現在、Twitterでは武内直子さん原作『美少女戦士セーラームーン』のアニメいちシーンを自分の絵柄で描いてみるというハッシュタグ「#sailormoonredraw」で、多くのクリエイターが参加して、画像を投稿しています。


もともとこのハッシュタグは、2019年夏頃にアメリカではじまったもの。





それが、2020年5月16日頃より日本でもクリエイターがハッシュタグ付きで投稿するようになり、19日には『ストップ!! ひばりくん!』などの名作を数々送り出している江口寿史さん(@Eguchinn)も投稿。





さらに、派生形も登場。愛媛県今治市のゆるキャラ・バリィさん(@barysan)は、同じポーズでセーラームーンコスプレ姿を披露しています。





元のアニメの作画が改めて見直されることにも繋がっている今回の「#sailormoonredraw」ですが、元絵と一緒に投稿していることに「著作権違反では?」といった疑問の声も上がっています。この件は「ファンアートはどこまで許されるのか」といった問題もあるのではないでしょうか。


著作権に詳しい骨董通り法律事務所の松澤邦典弁護士によると、「二次創作としてのファンアートは、これをインターネット上にアップしたり売ったりせず、あくまで個人的に楽しむために描いているだけであれば、著作権侵害にはなりません。著作権法が私的使用のための複製や翻案を認めているからです。しかし、著作権法が“私的使用のため”という理由で認めているのは複製や翻案であり、ネット上で公開する行為(公衆送信)は対象外です」として、「今回のように、権利者の許可なく、元の著作物(原著作物)であるアニメの一シーンの画像を複製・翻案した画像をインターネット上に公開する行為は、著作権侵害にあたる可能性が高いといえます」としつつ、「ただし、著作権侵害であっても、権利者が権利侵害に対して寛容な態度をとる場合もあります。コミックマーケットがその典型例です。今のところ権利者側が何もクレームしていないのだとすると、今回もその一例になるのかもしれません」といいます。


また、元のアニメ絵をネットに掲載した場合、「引用」にあたるかどうかについては「投稿者は2つの画像を同時に投稿しているだけで、一方をクリックすればその画像だけが大きく表示されます。画像自体は別々のもので、投稿者が自分の作品において他人の作品を利用しているわけではないのだとすると、典型的な引用とは異なるようにも思います」として、「引用の要件を満たすには、自分の作品が主、他人の作品が従という関係が必要ですが、実際の投稿ではTwitterの仕様で2つの画像は同じ大きさで表示されます。原著作物が鑑賞に堪える大きさで表示されていて、しかも比較対象の画像と同じ大きさですので、これではどちらが主か分からず、これで主従関係の要件を満たすのは厳しいように思います」との見解。

また、「“公正な慣行に合致”も引用要件の一つです。元ネタを説明する目的で原著作物を掲載することが“公正な慣行に合致”にするかは、かなり疑問です」とのことなので、著作権者が違法画像を黙認しなかったような場合に「引用しただけ」という主張は難しいということになります。


また、2018年12月30日の著作権法改正で、以下に挙げる行為については非親告罪となっています。被害者(この場合著作権者)の告訴がなくても、起訴が可能です。


・行為の対価として財産上の利益を受ける目的

・(有償著作物等の提供若しくは提示により)著作権者等の得ることが見込まれる利益を害する目的

・有償著作物等について、原作のまま複製された複製物を公衆に譲渡し 、又は原作のまま公衆送信を行うこと

・有償著作物等について、原作のまま複製された複製物を公衆に譲渡し 、又は原作のまま公衆送信を行うために、当該有償著作物等を複製すること。

・上2つの行為は、当該有償著作物等の種類及び用途、当該複製の部数及び態様その 他の事情に照らして、当該有償著作物等の提供又は提示により著作権者等の得ることが見込まれる利益が不当に害されることとなる場合に限る。


この点に関して、松澤弁護士は「告訴なしで起訴できるからといって、著作権者に被害感情がない場合に、検察官がわざわざ起訴するとは考えにくいです」として、「このような場合に起訴しても何のための刑事裁判か分かりませんし、逆に著者が自分のファンを訴えたことに反感を持てば、世論的にも目も当てられない事態になることは容易に想像できます。第三者が告発しても、被害者に被害感情がないような場合、やはり同じことがいえるでしょう。このような場合、概して、警察も積極的には動きません」と説明。


さらに、「#sailormoonredrawの投稿は、“著作権者等の得ることが見込まれる利益が不当に害されることとなる場合”に当たるかという点もさることながら、一人一人の投稿者にその“目的”があるかという点も恐らく微妙でしょう」との見解を示しました。


松澤弁護士のお話を総合すると、著作権者である原作者・出版社・アニメ放映局の「黙認」によって、今のところ「#sailormoonredraw」が問題視されていないのが現状だと言えます。ネットでのムーブメントになっているとはいえ、この機会に著作権に対する理解を深めることも大事なのではないでしょうか。


※画像はTwitterより

https://twitter.com/Eguchinn/status/1262668883233628168 [リンク]


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情報提供元: ガジェット通信
記事名:「 ファンアートはどこまで許される? 『セーラームーン』の「#sailormoonredraw」について弁護士に聞いてみた