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東京オリンピックが延期になった今、あえてリリースする意味があったのだろうか? 東京オリンピック公式モバイルゲームという触れ込みで先週から配信開始となった『ソニック AT 東京2020オリンピック』に触れる場合、この質問はどうしても避けて通れないだろう。
結論から先に言えば、この質問の答えは「YES!」であると断言したい。本作はオリンピックが延期になった今、この状況において本来と別の価値を獲得したように思う。2020年の今だから、プレイする価値のあるゲームなのだ。
ご存知の通り、新型コロナウイルス(COVID-19)が全世界レベルで感染拡大した影響を受けて、今年開催が予定されていた東京2020オリンピックは延期になった。タイトルに東京2020オリンピックを掲げる本作も、これらの事態に対して当然、リリースを延期するか、予定どおり配信するか内部で議論があったのではないかと推察する。
もちろん、筆者は内部と開発チーム、オリンピックともなんの関係もないので、実際のところはわからない。しかし、ビジネスである以上、配信日が収益に与えるインパクトを計算しないハズがないと思う。いずれにせよ本作は配信開始となった。そして延期されなかったことで、プレイ感は本来想定されているものと多少なり差が発生している。
本来のプレイ感との差とは、ズバリ、オリンピックと同時に楽しむことができなくなったという部分だ。ゲームに限らず、エンターテインメントには旬がある。いつが旬なのかというと、それは周りが盛り上がっているとき。
たいていのゲームは、発売(配信)開始後1~3か月くらいが旬といえるだろう。その間、ゲーム雑誌や攻略サイト、SNSなどでゲームの話題が飛び交い、リアルのゲーム仲間もその話題で盛り上がる。言ってみればお祭りに参加するようなもの。周りが盛り上がることによって楽しい「空気感」が醸成され、楽しさが何倍にも膨れ上がる。
一方、旬を過ぎてからゲームをプレイすると、こうした盛り上がりはあまり感じられない。もちろん、ゲーム内容が変化するわけではないので、ゲームそのものを楽しめることに変わりはない。しかし、「これおもしろいな!」と感想をシェアしながら周囲とコミュニケーションを取る楽しさが欠けてしまうのだ。
本作が想定していたのはきっと、延期前のオリンピック開催月である7月まで、オリンピックへの期待を胸にプレイしてもらい、7月以降は実際のオリンピック競技の結果を踏まえて楽しむ……というものだったと思う。たとえば、日本が金メダルを取った種目の追体験、さらには取れなかった種目はゲーム内でリベンジする……などといった楽しみ方だ。
しかし、オリンピック開催タイミングがゲームの配信時期とズレたことで、こうした楽しみ方は少なくとも1年間できなくなってしまった。これは、本作がそもそも想定していた楽しさが味わえなくなってしまったように思う。だがその一方で、本作は「そもそもの想定とは異なる楽しさ」を手に入れた。それは、バーチャルオリンピックという楽しみ方だ。
新型コロナウイルスの感染拡大対策として、様々なもののオンライン化が進んでいる。在宅で仕事をする「リモートワーク」に「オンライン授業」、ビデオ会議システムやSNSアプリを使って飲み会を行う「オンライン飲み会」。また、リアルスポーツのアスリートが、eスポーツに挑戦する取り組みも登場。
こうした取り組みは、新型コロナウイルス感染拡大対策としてやむなく始められたものかもしれないが、中にはこれまでのライフスタイルを超える便利さや、これまでの娯楽を超える楽しさが存在していることは間違いない。
本作、『ソニック AT 東京2020オリンピック』も、東京2020オリンピックのバーチャル版と捉えた時、新たなおもしろさが生まれるように思う。リアルの東京2020オリンピックは延期となってしまったが、バーチャルでは予定どおりオリンピックを楽しめる。そう捉えた時、本作をあえて今年出す意味が見えてくる。本作は、オリンピックの楽しさをバーチャルでバッチリ味わえる仕様になっているのだ。
本作をゲームシステム面からカンタンに表現すれば、スポーツミニゲーム集だろう。400mハードル、100m走、ハンマー投げ、アーチェリー、バドミントン、射撃、3m飛板飛込、トランポリン、空手、スポーツクライミング、フェンシング、BMXレーシング、走り幅跳び、卓球、やり投……など、15種目以上の競技が収録されている。
いずれの種目も操作・ルールはミニゲームレベルまでシンプル化している。たとえば、400mハードルであれば、長押しタッチからタイミングよく指を離してスタートした後、タップでジャンプしてハードルを越えていく……というかんたん操作になっていて本格志向ではなく、パーティーゲーム寄りのチューニングといえるだろう。なので、誰でも気軽に楽しみながらプレイがすることできる。
