ネット、特にTwitterをはじめとするSNSでは自由診療の体験がインフルエンサーに紹介されて拡散されるケースが向けられますが、そんな現状に対して脳外科医で4コママンガ『のうげかなう。』を発表している赤木継さん(@nougekanow)が「新しい治療が世に認められるまで」と題したマンガで、新薬や新しい治療法が厚生労働省に認められるまでの過程についてツイート。現在、約2.9万のRTと4.6万以上の「いいね」を集めて話題になっています。





厚生労働省に認められた新薬や新しい治療法は「ニセ医療やトンデモ医療とは次元が違う」という赤木さん。まずは臨床試験や治験の被験者の人数が数百から数千に及ぶことを指摘して、人数も事前に統計の専門家が計算して決められているという事実を示しています。



さらに、新薬を使う患者と同程度の人数の使わない患者のグループを比較し、どちらのグループに入れるのかはランダム化し、医師や患者にはどちらの薬を入れるのかは知らせず、無意識の偏りや不正を防ぐようにしているといいます。



厳重に管理されたテストは、参加した患者を途中で除外することは認められず、テスト終了後に患者数を増やすといったデザイン変更は基本的にできないと指摘。「厳しい基準をクリアして、新しい薬や治療法の効果を証明するには、ものすごい労力とお金と患者さんの協力が不可欠」だとしています。



赤木さんは自由診療やエセ医療に関して、「少数の体験談を以て効果を高らかに宣伝しているものがほとんどですが、ここに挙げた条件をきちんと満たしているものが一つでもありますか?」「医師として常識的な事を無視して、あるいは知らずに効果や安全性の不明な医療を施す医者は誠実だと思いますか?」と問いかけ、「効果がある説がある」と賛否両論があるようにネットで拡散することに対して警鐘を鳴らしています。


赤木継さんミニインタビュー


--まず、マンガを公開した経緯について教えてください。


赤木継さん(以下、赤木):最近は医師もSNSで医療情報を発信することも多くなってきており、その中で未承認で効果の不明な、“怪しい”医療に対する注意喚起、否定的なコメントも増加傾向にあります。その流れの中で、血液クレンジングに関する騒動では、特定のインフルエンサーの方が「医師がPV稼ぎのためにインフルエンサーや自由診療を攻撃している」というようなコメントをされていたため、今回の漫画を描いた次第です。


--インフルエンサーの投稿を見て、「医学的に証明できていない」ということを知らずに鵜呑みにする人もいるかもしれません。そういう意味で、医師自らが発信することに意味があると思います。


赤木:医師は特定の医療情報を拡めることでどこかから対価をもらっているということはまずないですし、叩きたいから叩いているのではありません。「効果や安全性を科学的に、統計学的な見地から証明できていないものを人に対して施してはいけない」という、医師ならば当然教えられて理解している常識やモラルから怒りの感情が湧いていたのだということを、皆さんにご理解いただきたかったです。


--Twitterなどでのマンガの反応はいかがでしたか?


赤木:多くの方から「わかりやすかった」「知らなかった」という好意的な反響をいただき素直に嬉しかったです。ただ、一部の方には趣旨をご理解いただけず、「可能性があるものをエセと断定するな」といった批判をいただいたことは残念でした。そういう方こそ疑似科学やエセ医療のターゲットになりやすいので、今回の内容がそういう方に伝わらなかったことは残念ですし、私の表現力不足と考えております。


--特に美容系やメンタルヘルス関連では、医療および薬機法的にグレーな情報がネットに流布しているケースが多いと思います。


赤木:日本の制度では、医師免許を持ってさえいればかなりグレーな医療行為も、よほどの有害な事象が発生しない限り取り締まられません。アメリカではFDA(アメリカ食品医薬品局)がオゾンを用いた血液クレンジングのような治療行為は禁止して罰則もあるようですし、もう少し日本の制度も厳しくしてもいいのではないかと個人的には思います。


--医療関連の情報で、真偽を見分けるためには何が必要だと考えていらっしゃいますか?


赤木:今回マンガでご紹介したように、「実際の人間に試して病気などが治ったというまとまったデータがあるか」「偽薬群とのランダム化や二重盲検をしていたか」などは、少しネットで調べ物ができる人なら調べられることだと思います。ただし、やはり医療従事者や研究者でなければ見極めが難しいことですので、厚生労働省や学会が出している情報をもう少し信頼していただければと思います。


もしくは、SNSなどで何か気になった医療情報があれば遠慮なく近くの病院の先生や普段かかっている主治医の先生に質問してみてほしいですね。特に保険医療機関にまずかかって相談していただきたいです。保険医療機関は「多くの人の目で効果や安全性を厳しくチェックして承認された」保健医療の範囲内で診療している病院ですから、自由診療クリニックよりは絶対信頼できると思います。


それ以外で保険診療以外の最先端の治療をお求めであれば、ちゃんと「先進医療」と銘打っているものに頼った方がいいと思います。「先進医療」は効果と安全性がまだ完全に証明されていない最先端治療の中でも、「実際に治療に使ってみて研究する価値アリ」と厚労省が承認したものです。治療にかかる費用は高いですが、誰のチェックも受けずに勝手に思いつきの治療を癌患者に施したりしているような自由診療クリニックよりは遥かにマシでしょうね。


--ありがとうございました!


のうげかなう。 4コマ漫画でつづる脳神経外科医の日常

https://nougekanow.com/ [リンク]


※画像は赤木継さんTwitterより

https://twitter.com/nougekanow/status/1228002687741878272 [リンク]


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情報提供元: ガジェット通信
記事名:「 脳外科医が自由診療・エセ医療にマンガで警鐘! 「医師ならば理解している常識やモラルから怒りを覚えた」