であれば、とんとん拍子に昇給していきます。
とは言え、新入りとして作業についた場合、月の報奨金が600円程度。9等工で900円。8等工で1200~1300円ほどで、非常に安いわけなんですね。シャバに出れば時間給程度にしかなりません。受刑者生活も2年ほど過ぎると3等工に昇進します。そして、ようやく月4000~5000円くらいもらえるようになるようです。
しかしながら、この間に懲罰や戒告を受けてしまうと、一旦昇進した等工がダウン。場合により、今まで貯めてきた作業報奨金の半分が没収されることもあると言います。ですから懲罰を受けやすい受刑者は、作業報奨金をなるべく早く使うといいます。
滋賀県大津市の国道で、近くの保育園の園児の列に車で突っ込んだ女性は、禁固刑という刑罰を受けました。しかしこれは懲役よりも軽い刑罰に当たります。ですから道交法で裁かれた受刑者が多く、政治関連の事件で実刑を受けた代議士なども多いようです。
禁固刑というのは懲役刑とは違い、刑務作業をする必要がなく、ただひたすら舎房内に閉じ込められるという苦行です。作業もなく、テレビすら見ることができない状況下に置かれます。
一般的な感覚で言えば、じっと舎房に幽閉されているよりも工場や舎房内に出て、刑務作業をする方が気持ちが楽になるような気がしますよね。実際のところ、ほとんどの禁固刑の受刑者は、自分から願い出て工場や舎房で懲役刑の受刑者と共に働いています。
もちろん、刑務作業を行えば懲役刑と同じように作業報奨金が支払われて、テレビも視聴できるようになります。
あまり聞きなれない労役は刑罰というわけではありません。罰金刑や追徴金を支払うことができないという者が、日当を5,000円以上に換算のうえで、拘束を受けながら仕事に従事させられるというものです。
休日までも日当として換算されるそうで、50万程度の罰金を稼ぐためには100日間拘束されることになります。ただ、労役というものは2年間までと決められているので、罰金・追徴金が365万円を超えるものは、日当を数千円UPして計算されるとのこと。
通常の場合、労役で仕事に従事する者は懲役刑の受刑者と一切の接触ができないそうです。
受刑者の中には懲役刑と罰金刑の両方を持つ者もいます。そんな場合は工場などに配役されてから先に労役になって、工場で刑務作業をしながら罰金を稼がなければいけないハメに……。
罰金を稼ぎきると、通知が届いて懲役に切り替わります。待遇自体は何ら変わらず、せっせと働くんですね。
普通、労役を行うのは懲役8年未満の短期刑が生活を送る刑務所ですが、例外として8年の懲役、2年の労役を合わせ、10年勤めている受刑者もいることもあります。
これで懲役刑と禁錮刑、労役の違いが判っていただけたかと思います。
次回も、あまり知られていない細かい刑務所のことをお伝えしていきたいと思います。
(C)写真AC
(執筆者: 丸野裕行)