用意されているスポーツはいずれもオリンピック種目がベースになっているため、そういう意味でも自分がオリンピアンになった気分で楽しめる。ここで筆者が楽しめるポイントとして強調したいのは対戦要素だ。本作には、「ワールドランキング」「国・地域別対抗戦」「挑戦状」という3種の対戦要素が用意されている。
本作はマップ上に並ぶステージごとの種目をクリアしていく形でゲームが進行していく。「ワールドランキング」では、各ステージでの種目の得点でランクを競う。自分のスコアがダイレクトに反映されるため、競争の楽しさを最も強く味わえる機能といえるだろう。
「国・地域別対抗戦」は、所属国家・地域ごとで競うもの。ステージごとにポイントが集計され、最も活躍している国・地域の旗が上がるという仕組みだ。オリンピックといえば、毎回話題に上るのはやっぱり国ごとのメダル獲得数。普段はスポーツに興味がないという人でも、オリンピックとなれば日本のメダル獲得数に一喜一憂するというのはよくある話。恥ずかしながら、筆者もそんな一人だ。なので、対戦機能の中で最もオリンピックらしさを楽しめる機能だと感じた。
「挑戦状」は、他プレイヤーに挑戦状を送ることができる対戦機能。挑戦のベースは自分の獲得したスコアで自分のベストスコアを超えることができるか? という目的の元、挑戦状を送れるわけだ。この機能があるおかげで、対戦が楽しみやすくなっているように思う。というのも、ゲームで対戦機能を用意する場合、プレイヤー間の実力差が課題になる。対戦というのは適度に勝ったり負けたりするのが一番おもしろい。そのためには対戦相手が実力伯仲の相手でなければならない。
たとえば、「ワールドランキング」を見てみると、ランク1位の記録は「どうやればこんな記録を出せるんだ!?」と思うほど神がかっている。全プレイヤー中最高の成績だから当たり前の話なのだが、ゲームを始めてすぐのプレイヤーがこれを見て「よし! 挑戦してやるぜ!」と思えるか……といえば、答えはNOだろう。しかし自分なりのベストスコアが出せたときに対戦を行うことができる「挑戦状」の機能によって対戦のハードルはグッと下がっているように思う。
ところで、新型コロナウイルスの影響で延期されたのは、何も東京2020オリンピックだけではない。3月27日に国内公開予定だった本作の主人公「ソニック」初の映画作品、『ソニック・ザ・ムービー』も新型コロナウイルスの影響により公開日未定となってしまった。そういう意味では、本作は延期されてしまった映画の分までソニックたちとの出会いを提供してくれる作品となっている。
本作には東京を巡りながらソニックとドクター・エッグマンが戦うストーリーを通して、ファンにはおなじみのソニックらしさが誰にでも味わえるようになっている。
各種目ともアクションのテンポや快適な操作性から、爽快感が強く感じられるよう調整されている。さらに、通常競技とは別にEX競技という「ソニック」ならではのギミックが追加された競技もある。リングを獲得したり、ボビンでバウンドしたりと、「ソニック」シリーズ特有のアクションを味わえるので、オリンピックゲームではなく、「ソニック」ゲームの新作としてもしっかり楽しむことができる。
現在は新型コロナウイルスの感染拡大対策としてオリンピックが延期され、外出自粛せざるを得ない状況下にあるため、前述した映画『ソニック・ザ・ムービー』をはじめ、あらゆる娯楽が軒並み延期や中止に追い込まれ、世の中からエンターテイメントが大きく減っている。だからこそ、誰でも今すぐ気軽にプレイでき、オンラインで対戦・競争を楽しめる本作はリリースされる意味がある。オリンピックを楽しみにしていた人やソニックのファンはもちろんのこと、外出自粛でストレスを感じているすべての人に楽しんでほしい作品だ。
なお、本作は無料ダウンロードできるが、スマホゲームで一般的な「基本料無料」形式ではないことにだけ注意が必要だ。本作は『Super Mario Run』などと同様にゲーム序盤の一部ステージが無料になっていて、先のステージをプレイするためには課金が発生するのだ。ただ、序盤だけでもスコアアタックや対戦の楽しさは充分味わえるので、まずは序盤のステージをプレイしてみることをオススメしたい。
ソニック AT 東京2020オリンピック –olympic games tokyo 2020:
https://www.olympicvideogames.com/sonic/jp/ [リンク]
文/田中一広
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