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ひとたび目をつければ内偵を何度も重ね、脱税の確信を得ればガサ入れを行って証拠を掴む国税局査察部―通称・マルサ。
数十年前に“マルサ”をテーマにした映画が作られたことで広くその名を知られるようにこそなりましたが、それまではほとんど内情を知られていなかった彼らでした。そんなマルサですが、実は脱税の尻尾をごく些細なことから掴むんです。
確定申告シーズン、脱税対象者に目をつけるキッカケになるのは一体何なのか、今回は解説していこうと思います。
脱税の情報を掴む一番のキッカケは、多くの人が“タレコミ”だと思うかもしれませんが、タレコミによるキッカケはそんなに多くありません。
それは、タレコミには嫌がらせの内容が多く、寄せられるものほとんどが誹謗中傷ばかりだというのです。「あそこの会社にひどい目に遭ったのでタレコミます。脱税してますよ、絶対!」などと電話や封書には罵詈雑言が盛り込まれるわけです。
調べる側としては信憑性のない情報に踊らされることはありません。マルサの選球眼はそんなに甘くないということですね。
では、一番のキッカケはなんなのでしょうか?
それは、査察官の“研ぎ澄まされた勘”と“並々ならぬ努力”、“石にかじりついてでもという執念”、“しつこいほどの根気”なんです。
まず、活況な業種に的を絞る比較調査で過去10年にさかのぼり、伝票チェックを行います。
それから同業他社をいくつか並べ、疑問点を見出すデスクワーク(机上調査)。申告された所得があまりにも少ないなどの不審点が発見された場合には、税務調査を行います。
税務調査は大きく分けると“任意調査”と“強制調査”の2種類があります。
“任意調査”は、国税通則法に則って税務署や国税局の調査官が行う調査のこと。調査官は質問検査権行使で調査を行うので、対象者には受忍義務が発生します。
“強制調査”に関していえば、最終的に検察庁への告発を目標にした調査で、国税局査察部が行う調査のことを言います。大企業や中企業などで悪質な脱税が行われた場合に適用されます。
ちなみに個人に対しての税務調査は、悪質でない限り“任意調査”が行われます。
国税局が陣頭指揮を執って行う“強制調査”は、時間と手間が非常にかかります。査察官も休日返上、寝食も惜しんで調べあげるわけです。
この調査の種類は多岐に渡ります。
・準備調査……調査対象となる企業の問題点、調査を重点的に行わなければならない項目をピックアップする
・外観調査……調査対象企業の帳簿裏付けを調べるために、客になりすまして直接出向いたりして、伝票切れなどをチェックする
・特別調査……かなりの日数をかけて、厳密に調査する
・現況調査……事前に連絡せずに脱税の証拠を押さえる調査のこと。強制的な調査になる
・反面調査……調査対象企業の取引先に対し、取引内容確認のために行う
・銀行調査……調査対象企業の取引銀行に対し、口座の入金状況などを調べる など
※これは一部です。すべての調査が行われるわけではありません
このような調査が行われるために、査察官は常に時間に追われるわけです。
この他に街の小規模法人の調査を行っている税務署が、調査過程で大企業などの取引伝票を不審に感じ取り、国税局へ大企業の資料を持ち込むケースもあります。
大企業の側は、名も知らぬ孫請け企業が税務調査を受けているとは知らないので、油断しているそうです。
内偵を行うキッカケはほとんどがこの2つの理由だそうで、全体の約9割を占めていると言われています。しかし、このようなキッカケがあっても、いきなり内定に入ることはまずありません。
脱税の疑いがある企業を見つけると、まず初めは調査する企業の業態のことを知るために、その業界の知識を徹底的に身につけます。そのために商売の習慣や売り上げの流れ、取引形態などの仕事内容をまず熟知します。
脱税しているとしても、どんなカタチで脱税しているのかわからないのでこれは徹底されます。
その商売を知り、業態を把握したあとに申告を見直すことで、新たな不審点が見つかるということなんですね。
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いかがでしたか?
意外にも地味な作業の積み重ねで、脱税企業を追い込んでいくことがこれでわかっていただけたと思います。
テレビのニュースなどで査察官が隊列をなして企業に入っていくところをよく見かけますが、あれはこうした地道なデスクワークや隠密調査といった努力が結実した姿なのだと言えそうです。
(C)写真AC
(執筆者: 丸野裕行)